第105話 セルフィの献身⁉レオンの目覚め!
早朝、孤児院の中はまだ薄暗く、日の光が差し込む前の静けさがあたりを包んでいた。
ガレット団長は、いつものように誰よりも早く目を覚まし、騎士団本部へと向かった。
彼の朝は常に早い。騎士団団長として、そして孤児院を守る責任者として、誰よりも早く行動を始めるのが彼の日課だった。
本部に到着すると、まず夜の警護の報告書に目を通す。
何事もなく一晩が過ぎたことにホッとしつつも、ガレットの頭の中には依然として不安が残っていた。
「黒騎士……奴はただの侵略者ではない。何か別の目的があるに違いない」
ガレットは独り言のように呟き、黒騎士が何を探し求めているのか、考えを巡らせていた。
王宮や城に何か特別なものがあるのかもしれない。
黒騎士がただの偵察のためだけに現れたとは思えなかった。
「ステラ様やリリカ様が目的なら、あの時戦っていたはずだ。だが、奴は消えてしまった……」
その考えにふけっているうちに、東の空が徐々に明るくなり始め、夜が明けた。
ガレットは副団長のラウルに警備の引き継ぎを任せ、一旦孤児院に戻ることにした。
孤児院に戻ると、すでに早起きな子供たちが当番制の仕事をこなし、朝の準備に取り掛かっていた。ガレットは笑顔で子供たちに声をかける。
「みんな、おはよう!」
「おはよう、団長さん!」
元気な声が次々と返ってくる。
子供たちは忙しそうに動き回り、日常の光景が広がっていた。
「セルフィ姉さんを見なかったか?」
ガレットは、ふとセルフィの姿が見当たらないことに気づき、子供たちに尋ねた。
「見てないよ。レオンさんはどう?」
「はは、心配いらないよ。すぐに元気になるさ。約束だ」
とガレットは優しく笑って言った。
「そっか……。レオンさん、早く元気になってほしいな」
ガレットは、セルフィがずっとレオンの看病に付きっきりであることを思い出し、少し心配になった。
「ならば、セルフィを交代させて休ませてあげないとな……」
ガレットは診療所の扉をそっと開けた。
中に入ると、静かな空気が漂っている。
だが、セルフィの姿は見当たらない。
ふとベッドを囲うカーテンが閉じているのに気づき、ガレットはそっと中を覗き込んだ。
そこには、レオンとセルフィの姿があった。
レオンはまだベッドに横たわり、セルフィは彼の腕を枕にして眠っていた。
ガレットはその光景に一瞬驚いたが、すぐに理解した。
「セルフィ……いつのまに」
そう思うと、ガレットはそっとその場を離れ、静かに診療所を出た。
彼は世話役や用務員を集めて
「しばらくの間、面会謝絶だ。誰も診療所に入るな」
と厳命し、彼らに伝達を任せた。
その頃、レオンは静かに目を覚ましつつあった。
彼の頭はまだぼんやりとしていて、徐々に昨日のことを思い出し始めた。
「……団長との稽古で倒れて、それから……ステラ様たちが来てくれて……」
彼は自分が重症だったことを何となく理解していたが、まだ完全に状況が掴めていなかった。
だが、ふと鼻につくいい香りに気づく。
「……この匂い、何だ……?」
レオンはぼんやりと目を開け、視線を下にやった。
そこにはセルフィのかわいい寝顔があった。
彼女は彼の腕を枕にして、静かに眠っていた。
「ち……近い……!」
レオンは一瞬パニックになりそうだったが、何とか冷静さを保とうとした。
だが、彼の心は大きく動揺していた。
「……これは……あれだ! すでにステラ様やリリカ様で経験済みだ……。セルフィも寝ぼけて俺のベッドに入ってきたんだな……」
レオンは一瞬、焦りと戸惑いが入り混じったが、すぐにこの状況を理解しようと頭を働かせた。
ステラ様とリリカ様も、以前似たような状況で彼のベッドに潜り込んできたことがある。
リリカ様に至っては、ほぼ毎日のようにステラのベッドに潜り込んでいると聞いたことがある。
「……そうか、あの現象か……」
レオンは、自分を納得させるようにそう考えた。
しかし、それでもこの近さはどうにも耐えがたかった。
セルフィの呼吸が彼の腕にかかり、彼女の温もりが直に伝わってくる。
「……これじゃ、動けない……!」
レオンはその場で悶々としながらも、どうすることもできずにいた。
彼の頭の中は、今すぐこの状況から抜け出したい気持ちと、このまま彼女を起こさずに静かにしておきたい気持ちが交錯していた。
「どうすればいいんだ……」
レオンは小さくため息をついた。
その頃、診療所の外では、子供たちが朝の仕事を続け、ガレット団長もその様子を見守っていた。診療所の扉の前には、しっかりと面会謝絶の札がかけられ、誰も中に入ることはできないようになっていた。
レオンは依然としてセルフィの存在に気まずさを感じつつ、どうやってこの状況を打開すべきか考え続けていた。しかし、セルフィはまだ深い眠りにあり、彼女を起こすことに抵抗を感じていた。
「……いつ起きるんだ……?」
レオンの心の中で、セルフィに対する感情が少しずつ揺れ動いていた。
彼女が自分を看病してくれていたこと、そしてその献身に対する感謝の気持ちが湧き上がっていた。
「セルフィ……本当にありがとうな……心配ばかりかけて」
レオンは心の中で静かに呟いた。
そして、愛しい彼女の寝顔を見つめながら、両手でその小さな身体をそっと抱きしめた。
その頃、孤児院の様子を伺う不気味な二つの影があった。
「さて、試してみるか?」
そう言うと、影の一つが孤児院に向かって走り出した。
レオンとセルフィの距離が急接近し、彼らの間にある微妙な感情揺れ動く。セルフィの献身的な看病に感謝しつつも、彼女が自分のそばにいることに気まずさを感じるレオン。ガレットは二人の関係を察しながら見守る決意をするのであった――。




