相談したら怖い答えが返ってきた 2
何の事かまるで分らず、ポケッとしているイリスを、二人してじっと見つめてくる。
わからないので、イリスも見つめ返すしかない。
しばらくの沈黙のあと、伯母が溜息をついた。
「だめだわ、この子。
そんな無垢な瞳で見つめられたら、どういうの? この気持ち。純真な姪がかわいい気持ちと、まだそんな段階といういらだちがせめぎ合うわ」
ヘレン様の方を見ると、ヘレン様も苦笑している。
「十五歳なら、ありですわね。イリス様は十八歳だけど、2歳年下の弟君と婚約者様の姉みたいなものだったから、そういう方面は遅れていらっしゃるのでしょうね。
学問だけでなく、剣術から軍事まで幅広く身に着けられて、素晴らしいことだと思うけれど、情緒面、恋愛関係のお勉強もね」
「イリス、ちょっとこっちにいらっしゃい」
ワイングラスを置いて伯母に顔を近つけると、小さな声で、あからさまな説明が耳に吹き込まれた。
さすがに膝から崩れ落ちたわ。
何ってことを言うのですか。王妃様。
ちょっとは顔を赤くしてくださいよ、お願いだから。
ヘレン様も楽しそうにニコニコとこちらを見ている。初心者にはハードルが高すぎて反応できません。
イリスの場合、初心者というより、まだ参戦していないので、ベールの向こうの世界だ。
キスすらまだなのに。
伯母様はへたり込んでいるイリスに手を貸し、椅子に座らせて、よしよしと手の甲を軽く叩いた。
「良い解決策だと思うのよ。どっちも初めては大変だし。彼女の気持ちも納得出来るのじゃないかしらね」
「あの、普通の行為で勘違いさせるのではダメなんですか?」
「無理よ。すぐにわかってしまうわよ。だから、あえての他の初めてなんじゃないの」
知らないが、そんなものなのだろうか。もう、何でもそのまま呑み込むしかない。
お二人の教えに従おうと決めた。
何年前だったかの、あれ、というのも、ものすごく気になるが、怖い話が飛び出しそうなので、封印することにした。大人になったらもう一度聞いてみよう。
「男性側をどうやってそう導くんですか。ものすごく不自然だと思うのですが」
「それは、あらかじめビクターに言い含めておくの。彼女のためだとしっかりとわからせて。
アンヌ嬢には薬で彼の意識を混乱させて、そちらでの行為で初めてだと勘違いさせると言っておいてね」
あ、そうなのね。ビクターに言い含めて、悪い言い方だけど、アンヌ嬢をだます形にするのか。やはり自然にそれって無理があるわよね。私にはわからないけど!
「早めに動いたほうがいいわ。状況からして、時間はあまり残っていないと思うの。
何の準備もできないうちに、結婚式準備で領地に一緒に戻る、と言われたら引き止められないでしょう」
ヘレン様が追加で助言をくださった。
「ビクターがどう出るか、確かめてから、だわね。その前に、アンヌ嬢にやってみる気があるか確認したほうが良いわ」
そう、その通りです。でもね!
「あの、私がそれをお二人に伝えるので……しょうね。伝えられる気がしないのですけど」
2人ともにこにこして無言のままだ。やるしかないようだ。
相談する相手を間違えたような、大正解だったような、複雑な気分になってしまった。しかし、イリス自身では何も思いつかなったのだ。
それでも、言いたい。先輩方、スパルタすぎませんか!