第107話 甘い瞬間⁉戸惑いリリカ!
朝の光が差し込み始めたころ、セルフィのいない猫耳ハウスでは、いつもと違うさみしい雰囲気が漂っていた。
ステラがメルヴィルにもらったパンとスープを温め二人は朝食を頂く。
昨日、孤児院を後にしたステラ、リリカ、メルヴィルの三人は訓練所に戻り「六隠密」の特訓を再開していた。
特訓は順調で、リリカもだいぶ技のコツを掴んできており、メルヴィルとステラを驚かせた。
朝食後、セルフィとレオンがどうしても気になるステラはリリカにはお願いする。
「リリカ、私はこれからメルヴィルさんと打ち合わせがあるの。午前中は診療所に行ってレオンとセルフィの様子を見てきてくれない……」
リリカはステラの心情を察し
「うん、了解!任せて」
リリカは元気に返事をすると、チャチャを呼び出し、孤児院に向かう準備をした。
チャチャの背に乗り、リリカは素早く孤児院へ向かう。風を切って進む空の旅はいつも気持ちが良かったが、今日ばかりは気持ちが少し重たい。レオンとセルフィのことが気になって仕方なかった。
孤児院に着くと、リリカは少し緊張した表情でチャチャに命じた。
「チャチャ、ここで待ってて。行ってくるから!」
チャチャは小さく鳴いて返事をすると、その場で体が小さくなった。
リリカは六隠密の成果をセルフィに見せようと、一旦深呼吸をし、魔力を体中に巡らせた。光の粒子がふわりと体を包み込み、リリカ流の六隠密とでもいおうか。
「ふふん、完璧!これで誰にも見つからない!」
リリカは胸を張って自信満々に言った。
リリカは孤児院の中にさっそうと入り込んだが、子供たちが遊びまわっている中、ある子がふらふらとリリカにぶつかりそうになった。慌てて支えたリリカはやさしく言う。
「危ないよ、気をつけてね!」
しかし、子供はびっくりして泣き出してしまった。リリカは不思議に思ってふと窓を見た。
「あれ……私が映ってない?うそ……透明になってる?」
リリカは自分の姿がまったく見えないことに気づいて驚いた。正確には、彼女の姿は陽炎のように揺らめいていて、ほとんど空間に溶け込んでいた。
「ま、まあいいか。これならセルフィをびっくりさせられるかも!」
リリカは意気揚々と診療室に向かう。
しかし、診療室のドアには何かの看板がかかっていた。それは面会謝絶の札だったが、リリカはその文字を読むことができなかった。
「ふむ、まあ気にせず入っちゃおうっと!」
リリカはそのまま、ゆっくりとドアを開け、忍び足で中に入った
診療室のカーテン越しにそっと覗き込んだリリカは、その瞬間、目を見開いた。ベッドの上には、レオンとセルフィが仲良く一緒に眠っているではないか!
「えっ!?」
リリカは心の中で大きく叫んだが、声には出さず、驚きで固まってしまった。しばらく動けなかったが、やがて考えをまとめ始める。
「セルフィ……寝ぼけてたんだよね。きっとそうだよね……わたしみたいに、うっかりレオンのベッドに入っちゃったんだよね……」
自分のことも交えて、リリカはセルフィの行動を理解しようとした。
だが、さらに驚いたのはその後の展開だった。レオンが目を覚ますと、セルフィもゆっくりと目を覚まし、二人はしばらく照れくさそうに話していた。
「なんか、いい雰囲気じゃない……?」
リリカは少し興味深げにその様子を観察し続けていた。しかし、次の瞬間、セルフィが涙を流し始め、リリカの胸に緊張感が走った。
「セルフィ、大丈夫?何があったの?」
リリカは思わず心の中で問いかけたが、当然のことながら二人には届かない。
そして、さらに驚くべきことが起こった。レオンがセルフィを優しく抱きしめ、彼女の涙をぬぐい始めた。そして二人は見つめ合い、まさかのキスシーンが展開されたのだ。
「わ、わ、わ!何これ!?えっ、えっ!?二人ってそんな……えっ?」
リリカは思わず後ずさりし、心臓がドキドキと高鳴っているのを感じた。
セルフィとレオンがそんな関係になっているとは、リリカにとっては刺激が強すぎた。
「や、やばい……これはやばいよ……!」
リリカは心の中で慌てふためきながら、どうするべきか悩んだ。
しかし、セルフィがベッドから起き上がろうとした瞬間、リリカはとうとう限界を感じ、その場から撤退を決意した。
静かにカーテンを閉じ、忍び足で診療室を後にする。
「ステラになんて報告しよう……。それに、透明のまま元に戻らないし……朝から散々だよ……」
リリカはため息をつき、しばらく孤児院の外で頭を抱えて座り込んでいた。
その後、リリカはどうにか姿を戻すことに成功し、チャチャの背に乗って猫耳ハウスに戻った。
彼女はレオンとセルフィのラブラブな場面を見てしまったことを、誰にも言わないと心に誓った。二人の甘い瞬間を目撃し、驚きと戸惑いを隠せないリリカ。リリカはその日、一日中ステラとの間でどこかぎこちない会話が続くことになるのだった――。




