第106話 レオンの告白⁉新たな恋の始まり!
孤児院の外から、子供たちのはしゃぐ声が響き渡り、明るい朝の光が部屋に差し込み始めていた。静かだった診療室も、やがて新しい一日の始まりを感じさせる。
セルフィはその声で目を覚まし、まだ半分眠っている状態で体を動かした。だが、すぐに彼女は自分がレオンの腕に抱かれていることに気づき、ハッと息を呑んだ。
「いけない!私、こんな時間まで……!」
セルフィは慌てて体を起こそうとするが、その動きでレオンも目を覚まし、二人は互いに視線がぶつかる。お互いに言葉を失い、ただじっと見つめ合った。
レオンは、少し混乱した様子で言葉を絞り出す。
「……セルフィ?」
セルフィは顔が赤く染まり、心臓がドキドキと高鳴っていた。どうにかして言い訳しようとするも、焦りのあまり言葉が出ない。
「ご、ごめんなさい! 私、看病してたはずが……気づいたら……」
セルフィはもごもごと説明しようとしたが、言葉が続かない。
だが、レオンはそんな彼女を見て、優しく微笑んだ。
「いいんだよ、セルフィ。君がここにいてくれて、本当に助かった。ありがとう……」
その一言に、セルフィの胸の中に温かいものが広がった。彼の穏やかな声と優しい言葉に触れ、セルフィの心の中にあった不安がふっと溶けていった。
「レオン……」
彼女は小さく呟き、彼を見上げた。彼の瞳には、感謝と安堵が浮かんでいて、その優しい眼差しにセルフィはますます心がときめいてしまう。
しかし、セルフィが身を引こうとすると、レオンは彼女を少し強く抱きしめた。セルフィは驚きつつも、その温もりを感じながら、さらに顔を赤く染めた。
「……セルフィ、寝ぼけて俺のベッドに潜り込んだんだろ?リリカ様みたいに……」
レオンは少し照れたように笑いながら言った。
セルフィは俯きながら、小さな声で答えた。
「……そうかもしれない。でも、レオンの体温を感じたくて……よく分からないの……ごめん……」
「謝ることはないよ。むしろ、俺の方こそ心配かけてごめん……」
レオンはセルフィの言葉に優しく応じた。
だが、セルフィは突然涙を流し始めた。彼女の声は震え、言葉が途切れながらも懸命に続けた。
「レオンが死んじゃったらどうしようって、本当に怖かったの……そんなの絶対に嫌だった……!」
大粒の涙が彼女の頬を流れ落ち、レオンはその涙をそっと拭い、彼女の瞳をじっと見つめた。
「セルフィ……聞いてくれ。俺、毎日訓練してきたけど、魔法が使えないことがずっと悔しかった。ガレット団長にもずっと鍛えられてるのに、未だに騎士見習いのままで……」
レオンの言葉には、長年抱えてきた悔しさや劣等感が滲んでいた。しかし、彼は続ける。
「俺、ずっと意気地がなくて。騎士団に入れないからって、ふさわしくないって勝手に思い込んでた。でも、それは違うよな。君は、俺をいつもありのままで見てくれていたんだよな……」
セルフィは涙を拭き、レオンの言葉をじっと聞いていた。彼が抱えてきた悩みと、ずっと自分に言えなかった想いが痛いほど伝わってきた。
「レオン……」
セルフィは震える声で言った。
「そんなこと、気にしないで……。優しくて、努力家で、孤児院の子供たちといつも仲良しで。あなたはいつだって私の大切な人なんだから……」
レオンはその言葉に、少し驚いたような表情を見せたが、次第にその瞳には感謝と愛情が浮かんでいった。
「セルフィ……俺、ずっと君が好きだった。出会った時から、ずっと……だから、俺の恋人になってくれないか?」
レオンは彼女を強く抱きしめ、その耳元で静かに囁いた。
セルフィは一瞬驚き、目を見開いたが、次第にその表情は微笑みに変わり、彼の胸に顔を埋めて静かに言った。
「……待ってたよ、ずっと……レオン……私も大好き」
二人はそのまましばらく抱き合い、次第にその唇が重なり合った。互いの想いが一つになり、何度もキスを交わし、見つめ合った。
二人はしばらく唇を重ね、静かな室内でただお互いの存在を感じ合っていた。
セルフィはレオンの温もりに包まれながら、まるで夢の中にいるかのような心地よさに浸っていた。
「レオン……」
セルフィは、彼の胸に顔を埋めたまま小さく囁いた。
「本当に私でいいの?」
その問いに、レオンは少しだけ彼女の肩を押し戻し、真剣な眼差しで彼女の顔を覗き込んだ。
「何を言ってるんだよ、セルフィ。君以外の誰がいるんだ。ずっと君だけを見てきたんだよ」
その言葉を聞いた瞬間、セルフィの胸は熱くなり、次第にその想いが涙となって溢れてきた。涙を拭おうとするも、抑えきれず彼の胸に顔を埋めたまま涙を流し続けた。
「レオン……私も、ずっとあなたが好きだった。でも……自信がなくて……こんなに近くにいるのに、いつも距離を感じて……」
セルフィの声は震えていたが、全てを吐き出すように言葉を続けた。
「そんなこと、もう気にしないでいいんだよ、セルフィ」
レオンは優しく彼女の頭を撫でながら、穏やかな声で答えた。
「俺は、君のことをずっと大切に思ってきた。どんな時でも君の笑顔に救われてたんだ」
セルフィはその言葉にさらに涙が止まらなくなり、レオンの胸に顔を押し付けるようにして泣き続けた。しかし、それは悲しみや不安からくるものではなく、長年の想いが一気に解放された喜びの涙だった。
「レオン……ありがとう……本当にありがとう……」
セルフィはそう言いながら、彼をさらに強く抱きしめた。
レオンもまた、セルフィを優しく抱きしめ返し、彼女の涙を感じながら微笑んだ。
「俺こそ、ありがとう。君がそばにいてくれて、本当に感謝してる」
セルフィはその言葉に応えるように、顔を少し上げて再び彼の唇にそっとキスをした。今度は涙混じりではなく、温かい気持ちに包まれた穏やかなキスだった。
二人は何度も唇を重ね、お互いの愛情を確かめ合うように、時間を忘れてその瞬間に浸っていた。
「ねぇ、レオン……」
セルフィはキスを終えて、彼の顔を見上げながら微笑んだ。
「これからは、もっと一緒にいられる?」
レオンも微笑み返し、彼女の髪を撫でながら答えた。
「もちろん。君を一人にはしない。ずっと、そばにいる」
その言葉に、セルフィの瞳が再び輝き始め、彼女は安心したように彼の胸に寄り添った。
「嬉しい……レオンとずっと一緒にいられるなんて……夢みたい……」
「これは夢じゃないよ、セルフィ」
レオンは彼女の耳元で静かに囁いた。
「俺たち、これから一緒に新しい日々を迎えるんだ。君がそばにいれば、何だってできる気がする。」
セルフィはその言葉を聞いて再び顔を赤くし、恥ずかしそうに彼の胸に顔を埋めた。
「レオンって、たまにすごくカッコいいこと言うのね……」
「それ、普段はどうってことだ?」
レオンは笑いながら、冗談めかして聞いた。
「そ、そうじゃないわ!」
セルフィは慌てて言い返しながら、彼の胸を軽く叩いたが、その頬はまだ赤いままだった。
「でも、本当に……レオンがそばにいてくれるって言ってくれて……嬉しいの……」
セルフィは照れながらも、素直な気持ちを口にした。
「俺もだよ、セルフィ」
レオンは静かに彼女の髪にキスを落とし、再び彼女を優しく抱きしめた。
「君がそばにいてくれるだけで、俺はどんな困難も乗り越えられる気がする」
二人はしばらくそのまま抱き合い、互いの温もりを感じながら、穏やかな時間を過ごした。
やがてセルフィは、ふと思い出したように顔を上げ
「ねぇ、レオン……お腹空かない?」
と少し悪戯っぽく笑った。
レオンはその問いに驚きながらも笑い返し
「ああ、確かに……腹ペコかも」
と答えた。
「じゃあ、何か食べ物を持ってくるわ!」
セルフィは立ち上がろうとしたが、ふと自分がまだ下着姿であることに気づいて顔を真っ赤にして言った。
「……ちょ、ちょっと着替えるから見ないでね!」
そんなセルフィを
「かわいい」
と思ってしまうレオンだった。
ついに恋人同士になったレオンとセルフィ、お互いに対する想いを長い間抱えながらも、なかなか言い出せなかった二人。セルフィの献身的な看病やレオンへの深い愛情、そしてレオンの強さと優しさが、二人の恋を実らせ、共に未来を歩んでいく恋人同士として、新たな一歩を踏み出したのだった――。




