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公爵令嬢イリスをめぐるトラブル : シャノワール・王妃様の相談所   作者:
第二話 婚約者様、どうか僕と恋愛してください
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母は父をバッサリと切り捨てた

 アイリスがびっくりしている。


「何を言っているの?あなた達、うまくいっているでしょ。とても仲がいいし、楽しそうだし。

それとも何かあるの?」



 マイクが助太刀した。困ったような顔を作って、軽い感じで暴露してあげる。


「あ~、あれね。子供を産んだら他の男性を探すっていう、あれ」


「何の話なの。それじゃあ、まるでスザンヌが不貞を働く女みたいじゃあないの」


 スザンヌが反論した。


「違うわよ。子供を産んで義務を果たしたら、お互いに、本当の相手を探すの。

私だけがじゃ無いし、手当たり次第みたいな言い方辞めて頂戴」


 スザンヌはプンプン怒っているが、アイリス夫人は目を見開いている。


「本気でそんなことを言っているの?アロン様は、どう考えていらっしゃるの?」


「僕は、もしスザンヌの考え方が変わらないなら無理です。婚約を解消するしかありません。そう決めました」


「ちょっと待って。急にそんな」


 スザンヌは絶句している。


 どう転がるにしろ、ここで歪みをさらけ出してしまうのが良いと判断し、イリスは話を振った。



「スザンヌ様の結婚観はお母様を見ていてのことと、先日伺いました。別居して恋人ができて幸せになったと。それはそうかもしれませんが、どこか、誤解があるのかもしれませんわ」


「そうかもしれないわね。そう。私は今幸せよ。それは見ていて判るでしょう、スザンヌ。


 幸せになったのは、執着を捨てられたから。クリフに対する想いが細くてボロボロなのに、ずっと一筋だけ残って切れなかったの。それがね、離婚した幼馴染を家に迎え入れたい、と告げられた時に切れたの。


 家に戻ってくれと、説得に来たと思っていたから、すごい衝撃だったわ。でも、お陰で切れたのよ、糸が。解放感ったらなかったわ。


 私が幸せになったのは、新しい恋人ができたことより、自由になったからなの」


「でも、結婚していて立場も財産もあって、恋人もいて、子供もいて、お爺様や叔父様にもかわいがられて、今のお母様は理想的よ」


 釈然としない様子で、スザンヌが小さい声で言う。


「ちょっと違うかしら。離婚していて伯爵夫人の肩書がなくても、今の幸せは何も変わらないわ。私が好きな人が、私を好きでいてくれて、愛情を示しあえる、それが幸せなのよ」


「そこにお父様は入るの?」


「いいえ、入っていないわ」


 アロンとマイクが動揺したように、目を見交わした。


「じゃあ、結婚していなくてもいいのね」


「そうよ。私たちが離婚していないのがまずかったようね。なぜかクリフが拒否したので、そのままになっているけど、そろそろ整理しなくてはいけないようね。面倒だからって、ほおっておいては駄目ね」


 アロンとマイクがまた目を見交わし、バッサリですねと、こそこそ言い合っている。


 アイラ、女なのに男の気持ちに寄り添いすぎよ。


 イリスはスザンヌに問いかけた。


「スザンヌ嬢はアロン様のことが好きですか? それと、彼の幸せを願っていますか?」


「ええ、もちろんよ」


 アロンが席を立ち、スザンヌの横に立った。そして、その場にひざまずいた。


「それを聞けてうれしいよ。僕は君と幸せになりたいんだ。

 君と結婚して、君と子供を作って、皆でいつまでも幸せに暮らしたい。君が幸せそうな顔で傍にいてくれるのが、僕の幸せだ。

だから、二人で幸せになろうと考えてみてくれないか。他の男とではなく」



 おおー。ストレートな奴。


 見た目の王子様感を裏切る、捨て身の直球勝負だわ。

 見ているだけのイリスですら、ぐっと来た。スザンヌ嬢が羨ましい。アイラもうんうんと頷いている。男と女のどちらの立場で頷いているのだろう。


次回が最終話です。

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