決着
その後も俺はドリブルしたりシュートを打ったりする中、天悠はただシュートを打つだけで俺たちと競り合っていた。
(まずい。思った以上にコイツの使う漫画のシュートが強力だ。ゴールキーパーとしてはほぼ素人の祐樹じゃ防ぎきれない。……ん?シュートが強力?………そういえばさっきからシュートしか見てない気がする。ということは――)
「天悠おまえ、シュートしか打てないんだろ。だからさっきからドリブルをしようとしないんだな?」
「……!クク。バレてしまっては仕方ない。その通りだよカナート」「カナート?」「強大の力ほどその代償は大きくなる」
(つまり……何だ?漫画を再現しようと無理な動きをしたせいで足を痛めてるとか?つか、カナートってなんだよ)
『そう!強大な力に代償は付きもの。つまりサッカー素人だった雲類鷲様は、カッコいいからとい理由でシュートの練習だけに明け暮れ……結果シュートしか練習できなかったのだぁあ!!ちなみにそんな可愛いところに2組女子の多くが打ち取られたりしている!!』
「んな理由かよぉお!!」
(じゃあこいつのドリブルとか警戒しないでよかったじゃん!つーかそれが分かってたらもっと点取れてたのに!)
「天悠。この勝負俺がもらった!」
「フッ!我が技を見抜いたからと言って調子に乗るなよ小僧!」
そして、お互いの神をかけた戦いは最終ラウンドへと突入していった……神じゃ無くて髪だった。
▲▽▲▽▲
「喰らえ!ネコ・タイガーショットォオ!!」
「アッパーディフェンス!」
――ピー!
『ゴーーール!と同時に試合終了!スコアは15対7で1組の勝ちだぁああ!!』
「「しゃぁああ!!」」
勝利のアナウンスと共に俺たちは雄叫びを上げ、祐樹と抱き合おうとし――祐樹が後ずさった。
――スッ
――ススッ
「……………」
――ススッ
――スススッ
「なんで逃げる?」
「あーうん。……なんでだろうね。近づいちゃいけない気がして」
そう言って目を逸らした祐樹の視線の先には――オタクがいた。
「祐樹ぃ〜!俺のハグ受けられるよなー?」
「あははは……バイバイ!」
――ダッ!
――ガシィッ!
「逃がさない!」
「ギャァああ!!」
(ふははは!一緒に汚れようではないか!特に理由はないけどみちずれじゃあ!)
と、祐樹に抱きついている俺の背中をトントンと叩かれ、振り向くとそこには金髪の男子が……
「だれ?」
「天悠だ」
「ゑ?……ゑぇええええ!!?」
(ウッソでしょ!?天悠!?黒髪黒目で全身黒装備で固めてた天悠!?なんで金髪になってんの?かつら?カツラを用意してたのか?負けた時のために用意してたのか!?)
「そ、それカツラ?」
「ふっ。これこそが我が真の姿。黒き装いは仮初のものよ」
そう言って天悠は手に持った黒い物……カツラを俺の目の前に掲げてみせる。
「……おまえハーフだったの?」
「我はイングランドの四分位数なり」
訳
そう言って天悠が目をいじり……手をどかすと、そこには碧眼が現れていた
「カラコン!?」
「我は黒き闇の帝王だからな」
カツラとカラコンを外した天悠は物語に出てくる白馬の王子という言葉がぴったりなイケメンだった。
「だが、もはや我は帝王ではない。故なんと名乗ろうか……ああ。長文を喋るから標準語で話すぞ」
「それはざんね「全然いいよ。なんなら一生そのままで」……」
(祐樹お前なかなか辛辣だな……)
「今の俺は金髪碧眼のイケメン。黒き帝王とは真逆の装いだから……陽キャの象徴である勇者が妥当かな」
「勇者って陽キャだっけ?」
「正義と悪じゃなくて、陽キャ陰キャなの?」
俺たちのツッコミを「ふっ」と笑って流し、俺に向かって指をビシィ!!と突きつけてきた。
「なれば我が宿敵である貴様は今日から魔王カナートだ!」
「待って!?魔王はやめて!?」
「ま、まお…ぷっ…くくッ!」
(魔王カナートって、和訳したら魔王水路だぞ!?魔王だけでも悶死ものなのにそんな色物つけられたくねぇえ!)
「さらば魔王カナート!後世では私が勝つ!」
ふははは!と高笑いしながら、天悠はオタクと読書を連れて去って行った。
「あ、オタクに文句言うの忘れてた」
「僕も二次被害の賠償請求忘れてたよ」
はい。ここでとりあえず「第一章中学入学編」は完結です。
この後、完全に忘れていた「夏服」「奏斗の誕生日」等の間話を挟んで「第二章夏休み編」に突入します。
第一章で、主要キャラをだいぶ出したのでこっからは、コメディ要素&恋愛要素全振りで行く予定です。
というわけでこれからも「転生先は貞操観念逆転世界!?」をよろしくお願いします。




