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驚くべき報告

 シャノワールの抱える調査員は優秀だ。


 彼らは元々、私の実家、ブルーネル公爵家の最も優秀な特殊チームで、“ブルーシャドー”と呼ばれていた。ブルーネル侯爵家から名を取ったものだ。1年前の事件をきっかけに、皇室に派遣していたのをさっさと引き上げ、隣国に渡る私一人の護衛に回してしまった。お父様の過保護にも程がある。


 ブルーシャドーをいきなり失った皇室の狼狽は想像に難くない。ほぼ嫌がらせだと思う。しかし、文句も言えなかったのだろう、と思うと気の毒になる。


 逆に、受け入れ側の伯母はホクホクしていたが、ブルーシャドーを貸し出す気はないと、はっきりと断っている。シャノワールのための調査活動は、伯母に貸し出しているも同然なので、それで充分だろう。


 5人からなるこのチームは、どんな場所にもどんな状況にも入り込め、調査だけでなく、裏工作、必要なら荒事もサックリとこなす。


 全員、剣と体術の腕前が極上なのは当たり前だが、それぞれに得意分野を持つスペシャリストだ。恋愛調査だけに使うのは宝の持ち腐れだと、イリスも常々思っているが、父は帰国するまで絶対に、イリス警護の任を解かないと断言している。


 今回の調査では、婚約者の伯爵邸に、庭の模様替えをサポートするガーデンデザイナーとして、ミラとケインを潜り込ませた。

 サロンでの活動では破壊工作が必要なことはほぼなく、ミラは欲求不満気味なので、息抜きに軍への出向なども考えようかと思っている。


 潜入先の皇都の伯爵邸は王宮から1時間ほどの郊外にあり、現在は嫡男のチャールズとアンヌ嬢の二人が住んでいる。

 伯爵夫妻も皇都の邸宅を生活のベースとしており、領地の屋敷は信頼のおける管理人に任せているが、今は災害の後始末のため、チャールズと交代して領地に行っている。


 二人には1週間後に報告に戻るよう言い、送り出した。


 それが四日目の今晩、緊急の報告があると、ミラが変装した地味な姿のままやってきた。


「お疲れ様。まずは報告を聞きましょうか。ケインはそのまま伯爵邸に潜っているのよね」


「はい、今晩も様子を見るよう言ってあります」


「今晩?」


「ええ、昨夜アンヌ嬢の寝室に、兄君のチャールズが来ていました」


「それは、まさかそういう行為をしに来るという事なの」


「そうです」


「詳しく話してちょうだい」


「調査開始時から、日中の行動を記録し、室内の品や手紙、使用人の噂話などから過去の行動を調査しました。その中で、婚約者以外との繋がりは見られませんでした。

 三日目の夜中に、夜間の動きを見張っていたケインが、チャールズが彼女の部屋に入るのを見かけました。連絡を受けて2人で忍び込んだところ、行為の゙最中でした。

 その後、チャールズは自室に戻って就寝。アンヌ嬢は薬を飲んでから眠りました。翌朝の二人にいつもと変わった様子はなかったので、ある程度続いていることなのだと思われます」


 忌々し気な顔をして、吐き出すように話す。


「薬を仕舞った引き出しに瓶が入っていました。以前は無かったので、チャールズが昨晩持って来たのだと思います。薬はおそらく、隣国で流通している避妊薬。チャールズはこの2週間、隣国へ商談に出かけていたので、そこで買ったものと思われます」


 静かに聴いていたイリスは、疑問を呟いた。

「それは同意あってのことなのかしら。本当の兄妹ではないとか。たしか両親は災害の後処理のため領地に行っていて不在なのよね。だとしても、屋敷内の使用人達は誰も気付いていないの?」


「もしこれが半年も続いているなら、誰かしら気が付いていると思います。もしくは協力者がいて隠しているかです」


「そうね。気付いたとしても、これは口には出せないわよね」


「では、兄と妹の関係を探って頂戴。まずは血の繋がり、次に半年前とその前後で変化がないか。それと、妹の婚約をチャールズはどう思っているのか」


「二人は伯爵夫妻の実子で、兄妹としてずっと一緒に育ってきています。今日、屋敷に古くから仕える使用人達に確認しました」


 ありがとう。さすが仕事が早いわ、と労らってから、小さくつぶやいた。

「そう、彼は妹をどうしたいのかしらね」


 これは思っていたより、嫌な話になりそうだ。それに相談者に結果をそのまま告げるわけにはいかないだろう。状況を掴んで、それから考えなければいけない。


 新しい情報が上がったらこまめに報告をするよう言い、ミラをカイン伯爵邸に戻した


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