BBQ
遅くなりすみません
俺は走っていた。
浜辺を走り、アスファルトの上を走り、屋根を走った。
後ろから聞こえる名を呼ぶ声から逃げんと走っていた。
そして――
§
バーベキュー。略してBBQ。
素晴らしき調理法であり食事法。
俺はBBQで作られた物以上に好きなものなどないと確信している。
そして今日はバカンスの二日目の夜。明日は家に帰るので今日が最後の夜になる。なのでみんなが持ち寄った食材でBBQを行うことになった。
そして――
「じゃあ焼く人は誰からやる?」
「では、メイドたるわ――」
「俺がやります。いえ寧ろやりたいです。というか、やらせてください!」
俺は今日鍋奉行ならぬBBQ奉行になるのだ。
そう、覚悟を決めた矢先のこと。
「あ、炭がない」
「「「――ッ!?」」」
祐樹の言葉に皆が驚愕した。
「白服ッ!」
「は、はいぃ!?」
うん。めちゃくちゃビビってる。ちょっと可哀想なくらいに。あんなに怯えるなんて一体どんな罰が待ち受けているんだろうか。クビか、はたまた辞職かいや、白服になれるってことはエリート。職を失うだけではああわならない………指詰めか?(ヤクザのケジメの取り方。指を切る)
「何故、炭が、ないんですか!?」
「しょ、初日の騒ぎで準備に不備があったのかと!」
「だがらと言って炭を忘れるなんてことがありますか!?」
あれ?初日の騒ぎって俺のせいじゃね?電車痴漢事件のことだよね……やばい。美琴に指詰められる
「まぁ、美琴。この白服美女さんを攻めたって何にもならない」
か、考えろ、考えるんだ!俺が元凶だとバレない方法をっ!そして|マイディアーフィンガー《愛しの指》を守るんだっ!
「確かにその通りですが」
「と言うわけで、俺が勝ってくる!」
逃げるは恥だが役に立つ。海野つなみさん。素晴らしい名言をありがとう。俺、今現在進行形で役に立ってるよ。何故って、逃げてる間の時間が解決してくれることに期待することにしたから。
「アデュー!30分後にまた会おう!」
「奏斗さん!?」
ふははは!だてにキャンディちゃんことオカマ師匠に鍛えられていないのだよ!志帆姉がキッチンに食材を取りに行ってる今、誰も俺を止められない!
「ふはははは!」
そして凄まじいスピードで去っていく奏斗を呆然と見送る一行。
「……私追いかけようか?」
「いえ。うちの白服に――」
「あれ?奏斗様はどこに?」
そして現れる真打登場。メイド服を着た奏斗の姉弟子天霧志帆である。
「あ、奏斗さんが止める間もなく炭を買いに行ってしまって……よほどショックだったんだと思います」
「なるほど。確かに奏斗様は道場のBBQでも大はしゃぎしていましたから」
「やっぱり――!私のせいで――!」
そう悲壮感たっぷりに崩れ落ちる美琴。おそらく嫌われたとかそう言うことを考えているのだろう……いや、考えている、絶対。
そして志帆はと言うと
「ふぅ……久しぶりですね鬼獄處は」
「文字が違くない?」
「気のせい気のせい。気にしちゃダメだよ祐樹」
いつものロングタイプメイド服から、裾を千切りミニスカバージョンに変身した志帆は、ドウッ!という音と大量の砂埃を巻き上げ、瞬く間に消えていった。
そして時は冒頭に戻る
§
「奏斗様〜〜!」
「まずいまずい。このままじゃ指詰められるっ!」
俺はメチャクチャ焦っていた。
今俺の追跡しているのはあの志帆姉だ。俺の中で人間辞めてるランキングオカマ師匠に次いで2位にランクインしている超人だ。そんな超存在に追いかけられたらもちろん焦る。(体探しの生徒の気分)
「それに、志帆姉結構オカマ師匠に毒されてるから……指どころか首詰めさせられそう」(それは死刑)
嗚呼。何故こんな事に。いや、元はと言えば電車に乗ってみたいなんて言った俺が悪かったんだ!次いであの場で謝罪でなく、逃げを選んだ俺が悪かった……か。でも――
「奏斗様〜怒らないから出てきてください〜!」
もう引くに引けないんだよ!というか志帆姉の言葉って絶対に怒るやつじゃん!
「奏斗様〜?……匂いが強くなってきました〜!そろそろ逃げるのは諦めてくださいー!」
「犬ですかいっ!?」
近づいてくる声にビビった俺は全力で走り始め、角を曲がる瞬間――飛び出してきた黒い影とぶつかった。
「いっつ……あ、すみません!」
結構いいのが鳩尾に入った俺は一瞬悶えるが、目の前で尻餅を付きパンを咥えた少女を見て急いで謝罪の言葉を……何故パンを?
「(モグモグごっくん)……ふぅ。あなたこの私にぶつかるなんて――」
あーアレっすね。漫画でよく見る高飛車さんですね。髪の毛金髪ドリルだし絶対そうだわ。「私にぶつかるなんてどんな目に遭うかわかってるんでしょうね!」ってやつだな?
「――運がいいわね!」
おっとそれは知らないぞ?
「早朝パンを咥えた少女と美青年が街角でぶつかり、倒れた美少年にパンを差し出す……これが日本の赤い糸で繋がるっていうやつなんでしょう?」
まって俺それ知らない。どこの文化?普通パンじゃなくて手だと思うんだけど。
「日本のアニメで見たもの」
よし、日本のアニメ制作会社訴えよう。あなたのせいで変なのに絡まれましたって。
「というわけで、あなた私の愛人になりなさい!」
俺氏突然の愛人になれ宣言にびっくり。これがパツキンドリルの文化か……最低でも3回はデートしないと俺告白は受け入れられないんだ。まぁされた事ないけど
「……ごめんなさい!俺、パツキンドリル無理なんですッ!」
「へ?」
「間違いました!会ってすぐは無理です!」
「え、え?で、でも――」
うん。困惑してるね。多分美人さんだし今まで男に困ったことはないんだろうな……いや、この世界でそれすげぇな。意外とこの世界の男って尻軽なのか?
「というか出会い頭に愛人になれ宣言はどうかと思います。普通に嫌われますよ?」
「な、なな――」
「それに俺には好きな人がいるんで!」
「す、好きな人!?」
「はい――」
そこで俺の好感度マイクはある声を拾い上げた。
「奏斗様ー」
あ、追いつかれる
「あ、では急ぐので!さいなら!」
「あ、お待ちを――」
そして俺は路地裏に飛び込んだ。時間を稼がんために……後ついでにホームセンターへ辿り着かんために。
§
「あ、あの人間――!」
私が先ほど出会った黒髪紫眼のイケメンさんに怒りを感じていると
「すみません」
「キャッ!?」
いきなり、何もなかったはずの私の目の前にとんでもないメイド服の美女が現れた。
「あの、黒髪紫眼のイケメンを見ませんでした?」
「えっと」
知っていますわ。だけどこの女に教えるのは何故か癪に障りますわね?何ででしょう
「いえ、あなたが見たことは分かっているんです。かなり濃い奏斗様の匂いがしますから」
この女ストーカーという奴ですわ。
この私の誘いを断ったあの男は気に食わないですけれど……… 私危険人物に情報を得るほど女は廃ってませんの。ストーカーさんには無駄に走ってもらいましょう。
「あちらに行きましたわよ?」
「――ッ!ありがとうございます!」
そう言って私が差したのは彼が元きた道。この女は匂いが分かるみたいですし明後日の方向を差すよりはこの方が安全でしょう。
そして、ストーカー女は恐ろしく完璧な礼をして姿をかき消した。……アレがジャパニーズ忍者ですわね!犯罪者相手でも興奮しましたわ!
「それにしても、彼も逃亡中でしたのね……ふふっお揃いですわ」
先程までは苛立ちがあったけれども、お揃いなんていう物が見つかった途端何故か許せてしまいましたわ。むしろあの反抗的態度もよく考えたら可愛らしいような……ええ。可愛らしいですわ
「奏斗、という名前なのですね。見た目は特徴的でしたしすぐ見つかるでしょう」
「エリーゼ様ー!」
「あら。丁度いいタイミングですわね」
待っていてくださいませ。必ず手に入れて見せますわよ。え?先程断られていたじゃないかですって?それは問題ありませんわ。だって問題なのは“時間”なのでしょう?
もうちょっとで、バカンス終了。次は夏祭り
ブックマークと★評価お願いします




