告白
生きてます。死にそうです。(疲労で)
先ほどはすみません。またもや誤投稿で未完成の話を上げてしまいました。m(_ _)m
斎藤と別れた後、甲斐を見て胸糞悪くなったり、ライフル担いだメイド服の女性がガチムチオカマに担がれてたり、銀髪の少女がふわふわした女性に連れまわされているのを目撃したりと色々あったけど、邪魔が入ることはなく時刻は19時。そろそろ花火の時間だ。
そういうわけで今、俺たちは斎藤に教えられた獣道を進んでいた。
「ふぅ。あっつい」
獣道はいいのだ。歩き方を工夫すれば楽になるし、なんなら武蔵師匠のせいで慣れているから。でも、この暑さはやばい。夜になったのに少しも涼しくならない。そのせいで汗が止まらずハンカチは死亡。もう顎とか髪から滴ってるくらいだ。
「まだ大丈夫?美琴」
俺の提案で要らぬ苦労をさせているわけだからしっかりフォローせんと。そう思い髪をかき上げながら後ろを振り返る。すると、
「は、ひゃい!大丈夫です!」
手をわちゃわちゃさせ、顔が真っ赤に染まった美琴が…………………これ、熱中症じゃね?
「本当に大丈夫?水飲んだ?ふらつかない?無理してたりしない?」
「し、してませんよ!だから大丈夫です」
「でも顔真っ赤だし、熱中症じゃない?」
(言えない……月光を浴びて、髪をかき上げた奏斗さんがかっこ良すぎただけなんて言えない!)
ますます顔が赤く……キザ男じゃないけど、まぁ仕方ない。
「ちょっとごめんね」
「へ?」
一応一言断ってからポカンとしている美琴のおでこに手を伸ばして……ピタリと添えた。
うん……暑いけど、俺と同じくらい。そんなに変では――
「あわわわわ」
あ、熱っ!?いきなり温度が跳ね上がった!?
「ふきゅぅ……」
「なっ!?」
次の瞬間いきなり電源が落ちかかのように倒れた美琴をなんとか抱き留めた。
そして腕の中の美琴は完全に目を回しており、限界なのは誰が見ても明らかだった。
「くっ!俺が、もっとしっかりしていたら――!」
そんなことを言いながら俺は美琴を背に背負い、そのまま下山の準備を始めようとした、のだが。ガサガサ、と茂みが揺れた。
そしてそこから一つの白い影が飛び出してきて、俺の前に立った。
「私、お嬢様に支えている白服と申します」
「あ、はい」
君、名乗るつもりないでしょ。いや、君っていう歳じゃないけどさ。もうおばあちゃんだし。
「すみませんがお嬢様をお借りしても?」
「あ、どうぞ!多分ですけど熱中症になったみたいで」
「それはないので大丈夫です」
「あ、はい」
何故にそんな確信しているんだ?
「……体には異常ないですね」
「?じゃあなんでいきなり倒れたりなんか……」
「それは………」
それは?
「……あれです。額にある、やる気スイッチがオフになってしまったんです」
「やる気スイッチ!?」
「はい。ブルジョワの人はみんな持ってます!」
皆んな持ってるの!?なに、じゃあ皆んな寝たいなって思ったらおでこ叩けば寝られんの!?便利すぎない!?
「あ、でも、スイッチ押した感覚なかったけど」
そう、あの時俺はピタリと手を当てただけ。スイッチは押してない。
「そ、それは……タッチセンサーです!なんて言ったってお嬢様は、iSwitch15Pro搭載ですから!」
「何それりんご社!?」
「違います。富士通りです」
クッ!仁保无製だったか!
「それはともかく」
「いや、さらっと流せる技術じゃないんですけど」
「それはともかく、「いや」それはともかくお嬢様を運びましょう」
こいつ、強い……!
「運ぶってどこへ?」
「件の花火スポットとやらに、です。今のうちに運んで仕舞えば楽でしょう?」
「確かにそうだけど」
「では、出発です」
§ § §
ペチペチ。
暗闇の中頬を叩かれる感覚を覚えて目が覚める、と……
「あ、起きた」
ドアップの奏斗さんが
「きゅぅ」
「美琴!?」
§ § §
テイク2
今度は微睡の中、少しずつ意識が覚醒していく感覚を覚え目が覚める、と……
「おはようございます。お嬢様」
老婆がいた。
「――ッ!?ッ!?ッ!!!?」
節子さん!?
「もう大丈夫ですか?」
「大丈夫って?」
「お嬢様はキャパオーバーで気絶なさったのですが覚えてらっしゃらないので?」
そう言われて少し記憶を探ってみる。
気絶……あ、二つほど心当たりが。
というかこれ、まずいのではないでしょうか。奏斗さんが私の体調を気遣って帰ろうとか言い出しそうです。
「桐生さんには先に、と言っても十数メートル程度ですが先に行ってもらいました。あと、すでにお嬢様の気絶は誤魔化してあるのでご安心を」
「あ、ありがとう」
「髪のセットも直してありますので、後は浴衣ですが……そのまま行きますか?」
そう言われて自分の装いを見下ろすと……かなり気崩された浴衣が。
「色仕掛け、という点では効果的かと。ただ、変態の誹りは避けられないでしょうが」
「と、整えてから行きますッ!」
では後ろを向いてください。そう言って節子さんは帯など色々乱れたところを治していってくれた。
「はい。これで大丈夫です」
ポン。と軽く叩き完了したことを告げる節子。
そしてもう一度、私に背中をポンと押した。
「頑張ってください。お嬢様」
§ § §
時計を見る。………かなりギリギリだ。花火が始まるまで後少し。そもそも、結局よく分からなかったけど美琴は大丈夫なのだろうか。それに健康に問題なくとも、もう間に合わないような気がするんだけ――
「奏斗さん!」
「美琴!?」
そこに綺麗な美琴が……いや、精神的じゃなくて物理的に。これ、浴衣新品に変わってるわ。明らかに綺麗すぎるもん。あの白服俺を先に行かせたのこれが理由だな。つーか、それならそうと言ってくれればよかったのに。余計な心配する羽目になったじゃないか。
「すみません!お待たせしてしまって」
「いや今来たところだよ」
「へ?」
「あ」
あ、ああ、あああ、嗚呼ああああ!ミスった!緊張しすぎて頭の中回路バグったぁあ!!?
俺は、さらに、テンパった。
§ § §
今来たところ???
ちょっと日本語がおかしい気が……いえ。気のせいですね。文系教科で私に完勝している奏斗さんがあんな変なことを言うわけが――
「そういえば美琴着替えたんだね、浴衣」
「え?……あ、本当ですね」
節子さんが気を利かせてくれたんんでしょうか?あれ?でもそれってつまり、森の中で全裸になったと言うことに………まぁ、見られてないなら気にしないでいいですね。私女ですし。
「えーっと……」
「…………」
奏斗さん?出来ればお話し続けて欲しいのですが。会話のボールは今そちら側に……あれ?こちら側?
あ、あれ?会話ってどうやってするんでしたっけ?か、奏斗さん助けてください!?
「あーうん。………」
な、なぜか奏斗さんの目がグルグル渦巻いています。鳴門の渦潮です。
と、思考が横道に逸れたところでこれはいけないと、会話を再開しようとしたのですが。
…………………
5分経過。
だ、駄目です。なぜか緊張して全く頭が働きません!?
もう甘酸っぱい無言の空間などではなく、ただただ気まずいだけの空間になっていました。
一体どうしたら……そう思った時。
ドン!ドドン!ドーン!
夜空が朱に彩られ、次々にその色彩を変えていきました。
そう――
「花火……」
花火大会が始まったのでした。……………あれ?私の予定では花火大会前にムードを作って、最中又は終わった後に告白するはずだったんですが……前提条件が成り立たない!?
ど、どうしましょう!?これでは私のシュミレーションが役に立たない。そうなると告白のフレーズも考え直さないと!?あ、あわわわ……
§ § §
白い。白い世界。どこまでも白く染まり日が落ちない南極の白夜のように今、俺の脳内は真っ白だった。
ふっ……考えてた告白シーンのこと。全て忘れたぜ。でも今俺は焦ってない。何故かって。それはな……感情って一周まわるとおかしくなるんだ。そう、入学式の俺のようにっ!
「綺麗、ですね」
「美琴ほどじゃないけどね」
「へっ!?」
そう、おかしくなるんだよ!今の俺みたいになぁああ!俺今絶対おかしくなってる!チェリーボーイの俺がこんなキザったらしいこと言えるわけねぇんだよぉおお!!!
もう美琴の方を見れない。いや、見ない。そう決心した矢先、俺の袖がちょんと掴まれ――
「そ、その。奏斗さんの方が………派手、ですよ」
………どう、反応しろと?
「………ありがとう」
「い、いえ……」
そして広がる沈黙。そこからただ花火を眺めるだけの時間が始まった。そして――
「終わった、な」
「終わっちゃいましたね」
結局何も出来ずに花火は終わってしまった。
後はもう、祭りの感想を交わしながら帰路につき、明日からは今まで通りの日常を過ごすだけ。
一組の友達として……それは、いいのか?俺。
「じゃあ帰りましょ――」
「――ごめん。ちょっといいかな」
よくない。だから、後ろに振り返ろうとする美琴の腕を掴みこちらを向かせた。そうして見えた目は驚きに染まっており、場違いながら少し嬉しかった。サプライズじみたものは記憶に残るから。
「えっと、なんで……しょうか」
「…………」
……なんて言おうか。咄嗟に引き留めたけど、告白フレーズ何にも考えてなかった。
俺がお前を幸せにする?
結婚を前提に付き合ってください?
君のことを一生守らせてくれ?
君の味噌汁が一生飲みたい?
どれも、事前に考えた言葉。ベターでそれ故に外さないであろうと、打算で選んだ科白。けれども言うべきはどれでもない気がする。なんかカッコつけてて鼻につくというか。それに最後の二つはジャンルが違うし。
「あ、あの……?」
嗚呼、そうだな。こっちは「付き合ってください」ってお願いする側なんだ。元からこっちは不利な立場。なら、変に言葉を飾り立てて見栄を張る必要なんてない。というかチェリーの俺には出来ない。
だから――
「美琴」
「はい……」
しっかり正面から目を合わせて、はっきりと、端的に、分かりやすく自分の気持ちを――
「好きです。付き合ってください」
――伝えよう。
「ッ――!!?」
精神年齢アラフォーチェリー。実質年齢20くらいの男の告白。それにしては簡潔すぎる気もするけれど、結局この世界でモテようとも本気で恋愛したことなんてない俺にはこれが精一杯。
だから今、告白した俺にできるのは差し出す手を握ってくれることを祈るだけ。
別に何で好きになったとかではない。物語みたいなシンデレラストーリーも、祐樹みたいな逆転世界イベントがあった訳でもない。ただ、いつの間にか自分の心の何処かに常に居るようになった。ただそれだけの思いだけれども、どうか叶いますように、と人生で初めて心から神に祈った。きっと居るであろう神様に。
一瞬。多分時間にして数秒が何十分にも感じられる世界の中、その声は俺の耳に届いた。
「こちらこそ、よろしくお願いします……!」
嗚呼――
「美琴。好きだ」
「……私も、です」
神様。美琴。ありがとう。俺の初恋は叶ったよ。
はん!リア充◯ね!羨ましいぞ!
と、奏斗への嫉妬はさておき、実はこの第二章は後「双方のご両親への挨拶」で、終わって二学期編(三章)に突入する予定だったんですよ。
ただ、ですね。ちょっと今リアルがやばくてですね。投稿頻度がかなーり落ちることになりそうなんです。
というか、もうなってますね。すみません。
そういう訳で取り敢えず二章は早めに完結させたいと思っていますが、ちょっと時間が掛かりそうなのでゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。
(……………出来ればブックマークして待っててくれよな!更新されたかどうかが分かりやすくなるぜ!)
では、また会いましょう!(* ̄▽ ̄)ノ~~ マタネー




