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公爵令嬢イリスをめぐるトラブル : シャノワール・王妃様の相談所   作者:
第二話 婚約者様、どうか僕と恋愛してください
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波乱のお茶会2

 アイリス夫人がブラマンジェを一口食べると絶賛した。ピクニック用に一つずつカップ入りで作ったので、お土産にもできる。それで今回、五個を箱に詰めて持ってきたのだった。


「スザンヌから聞いていたけど、これはすごいわ。あなたの家の料理長は天才ね」


 アイリス夫人はスザンヌとよく似た華奢なかわいらしい雰囲気の女性だ。つやつやした茶色の髪とピンク色の頬に、クルクルと表情が変わる瞳を持ち、とても若く見える。


「ありがとうございます。帰ったら伝えておきます。きっとすごく喜びます」


 かわいい人ねと思いながら、今日は私も一緒に食べている。


 前回から更に工夫を凝らし、上に緩めの生クリームを掛けている。バニラビーンズを入れたものだ。

美味しい物を食べていると、煩わしいことも霞んでしまう。


 はあ〜、と浸っていたらマイクに肘で突かれた。


 そうだった。話を促さないと。


「来年、結婚予定と伺いましたが、式はどちらで挙げますの?」


「聖ローザ教会を予約しています。鐘の音色が綺麗で評判なんですよ」


「まあ、素敵ですね。アイリス夫人も同じ教会で式を挙げたのですか」


「私は婚家の義母が選んだ教会で挙げたのです」


「そうなのですね。きっとそちらも素敵な所なのでしょうね」


「そう、まあまあね」


 歯切れが悪い。これは、だめな感じ?


「ドレスはどんなスタイルの物を選ばれましたの?先日スザンヌ嬢と、その話題で盛り上がったのですよ」


「ドレスも義母が用意してくれて、あっさりした大人しい形だったかしら」


「お義母さまがだいぶ精力的に動かれたようですね」


 ”いらん事ばっかりする義母ね”、を貴族表現で言ってみた。


「全く、とてもマメマメしい方で、私色々と教えていただきましたわ」


 これは、”嫌という程口出しされて、うっとおしいったらありゃしない”、と翻訳される。


 翻訳機を持っていなそうなアロンとスザンヌは普通に聞いているが、マイクは皮肉っぽい笑みを浮かべている。


 そして、少し色気を滲ませながら言う。


「それで、ご主人のお心配りのほどは?」


 翻訳すると、”その家での生活には夫の適切な介入が必要不可欠だけど、その辺りはどうだったのですか?”


「そうね。ある程度はね。でも最大のネックは夫に最愛の恋人がいて、同居していることだったのよ。他のあれこれは全て吹き飛ぶ破壊力だったわ」


 これを笑いながら言う。


 アロンが急にこちらに振り向き、話に割りこんで来た。


「僕も聞いていません。結婚当時、愛人と同居されていたのですか。そんなひどいことが?」


「そうね。アロン様はもうすぐ身内になるのだから、知っておいていただいたほうがいいわね。昔のことだから、今はどうでもいいけど、ちょっとした揉め事があったの。


 結婚当時、夫の家に義母の友人母娘が同居していたの。戸惑ったけど、彼女が結婚して出ていくまでの少しの間だけと言われて納得したの。


 でもね、屋敷に入ったら、私の方こそが夫の愛人で、居候のような感じになってしまったの。

 夫は幼馴染との間に恋愛感情はないと言ってくれる。

 でも、彼女が塞ぎ込んでいればご機嫌伺いに行き、彼女が病に臥せれば私との予定は潰れ、そしてそういう事が多かったの。わざとかしらってくらい。使用人の態度も彼女寄りだったわ」


 アロンが苦々しげに口をゆがめた。


「確かに、夫人の方が、本宅に引き取られた、愛人のような様子ですね」


「彼女が結婚して出て行った時にはホッとしたわ。でも、それからも彼女からの呼び出しは続いたの。私が外聞が悪いし、あちらのご主人にも失礼だと言っても、夫は聞かなかった」


 スザンヌがその先を続けた。


「私の誕生日にも、いっつも彼女の呼び出しが被ったのよ。わざとだと思うの。嫌がらせよ。自分の子供の誕生日には呼びつけるくせに。

 それにノコノコ出掛ける父が、腹立たしかったわ。別居して、私清々したの。もう他所の子供を優先する父を見ないで済むって」



「ごめんなさいねえ。私がもっと早く思い切れていたら良かったのに。優しい態度を取られると、信じたくなっては裏切られて、の繰り返しだったのよ」


 アロンが身を乗り出して、アイリスとスザンヌに宣言するかのように言った。


「僕は絶対にそんな思いをスザンヌにはさせません。ですからお願いです。スザンヌ、僕のことを好きになってください」



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