第118話 ステラの指南⁉レオンの弱点！
レオンの任命式が終わった後、ステラは彼に穏やかに問いかけた。
「レオン、どうして騎士になれたと思う？」
突然の質問にレオンは少し驚き、しばらく考え込んだ。 そして、ようやく答えを絞り出す。
「まずは、魔法を使えるようになったことです。それに、昨日のリリカ様との訓練が評価されたんじゃないでしょうか？」
ステラは微笑んで頷きながら、
「そうね、いい答えよ。でも、正解じゃない」
と答えた。
「え？」
とレオンは不思議そうな顔をしてステラを見つめた。
「昨日、リリカがあなたに言った言葉を覚えてる？」
とステラがさらに問いかける。
レオンはすぐに思い出した。
「たしか、『合格よ』って言われました」
「そう、それがすべてなの。今回の合否はリリカに一任していたのよ。 ただ、私がリリカに判断の基準を明確にしてあげたの」
とステラが静かに説明を始めた。
「判断の基準ですか？」
と、レオンは真剣な表情で返した。
「そうよ。それはね、『レオンとの試合が楽しいか、楽しくないか』それだけ」
とステラが微笑む。
「え？ 本当にそれだけですか？」
と、レオンはますます驚きを隠せなかった。
「そうよ、それで十分。楽しければ合格、つまらなければ不合格。 それが全てよ」
とステラはあっさりと言った。
「まさか……」
レオンは呆然とした表情で答えた。
「でも、見事あなたはリリカを楽しませることができた。もしあなたがウォーターブレードだけに頼っていたら、不合格だったでしょうね。 でも、あなたは試合の途中で魔法陣を展開し、リリカの気配を追った。 それがよかった。 実戦で初めての魔法を成功させ、その瞬間から試合の流れが変わったのよ」
とステラが説明した。
「確かに、その時からリリカ様が笑っているように見えた……」
とレオンは振り返った。
「では、レオン。あなたが今、克服すべき最大の課題は何だと思う？」
とステラが真剣な表情で問いかけた。
レオンは考え込んだ後、答えた。
「魔法の持続力だと思います。実際に魔力切れで倒れてしまいましたし……」
「そうね、確かに持続力も大事よ。でも、もっと大切なことがあるわ。 セルフィ、あなたはどう思う？」
とステラはセルフィに問いかけた。
セルフィは頷いて答えた。
「はい、レオンの問題は魔力の調整力です。彼は力みすぎて魔力を無駄に消耗していました。 魔法陣を展開した瞬間に限界が来たのは、そのためです。 特に魔法陣は一度展開すれば、その後は魔力をほとんど使わないはず。 でも、レオンは展開中も無意識に魔力を放出し続けてしまった。 それが致命的な敗因でした」
「レオン、わかったかしら？ 魔法は技術だけじゃなくて、知恵と知識も必要なのよ」
とステラが優しく諭した。
レオンはステラの言葉を真剣に聞き、深く胸に刻み込んだ。
「さすがステラ様だ……。僕が魔法を使えるようになるのを事前に見越していた。 さらに、まさかあの訓練が騎士になるための試験だったとは……」
ステラは笑顔を浮かべて言った。
「まさか騎士見習いなんて連れていけないわ。そうじゃない？」
レオンは苦笑いを浮かべるしかなかった。
確かに、自分が騎士になれなければこの任務にも参加できなかっただろうと思いながら、改めて自分の未熟さを感じた。
その時、リリカが楽しそうにレオンに声をかけた。
「レオン、猫耳魔法大隊で大丈夫？でも、安心して！ もしステラやセルフィにいじめられても、私がレオンの味方になってあげるからね！」
ステラは軽く笑って言った。
「あら、失礼ね。これは愛の鞭よ。 レオンが強くなるためには、しっかりと鍛えてあげなければならないの」
セルフィも同意して言った。
「そうですよ。リリカ様、レオンを甘やかしてはいけません！」
「いいじゃない、騎士見習いも見習い騎士もたいして変わらないじゃない！」
とリリカは真顔で反論し、少し悲しくなったレオンだった。
そのやり取りを見守っていたメルヴィルは微笑みながら
「おやおや、レオンはいつの間にか人気者だね。まるで猫耳魔法大隊のアイドルみたいだ」
と、冗談交じりに言った。
レオンは頬を赤らめながら、少し照れた表情を浮かべた。
「そんなこと…… ないですよ」
その日、レオンは改めて自分の成長と課題を実感し、 彼の新たな挑戦は、これからが本番だ。
レオンは正式に騎士として認められたが、彼の成長のために克服すべき課題が明らかになる。 ステラとのやり取りの中で、魔法の技術だけでなく、知恵や知識の重要性を改めて思い知るレオン。これからさらに強くなるために努力しようと心に誓うレオンであった――。
