表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/196

第110話 セルフィの帰還⁉リリカの懺悔!

 セルフィが猫耳ハウスに戻ると、ステラが玄関で出迎えてくれた。いつもと変わらないステラの落ち着いた笑顔が、セルフィの心に安堵感を与えた。


「セルフィ、おかえりなさい。お疲れ様。レオンはどうだった?」


ステラは少し心配そうに聞きながらも、期待を込めた目でセルフィを見つめた。


「ありがとうございます、ステラ様。レオンはもうすっかり良くなりましたよ。ガレット団長の指示で、しばらく自宅で休養することになりましたけど、食欲もあるし、元気そうでした。」


「そう……それはよかった」


 ステラはほっとした表情を浮かべ、胸を撫でおろした。


 そのとき、ふらふらとリリカが現れ、眠そうな顔をしてセルフィに駆け寄ったかと思うと、突然彼女に抱きついてきた。


「セルフィ、おかえりなさい!」


 リリカは抱きつきながら、何か込み上げてきたものを抑えられなかったのか、目には涙が浮かんでいた。


「リリカ様……どうしたんですか?」


 珍しく涙ぐんでいるリリカを見て、セルフィは驚き、そして少し戸惑った。


 それでも彼女の頭を軽く撫で、少しでも彼女を落ち着かせようとした。


 しかし、リリカは涙を拭いながらも、何も言わずに笑顔を見せただけだった。


「あの、二人ともお腹は空いてませんか?今すぐ夕飯を準備しますね。それと、お風呂も沸かしておきますので、夕飯の前にいかがですか?」


 セルフィはすっかり猫耳ハウスのメイドの顔つきになり、さっそく家の中で忙しなく動き始めた。その手際の良さに、ステラは感心したように頷いた。


「さすが、セルフィね。やっぱりあなたがいると、家の中が急に回りだす感じがするわ。」


 ステラはそう言うとリリカを背後から抱きしめた。


「それじゃあ、リリカ、先にお風呂に入りましょうか?」


 ステラはリリカの耳元で優しく囁いた。


「うん……そうする。」


 リリカは目を真っ赤に腫らしながらも、ステラと共にお風呂に向かった。


 セルフィはその間に夕飯の準備を手際よく進めていく。


「今日は特製ビーフシチューですよ。実は、レオンのお母さんがお礼にと持たせてくれたんです。それに、孤児院の子供たちが焼いたパンもありますよ。こんがり焼いたパンシチューに付けて食べてるんです。本当に美味しいですよ!」


 セルフィの声が響くと、浴室から顔を覗かせたリリカが、目を輝かせた。


「わあ、おいしそう!」


 さっぱりとお風呂から出たリリカは、すっかりいつもの元気なリリカに戻っていた。


 セルフィは少し気になっていたが、リリカが元気を取り戻したことに安堵した。


 その時、チャチャが足元に擦り寄り、愛らしくおねだりをしてきた。


「チャチャ、今日はごちそうだよ!」


 セルフィが笑顔で言うと、チャチャも嬉しそうに小さく鳴いた。


 食事が終わると、ステラとリリカが片付けを担当し、セルフィはお風呂に入ることにした。


 ステラが


「なるべくセルフィを手伝おう」


 と提案してくれたことで、二人は積極的に家事を分担するようになったのだ。


 お風呂から上がったセルフィが寝室に入ると、ステラとリリカが待っていた。いつものように三人で女子会を始めると、リリカが少し不安そうな表情を浮かべながら口を開いた。


「セルフィ……今日、謝らなきゃいけないことがあるの。」


「謝る?……何のことですか?」


 セルフィは驚きながらも、穏やかに尋ねた。ステラが優しくリリカを促すように微笑んで言った。


「リリカがセルフィにどうしても謝りたいことがあるみたい。聞いてあげて。」


 リリカは一瞬、迷いながらも、意を決して話し始めた。


「今日ね、朝に孤児院へ行ったんだ。それで、昨日の六隠密の訓練で調子が良かったから、セルフィを驚かせようと思って、気配を消してみたの。最初はうまくいって、光の粒子で身体を包んでみたら誰にも見つからなくて、確かめたら透明人間になってて、思わず『しめしめ』って思ってね……」


 リリカは少し息を整え、恥ずかしそうに視線を落とした。


「それで、セルフィを探して診察室に行ったの。そしたら……レオンとセルフィが一緒に寝てるのを見ちゃって……それだけじゃなくて……その……キスしてるのも見ちゃったの……」


 セルフィは驚いて、思わず顔を赤くした。


「えっ……透明?……え?……そんなところまで見られてたんですか……?」


 リリカはますます申し訳なさそうにうつむいた。


 ステラが優しくフォローに入った。


「リリカには悪気はなかったのよ。彼女も、驚かせようとしたら逆にびっくりしちゃったみたいなの。それで、固まっちゃって……」


 今度はステラが申し訳なさそうに言った。


 だが、セルフィはすぐにリリカの手を取り、優しい声で答えた。


「リリカ様、気にしないでください。そんなことで泣かないでください。もともと、二人には話すつもりだったんですから、私の方こそ気が付かなくて、ごめんなさい。」


 するとステラがすかさず


「聞いて、一番悪いのは私よ。ちょっと忙しいからって、リリカを一人で行かせた私に責任がある!」


「そんな、ステラ様、私がリリカ様に気が付いていればこんな事には!」


 二人の言い合いにリリカは驚き、目をぱちぱちと瞬きした。


「セルフィ?……怒ってないの?」


「もちろんです。それよりもリリカ様!透明ってどういう事ですか?そちらの事の方が重要なのでは?ステラ様!わたしなんかのことより……」


 セルフィがいきなり興奮して捲くし立てるので、ステラとリリカは呆気にとられてしまった。


 その様子を見てセルフィは我に返り、その顔を少し赤く染めた。


「二人とも、この話はもうおしまい!だれも悪くないってことでいいわね?リリカ?セルフィ?」


 とステラが言うと、リリカとセルフィは笑顔で頷いた。


「それじゃあセルフィ?レオンと何があったのか、私にだけ教えてくれる?リリカは一部始終を見て知ってるみたいだから」


 とリリカに視線を送りながら囁いた。


「ええっ!?」


 と、リリカは驚きの声をあげながらも、すぐに拗ねた表情に変わった。


「もう……二人だけでなんてずるい!私もまぜて!」


 リリカのその姿に、ステラとセルフィは思わず顔を見合わせて笑ってしまった。リリカがすっかり元気に戻り、三人での女子会はいつものように楽しく、ますます盛り上がっていったのであった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ