第104話 眠れぬ夜⁉セルフィの揺れる想い!
夜が更け、孤児院の中は深い静寂に包まれていた。子供たちや世話役たちも全員が眠りについており、外からは風が木々を揺らす音だけがわずかに聞こえる。
医務室では、レオンが静かに眠り続けていた。
その顔には苦痛の跡はなく、穏やかな寝息を立てている。
セルフィはレオンのそばに座り、彼の手を優しく握りしめていた。
ステラの治癒魔法のおかげで、レオンの健康状態は良好だった。
彼の体はしっかりと回復に向かっており、彼の顔に再び生気が戻っているのを確認して、セルフィは心の中でホッと息をついた。
「ステラ様、本当にすごいわ……あんな魔法、私には到底できない……」
セルフィは小さく呟きながら、レオンの寝顔を見つめた。
彼の顔には、かつての苦しみの表情はもう見られず、ただ静かな安らぎが漂っている。
「どうか、早く元気になってね……」
セルフィはそう言うと、もう一度レオンの手を握りしめた。
彼の温かさが手を通じて伝わり、その瞬間、彼女の胸の中で何かがはじけたような感覚が広がった。
「……やっぱり、私は……」
セルフィはふと目を伏せ、心の中に浮かぶ感情を必死に押し隠そうとした。しかし、それは次第に彼女の中で大きくなり、抑えきれなくなっていく。
レオンを見守るために、セルフィは医務室に残り続けていたが、疲れが徐々に体を襲い、いつしか彼女もまた眠りかけていた。
だが、ふと目を覚ました瞬間、自分がまだメイド服を着たままでいることに気づいた。
「……あ、着替えなきゃ……」
セルフィは少しぼんやりとした頭で自分に言い聞かせた。
さすがにこのままでは寝心地が悪いと、別室に置いてある下着や替えの服を取りに行こうと考えた。
しかし、今から動くのが面倒に感じたのか、セルフィは一瞬、ためらった。
「もういいわ……」セルフィは小さく息を吐くと、思い切ってそのままレオンのベッドに潜り込んだ。
彼の横に横たわり、彼の腕をそっと枕にして彼の顔を見つめた。
「こんなこと、今までしたことないのに……」
セルフィは自分の行動に少し驚きつつも、そのままレオンの温もりに身を委ねた。
彼の腕はしっかりとしていて、彼のそばにいると自然と安心感が広がっていく。
「……わりと、いい男よね……」
セルフィはレオンの横顔を見つめ、ぽつりと独り言を呟いた。
彼の眉のライン、穏やかな口元、そしてすっと通った鼻……そんな彼の顔立ちをまじまじと見つめるうちに、セルフィはふとリリカの言葉を思い出した。
「そういえば、リリカ様もレオンがハンサムだって言ってたっけ……。確かにそうかもしれない。背も高いし、あの優しい目……うん、やっぱり悪くないわ……」
セルフィは心の中で少し照れながらも、レオンをじっくりと観察した。
「でも、今まで彼に言い寄る女性がいなかったなんて、ちょっと不思議よね……こんなに素敵な人なのに……」
セルフィはそう考えると、自分が今ここでレオンの隣にいることが、何だか特別なことのように思えてきた。
「私だって、何人か男性に言い寄られたことはあったけど……」
セルフィは自分の過去を思い返しながら、ふとレオンとの未来について想像し始めた。
このまま、もし彼が自分の隣にいてくれるなら……と。
「このまま放っておいたら、他の女性に取られちゃうかも……」
セルフィは急に焦りを感じた。
彼が回復したら、きっと街からもっと多くの女性が彼を見舞いに来るだろう。
今日も、すでに何人かの女性が彼を見舞いに来たらしい。
「……ダメだわ、そんなの……」
セルフィはレオンの顔を見つめながら、小さく呟いた。
「私にとって、レオンは特別な存在……こんなにも大事な人だったなんて……」
彼の寝顔を見つめるたびに、セルフィの心の中で揺れる感情がどんどん強くなっていく。
彼女はレオンに対する気持ちが、これ以上おさえられないものであることに気づき始めていた。
「もう……私から言うべきかしら?」
セルフィは自分に問いかけた。ステラやリリカからも、彼女の気持ちを伝えるように背中を押されていた。
しかし、いざ告白しようとすると、どう言えばいいのかがわからない。
「恋文……?いや、それじゃあ堅すぎるわ。もっと……私らしい方法で伝えないと……」
セルフィはもぞもぞとレオンの腕の中で動きながら、さまざまなシナリオを頭の中で思い描いた。
「好きです、付き合ってください……? それとも……ずっとレオンのことが好きだったの……だから、私と恋人になってください……?」
セルフィは小さな声で何度もつぶやき、言葉を試してみたが、どれも自分にはしっくりこない。
「いや、待って……直球すぎる……もっと遠回しに伝えたほうがいいのかしら……でも、遠回しすぎると、きっと気づかないかも……」
セルフィはどんどん妄想が膨らんでいき、どうやってレオンに自分の気持ちを伝えるべきかで頭がいっぱいになっていく。
「……はぁ、やっぱり服着ようかな……こんな格好で寝てたら、さすがに……」
セルフィはふと、自分が裸でレオンの隣にいることに恥ずかしくなり、顔が真っ赤になった。
しかし、そのまま眠気に勝てず、もう一度レオンの腕に顔を埋めた。
「でも、レオン……やっぱり、あなたが好きなのよ……」
セルフィは心の中で静かに告白すると、疲れと安心感が混ざり合い、再び深い眠りに落ちていった。
セルフィはレオンの腕の中で彼への感情がおさえられなくなる。レオンへの想いがますます深まっていくセルフィ。彼女の悩みや焦り、そして彼を失いたくないという気持ちが、妄想の形で膨らんでいく夜であった――。




