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公爵令嬢イリスをめぐるトラブル : シャノワール・王妃様の相談所   作者:
第二話 婚約者様、どうか僕と恋愛してください
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問題の言葉 婚約者は恋人じゃないわ、が出た

 昼食の時間に戻ると、木陰にテーブルがセットされ、クロスの上には両家から持ち寄った料理が所狭しと並べられていた。

 アロン達は既に席に着いていたので、急いで席に着き、侍女たちにワインを注ぐよう指示し、食事を始めた。


 スザンヌとアロンは料理のグレードに驚き、夢中で食べていた。


「どれも、驚くほど美味しいです。見た目にも華やかで美味しそうで、目移りしてしまいます」


「そうでしょ。うちの料理長の渾身の作なの。ピクニックに向いた食べやすくて楽しい料理を、とお題を出したら張り切ってしまって。

 しっかり感想を聞いてきて欲しいと言われているわ」


 スザンヌが鴨を一番に挙げた。


「どれも大満足です。一番好きなのは鴨のマーマレードソース掛けです。一口で食べられるのが凄く嬉しいわ」


 アロンは鶏のはちみつ焼を、マイクはスザンヌと同じく鴨、イリスはマスのハーブソテーを一番に押した。この三品は今後のピクニックランチのレギュラーだ。


 アロンがスザンヌに鶏のマーマレード焼を勧め、マスも味を見てご覧と言って皿に取り分けている。


 侍女に言ってワインのおかわりをもらい、新しいナプキンを渡してと、まめで甲斐甲斐しい様子を観ていたマイクが、


「賭けは僕の勝ちのようですね」と言った。


「うーん、どうかしら」


 と言った時、アロンがスザンヌの頰にキスした。


「や、急にキスしないで。恥ずかしいわ」


「ごめん。美味しそうに食べている君が可愛らしくて、つい」

 

 負けを認めるしかないか。



 白いブラマンジェがマイクの前に二つ置かれ、恨めしそうにそれを見つめていると、

「どうしたの、デザートは食べないの」

 

 アロンに聞かれた。


「実は二人で賭けをして私が負けたの。賭けたのが今日のデザートのブラマンジェよ。絶対に美味しいから、冷たいうちにどうぞ」


「どんな賭け?」


 内緒です。


 スザンヌが分けてくれた一口だけ食べられたが、やはり絶品だった。マイクは全く気にせず2つを平らげ、他の3人の顰蹙を買ったが、約束通り爽やかに知らん顔をしたのだった。性格の悪い爽やか好青年というのもありなんだろうか。


 恋人なのに優しくないとスザンヌになじられたマイクが反論した。


「だって賭け事だよ。負けて悔しい思いをするくらいでないと楽しみもないじゃないか。君たちも何か賭けてみない」


「そんなことして喧嘩になったら嫌だわ」


 平和に穏やかにが一番よ、と言うスザンヌに、アロンは、もしデザートを賭けて君が負けても、僕の分も君にあげるよ、という甘々な答えを返した。


「優しい恋人でいいわね。誰かさんも見習ってほしいわ」


 イリスがぼやくと、スザンヌが言った。


「彼は恋人じゃないわ。婚約者よ」


 あら、ついに問題の言葉が飛び出した。すかさずマイクがそれってどう違うの、と聞く。


「恋人は、恋をする相手で、婚約者は家族を作って家門を繋ぐ相手よ」


「それ、恋人と婚約者が同じ相手では駄目なの?」


「駄目というか、無理じゃない」


 すかさずアロンが口を挟んだ。


「僕となら無理じゃないよ。恋人のままで夫婦になって、ずっと幸せに過ごせるよ。お願いだから僕の恋人になって」


「あなたは理想の結婚相手よ。だからその関係を壊したくないの」


 ああ、そうか、スザンヌは恋に憧れているけど、恋するのが怖いんだわね。傷付くことが多く、傷付けあって悲惨な状況になる結婚も、よく聞く話だもの。


 幸せな結婚もあると納得させられれば、彼女は変わるかもしれない。


 周囲の幸せな夫婦を頭の中で挙げてみる。国王陛下夫妻、夫が尻に敷かれているけどベタ惚れカップル。でも、参考にと会わせるわけにもいかないし、ちょっと求めるイメージとは違う。


 我が家は強い父と、その首に首輪を嵌めて、長い紐の先を手に、にっこり微笑む母。これも癖が強すぎて、バラ色の結婚生活を想像するのには向かないでしょうね。


「アロン様の御両親の仲はどんなふうですか」


「両親は非常に仲が良かったです。でも三年前に母が亡くなり、父は寂しそうです。再婚するか恋人を持ったらと勧めているのですが、まだいいと言います」


「残念なことでしたね。お悔やみ申し上げます」


ご存命ならスザンヌにとって、良い見本だっただろうに。


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