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第101話 ガレッド団長の導き⁉レオンの試練!

 ステラとリリカがセルフィから「六隠密」の訓練を受けている最中、レオンはガレット団長の運営する孤児院に食材を届けるため足を運んでいた。


 黒騎士の襲来後、団長や他の大人たちは、子供たちの安全を確保するために寝る間も惜しんで働いている。


 孤児院でも戦いに備えた訓練や準備が進められ、レオンもその一環として孤児院に定期的に手伝いに来ていた。


 ガレット団長にとって、レオンはまるで息子のような存在だった。


 レオンが孤児院を訪れるようになったのは、幼馴染であるセルフィを追いかけてのことだった。


 だが、次第にガレット団長のもとで剣術を学び、孤児院の子供たちからも尊敬を集めるようになった。


 彼の優しい人柄と、努力を惜しまない姿勢は孤児院でも評判だった。


「レオン、今日は特に張り切ってるようだな」


 とガレット団長は、レオンの様子に気づき、いつものように声をかけた。


レオンは少し照れながら答えた。


「実は、ステラ大隊長の次の任務に同行できるかもしれないんです。後方支援ですが、お役に立てればと思いまして。」


 ガレット団長は頷いて言った。


「ステラ様とリリカ様、そしてセルフィが一緒なら、心配することはないだろう。だが、お前もちゃんと準備をしておくんだぞ。戦場では何が起こるかわからない。」


 レオンは感謝の気持ちを込めて深く頭を下げた。


「ありがとうございます、団長。今日も稽古をつけていただけますか?」


 ガレット団長はにっこりと微笑んだ。


「いいとも、任務に備えて対魔獣撃退用の剣術をおさらいしようか」


 レオンにとって、剣術の訓練は慣れたものだった。


 剣術においては、彼はセルフィと互角、もしくはそれ以上の実力を持っている。


 しかし、彼には致命的な欠点があった。


 それは、魔力がないことだった。孤児院の子供たちでさえ、幼い頃から少しずつ自分の魔力を覚醒させて簡単な魔法を使えるようになるが、レオンにはそれができなかった。


 レオンは「魔力欠乏症」と呼ばれる病気を抱えていた。


 体内で魔力を生成する臓器が正常に機能せず、魔法を使うことができない彼の現状は、彼自身にとって大きな悩みだった。


 しかし、孤児院の誰も彼を馬鹿にすることはなく、むしろその優しさや努力を惜しまない姿勢が、彼を孤児院の子供たちや大人たちからも尊敬される要因となっていた。


 レオンは孤児院の子供たちに剣術を教えることもよくあった。


 彼の教え方は丁寧で、子供たち一人ひとりの個性を大切にするため、子供たちからも


「レオン兄ちゃん」


 と呼ばれて慕われていた。


「さあ、今日も元気よく始めようか。剣を握るときは、力を入れすぎず、けれどもしっかりと握ることが大事だぞ」


とレオンは笑顔で子供たちに説明した。子供たちは真剣な眼差しで彼の言葉を聞き、剣を握りしめた。


「まずは基本の構えから。構えをしっかりしていれば、どんな攻撃にも対応できるんだ」


 レオンは子供たちの一人一人の姿勢を確認しながら、的確なアドバイスを送り続けた。


「そう、そうだ!いいぞ!」


 子供たちが上手くできるたびに、レオンは喜びを隠せなかった。


 教えられることが彼自身の喜びでもあり、また子供たちの成長を見るのが何よりの励みだった。


 孤児院の子供たちは、レオンの優しさと励ましに感謝しつつ、彼の指導の下で少しずつ剣術の腕を上げていった。


 子供たちは皆、レオンのことを慕い、彼のような立派な人間になりたいと願っていた。


 いつもレオンは任務明けにもかかわらず孤児院の手伝いをしていた。子供たちの笑顔や感謝の言葉が、彼にとっては何よりの励ましだった。


 訓練が始まり、ガレット団長はレオンに基本の剣術を復習させた。


 次第に対魔獣戦を想定した高度な剣術へと進み、レオンの額には汗が滲んだ。


 それでも彼は、疲れを感じさせずに剣を振り続けた。


「レオン、気を抜くな。魔獣相手には一瞬の油断が命取りだ。」


「はい、団長!」


 レオンは気合を入れ直し、再び剣を振りかぶった。


 だが、その瞬間、彼の視界が一瞬ぼやけ、脚がふらついた。


(何だ……疲れが……?)


 レオンの頭に、一瞬、黒騎士との戦いの記憶がよぎった。あの時、黒騎士の強烈な一撃を受け、吹き飛ばされた感覚が蘇る。その時の衝撃で胸を負傷し、ステラに治癒してもらったはずだった。


 しかし、なぜかその傷跡が再び痛み出し、激しい痛みが彼を襲った。


「ぐっ……!」


 レオンは胸を押さえながら、その場に膝をつき、剣を取り落とした。


 ガレット団長はすぐに駆け寄り、レオンの顔を覗き込んだ。


「レオン、どうした!?」


 レオンは痛みに耐えながらも声を出すことができず、次第に意識が遠のいていった。


 胸の痛みはまるで焼けつくようで、まるで黒騎士の剣が再び彼の体を貫いたかのように感じられた。


「ステラ……」かすれた声で、レオンは無意識のうちにステラの名前を呟き、そのまま意識を失った。


 ガレット団長はレオンを抱え上げ、孤児院の医務室に急いで連れて行った。


 医務員たちが駆けつけ、レオンの状態を確認した。


「原因がわかりません。外傷はないのに、心拍が乱れている……」


 医務員たちは困惑した表情を浮かべつつ、できる限りの手当てを続けた。


 ガレット団長は苦々しい表情でレオンのそばに立っていた。


「レオン、お前はまだ倒れるわけにはいかない。ステラ様たちのそばに立つんだろう?」


 ガレット団長はレオンの顔をじっと見つめ、その若者の未来を強く信じていた。


 そのころ、猫耳ハウスでは、ステラ、リリカ、セルフィの三人が無音歩法の訓練に励んでいた。セルフィは、二人に対して実践的なアドバイスを送りつつ、冷静に指導を続けていた。


「ステラ様、リリカ様、足の置き方をもっと柔らかくしてみてください。地面への圧力を最小限にして、足を滑らせるように……」


 ステラはそのアドバイスに従いながらも、心のどこかで不安を感じていた。


 なぜかレオンの顔が頭に浮かび、胸騒ぎがしていたのだ。


 リリカも、隠密技術の習得に集中していたが、ステラの様子に気づいた。


「ステラ、どうかした?」


 ステラは首を振り


「大丈夫。ただ、少し嫌な気配を感じる……」


 と答えた。


 レオンが孤児院で倒れた知らせがステラたちのもとに届くのは、それからすぐの事だった。


 レオンの抱える「病気魔力欠乏症」魔力が全く使えない彼は騎士団に入団するという夢を追いかけて、ひたすら剣術の訓練に打ち込んできた。努力家で優しい人柄の彼は一人の人間として、孤児院の子供たちや周囲の人達に慕われ尊敬されていた。そんな彼が訓練中に倒れ意識を失う。ガレット団長必死になって彼の回復を願うばかりであった――。

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