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公爵令嬢イリスをめぐるトラブル : シャノワール・王妃様の相談所   作者:
第二話 婚約者様、どうか僕と恋愛してください
32/70

第二話完結 結婚と離婚と苦い酒

第2話の最終話です。これで、第二話 完結です。


 アイリス夫人宅からの帰り、アイラがアロンに助言をしていた。どうやら、男として危機感を感じる場面に複数回同席して、連帯感が生まれたようだ。


 それに、なぜか男二人はクリフに同情的だ。これらは全てクリフが悪いので仕方ないと思う。母親の刷り込みが原因、それにしても、と思ってしまうのだが、違うのだろうか。


「ねえ、マイク、なぜクリフ様にそんなに同情的なの?」


「それはね、母親二人に圧を掛けられ、守らなければいけないとずっと言い聞かされていた妹分に、我儘を言い続けられた男のきつさが、痛いほどわかってしまうからなんですよ」


 アロンも続けて言う。


「どうしろって言うんです。それでも必死にどうにかしようと頑張ったから、スザンヌ達が八歳になるまで二人の仲が保ったのですよ。きつかったはずです。可哀そうすぎて何も言えません」


 う~ん。そうかなあ。誰を一番に考えるか決めたら、そこから自分のやるべきことは決まってくると思うのだけど。


 クリフの場合、頼る先のないフリージア母娘を、……追い出すことはできない、か。その替わり良い結婚相手を紹介した。でも離婚。

 そして、離婚後のフリージアと子供達を見捨てることも、できないわね。


 ちょっと、フリージア親子って、自分の母親に押し付けられた呪いみたいじゃないの! そう思い至るとイリスも、あ~、となった。


 こんなこと、気付きたくなかったわ。


 ちらっと、アロンを見ると、こっちを見ていた。気が付いたのに気が付いているのよね。そして目で何かを訴えている。


「この後、クリフ様はアイリス夫人から完全な離婚を突き付けられるわね。復縁はないわよ。

 もう、アイリス夫人の恋は終わっているの。あの、なんのためらいも、情け容赦もない物言い、聞いていたでしょう。

 そして、シャノワールへの依頼はアロン様とスザンヌ嬢の関係についてで、その父親は対象外よ」


「駄目ですか」


「駄目ね。

 スザンヌ嬢との父娘の縁も望み薄。こうなったら、フリージアと再婚して幸せを探すか、もう少し長男が大きくなったところで決別するかよ。

 確かに、執事の言う通りね。何でこんな事になってしまったのかっていう感じ」



 アロンが口元を擦りながら、もごもごと言う。

「スザンヌと結婚したら、義父になる人なのに」


「それは大丈夫よ。これからどんどん疎遠になっていくはずよ。会うことも稀でしょうね。今の恋人が義父になるのじゃないかしら」


「そんな、ひどい。お荷物のフリージア親子をしょい込まされているだけで、彼らに特別な思いもないのに」


「仕方ないでしょ。七年前にアイリス夫人が恋の執着を吹っ切った時に、自動的に彼は失恋したのよ。彼女たちの面倒を見るにしても、家に迎えてはいけなかったの。


 致命的な失敗にも、失恋にも、その後の夫人の無関心にも、今まで気付いていなかっただけのこと。可哀そうだと思うなら、教えてあげて、アロン様が」



 それから二週間ほどの後、クリフとアイリス夫妻の離婚が成立した。


 そして、アロンとスザンヌは改めて恋人同士になった。母の言葉で考え方が少し変わったのと、アロンに婚約解消を衝き付けられて、初めて彼を失うことを実感し、恐怖したらしい。


 今は、恋人としてのアロンを意識しまくって、不自然な挙動の彼女がかわいくて仕方がないそうだ。


 良かったわね。


 アロンからの依頼はこれで、完了した。

 しかし、最後に会ったときにアロンから聞いたことが、心に引掛かって残った。



 アロン達の結婚式についての相談の席のことだ。


 その時、スザンヌがバージンロードは祖父と歩くと言ったそうだ。


 アロンが 

「お義父さんに頼まないの?」

 と聞いたら、スザンヌが言った。


「だって、来れないかもしれない方に頼むのは不安よ。一人でバージンロードを歩くのは嫌だわ」


 珍しくクリフが、もちろん絶対に行くよ、と言ったが、スザンヌは笑いながらこう言った。


「あら、そういう時は大抵、突発の用事が発生するでしょ。


 気になさらないで。来れたらで結構です。


 ウエディングパーティーの席も親戚の席に入れておきますから、ご都合が付けば、ぜひいらっしゃってくださいね」


 アロンが慌てて、フォローしようと言った。

「もちろん。出席いただけますよね。花嫁の父親なんですから」


 スザンヌがそれに付け足して

「お子様達もご一緒されるのでしたらおっしゃってくださいね。私の異母兄妹なのでしょう?」


 そこに間の悪いことに、離婚手続きの書類の用意で遅れていたアイリス夫人がやってきた。


「あら、お子様方を認知するの?よかったわね」


「いや、違う。私の子供ではないから」


「あら、そうなんですか。では再婚されたら養子縁組なさるの?」


「ああ、それならお父様は、ご家族でいらっしゃいますの? それなら欠席はないかもね」


「一人だ」


「まあ、そうなのですか?」


 スザンヌとアイリス夫人は不思議そうにしているが、アロンはいたたまれなかった。


 その流れのまま、クリフは離婚届にあっさりとサインをした。


 アロンは、義父になる予定の男をその場から助け出し、そのまま飲みに出掛けた。マイクも呼びたかったが、連絡先が分からないので、ものすごく残念に思ったそうだ。





FIN


第2話の最終話です。ざまあではなく、お父さんが可哀そう、な話になってしまいました。

ちょっとだけ助けてあげたいので、その後のエピソードを追加します。


その後に引き続き第三話を掲載します。

第三話は王太子妃の誘拐事件です。

この話もイリスと王太子の恋の行方がベースですが、かなり恋愛の色合いが薄い章になります。

あれ、恋愛相談だったのでは、と戸惑ったらすみません。国家間の思惑で揺れ動くイリスと王太子の恋の行方がベースではあります。


ついでに、全員が男装するので、なんとなくそっち方面にシフトします。

この章は少し長めです。それと、短編に出した登場人物に敵国潜入の手伝いを頼むので、少し登場します。


よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 単純にバージンロードこいつと歩くの嫌じゃね?て途中から思ってたんですけど、これは離婚してお互いに家庭持ってだいぶたっちゃった家族の距離感で、もうなんの気持ちもないんだなというのが分かるのがよ…
[一言] "大抵突発的な用事が発生する"これが全てですね。親子三人に今までどれだけ強いたげられてきたのか。しかも使用人まで味方、ずっと家にいる夫人はよく何年ももった方。まだ出ていった直後に追い縋れば別…
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