電子書籍版ランキング入り お礼SS
エリーヌは暑い日差しを受けて、手をかざす。
「暑いですね……アンリ様は大丈夫でしょうか……」
エリーヌは研究室にこもっている夫であるアンリのもとへ向かう。
(アンリ様はほっとくとお水を飲まないから……)
足早に研究室に向かって足を踏み入れると、アンリの姿が見えない。
「あれ……? アンリ様……?」
部屋の中を見渡すと、なんとソファのほうに人が倒れているではないか。
その服装からエリーヌはすぐにアンリだと気づく。
「アンリ様!?」
エリーヌは急いで駆け寄ってアンリに声をかける。
「しっかりしてください!!」
「うう……」
彼の唇はかさかさで明らかに水分不足なのが見て取れる。
(大変! お水……!)
エリーヌはテーブルにあった水をとると、それをアンリの口に注ぐ。
「ん……うぐっ!」
「あっ! ごめんなさい!」
慌てて飲ませたため、アンリがごほっとむせてしまう。
「エリーヌ……」
「アンリ様!」
(よかった……)
エリーヌの安堵の声が響き渡る中、アンリが言いにくそうに告げる。
「エリーヌ、助けてくれて嬉しいんだけど、俺にあげたの何かわかる……?」
「え……? あ…………」
エリーヌが持っていたのは、実験用の水──。
「ごめんなさい」
「まあ、いいよ。代わりにほっぺにちゅーしてね」
「なっ……!」
エリーヌは顔を真っ赤にしながら、アンリの頬に唇をちゅっとしたのだった──。
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