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公爵令嬢イリスをめぐるトラブル : シャノワール・王妃様の相談所   作者:
第二話 婚約者様、どうか僕と恋愛してください
33/70

追加 その後のある日、友人との再会

 その後のある日、アイラがちょっとだけ、クリフの周辺に干渉してもいいでしょうか、と聞いてきた。


 何をする気、と聞いたら、離婚の噂をフリージアの元夫の耳に入れるだけです、と言う。


「古参の使用人から聞いたのですが、クリフの友人のコリンは、フリージアにベタ惚れだったそうです。離婚後の現在も独身です」


「それで、クリフの離婚で何かが動くと?」


「多分、フリージアとクリフが再婚すると思われているでしょう。それが、全く逆で、この機会に家から出ることになりそうだと、噂を流そうと思います」


「私が引き揚げる頃には、フリージアのヒステリーはひどくなる一方でした。今までコリンには、子供との面会すら拒絶していましたが、会う気を起こすかもしれません」



「ふうん。ほんの一吹き程度の干渉ね。良いでしょう。やってあげて。

 でも、そんな性格の悪そうな女に、元夫がまだ執着しているとは思えないのだけど」


「イリス様。

 世の中には悪い女が好きな男も、我儘な女が好きな男もいるのです。ざっくり言うと、趣味が悪いとも言いますが、人の好みはそれぞれということです。コリンは彼女のああいった性格が、好みなのかもしれませんよ」


「そう。ある程度、裏を取ったということね。アイラ、男の意識が強くなりすぎじゃないの」


「男にも女にもなるので、余計に深く両方の考えがわかるのです。今回はクリフに助力したくなってしまいました。

 屋敷を下がる日、執事のフレッドさんと少し話しましたが、彼も複雑な顔をしていました。あの屋敷で起こったこと全てを、ずっと見てきたのです。現在の状況に思うところが一番大きいのは、彼かもしれません」



 二週間後、メルビン邸にコリンが来訪していた。クリフがこの友人と会うのは実に7年ぶりであった。


 コリンが訪ねてきた表向きの理由は、ハイドの進学についての相談だった。


 離婚の時に、まとまった資産をフリージアに与え、その後も子供の養育に、ある程度の資金を送っていたが、学校への進学にはもっとお金がかかるのだった。


 もっとも、フリージアにはクリフから支払われている給金、それも侍女長としては破格な額を受け取っており、生活は全てメルビン家が持っているので、お金には全く不自由のない状態だった。


 今まで相手にしなかったコリンと会うと言い出したのは、クリフから受けた拒絶の屈辱を誰かで晴らしたかったからだろう。コリンなら、いつでも自分の思う通りになると思っているのだ。そして、今まではクリフもそうだと思っていたのだろう。



 クリフの私室で二人は向かい合い、久しぶりに酒を飲んだ。


「君はやはり、フリージアに異性としての思いは無かったのだな」


「ああ。何回も言ったろう」


「うん。聞いた。でもな、やはり不安になってしまったよ。

 アイリスが家を出たと聞いて、彼女はなりふり構わず家を出ようとした。どうしようもなかったよ。周りも、そのまま結婚を続けることを、許さない雰囲気になっていたし」


 コリンは、酒を一口含んで、ゆっくり飲み込んでから少し笑った。


「初めてだよ。さっき、君のことを悪し様に言うのを聞いた」


「そうか。それでいい」


 二人とも、自分でもう一杯注いだ。


「この酒、いけるね」


「そうだろ。アロンが持って来てくれたんだ。娘の婚約者だよ。私は身内を全て失ったけど、友人が一人出来たようだ」


「それは羨ましいね」


「君にはハイドがいる。君にそっくりだ。いい子だよ」


「そうか。大きくなっただろうね。会うのが楽しみだ。それで、マリアはフリージア似なのか?」


「そのようだ」


「かわいいだろうな。甘やかしたい。思いっきりわがままを聞いてあげたい」


「君のそれ、私には全くわからないのだが、相変わらずなんだな。あの当時も、フリージアと結婚したいと言ってくれる君が、救世主に見えたよ。もしかしたら、再婚しようと思っているのか?」


「フリージアがそんなことを言っているんだ。私は大歓迎だね。

 もう、君に頼ろうとはしないだろうし、今度はうまくやっていけると思うよ」


 もう一杯注いでぐっといった。

 だいぶペースが上がってきているので、チェイサーを勧めた。微発泡の水を冷やしたのを用意している。この酒にはとても合う。今度アロンと飲むときにも、これを用意しよう。


「私はフリージアをずっと、妹としてしか見ていなかった。守るべき存在、か弱くて頼りない子供。とんでもなく間違えていたのだろう」


「君、不器用だからね。ずっとアイリス嬢一筋で、他の女には目もくれなかっただろ。あんなに引く手あまただったのに。

 そして、フリージアのことも見えていなかったんだな。そのせいで幸福を逃してしまったか」


「私のは自業自得だ。君こそ、不出来な妹が苦労かけてすまない」


 グラスの中を見つめていたら、なんだか笑い出したくなった。


「変な会話だな。こういうのを腐れ縁っていうのかな。これに付き合わされたアイリスに、本当に申し訳ないと思うよ。今度会ったら謝るつもりだ。

 母がいる限り同居は厳しいだろうから、別居状態の方が良いと思っていたんだ。アロンに馬鹿だと言われたよ」


 会話は、その後も続いた。

 お久しぶりですね、とにこにこしながら、執事がお酒を二本持って来てくれて、結局、昔のように、二人して寝落ちしたのだった。

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― 新着の感想 ―
なんだか、全くスッキリしない。 よその家庭を壊したフリ~ジアが元サヤで、幸せになるのが、イラっとする!
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