女子side
今日はボール大会。今朝とっても照れた姿が可愛かった奏斗さんの活躍を見ることが出来る大切な日です。
そして今私たちは男子用の小さいコートを囲む様にして立つ校舎の窓から、またはテレビから見ています。そして
『さあさあ、まずグラウンドに入ってきたのは1組の紫紺の堕天使こと桐生奏斗とエキゾチックプリンスこと芳田祐樹だぁあ!!』
「奏斗さぁぁん!!」
「祐樹ぃいい!!」
奏斗さんが出て来ました!それにあれは……ゴーグルをつけている奏斗さん!?素敵です!体育の授業の時に掛けていた普通のサングラスも良かったですが……これはこれで雰囲気があっていいです!……あら?興奮しすぎて鼻血が。
私がポケットからティッシュを取り出している時に奏斗さんたちの声が聞こえて来ました。
『……声がやらせっぽいね』
『ぽいどころか、完全に今のサクラだよな。心が全然こもってなかったし』
「ふふ。奏斗さん達ったら」
「本当のこととはいえ言わない方がいいのだがな」
思わずスピーカーから聞こえて来た声に苦笑してしまいます。え?何でスピーカーなんて物があるのかですか?それはもちろん、男子の荒い息遣いを……では無くて、男子が危険なことをする前に止める為です。そう言う建前で男子には秘密で小型マイクがゼッケンに付けてあるんです。だからこうやってコート上の会話が聞こえるとい『じゃあ棄権しろ。どうせお前らは負けるんだから』『はい?』『聞こえなかったのか?棄権しろと言ったんだよ。お前らみたいなカスじゃ俺には勝てねえからよ』『…………』
「ふ…ふふふふっ!!」
今あの男は奏斗さんをカスと言いましたよね?そうですか、奏斗さんがカスですか……ではそれ以下のアレはもはや物ではないと言うことになりますね。さて、奏斗さんを侮辱したアレをどうしてくれましょうか……そう言えばアレの母親はうちの系列の職員でしたっけ?それならそちらの方にやめていただきましょう。それも辞職では無く再就職も難しい形の失敗をして貰ってから。子供に巻き込まれる母親が少し可哀想ではありますがそんな子供に育てた責任をとってもらわないといけませんからね。……では、早速やっちゃいましょう。
そう思ってポケットからスマホを取り出そうとした時、隣からビシッ!と言うひじょーに嫌な音が聞こえて来ました。
「祐樹をカスと呼んだ罪どう償わせるのがいいだろうか?絞殺?刺殺?ああ、焼死、落下死、中毒死もいいな……いや、一番苦しいのは溺死だったか。ククッ!ちょうどいい川を探さねば」
私の百倍過激なことを考えている秋穂を見て私は一気に冷静になりました。自分より怒ってる人を見ると冷静になるって本当だったんですね。それにしても……無意識なのでしょうがすごい力ですね。秋穂さんの握っている窓の策子がひび割れてそのまま壁にもヒビが入り始めてます。お陰で興奮状態に入っていた周りの女子達が静かになりました。青ざめているとも言いますが。
『……お前が女子どもの人気を汚い手を使って集めたせいで俺たちが偉ぶれないじゃないか!これじゃあ何のためにここに入学したかわからない!俺は本当なら1組に入ってそのまま王として君臨する予定だったのに、お前のせいでクラスの女子をパシリにすることさえできないじゃないか!』
『『そうだそうだ!』』
……やはり男はダメですね。最近奏斗さん以外の男性と合わなかったので忘れていましたが、男というのは私たちを便利な召使ぐらいにしか思っていないんでしたね。それにそれを当たり前だと思っている女性も多すぎです。今、私の周りでは秋穂さん以外特に苛立った様子の方がいませんし。
『そうだ。この試合でお前が負けたら虎白院をよこせよ。お前なんかにあれはもったいないからな!俺が有効活用してやるよ!』
『あ、じゃあ俺は祠堂な』
『じゃあ俺は……1組の気に入ったやつもらうわ』
『は……?』
「は?」
「あ゛?」
私が奏斗さんと何で別れないといけないんですか?いえ、まだ交際を始めていませんし、何ならまだ好きなのかも自分でハッキリしていないので別れるというのは少しおかしいんんですけど……でもやっぱり
『殺す』
『ダメだよ奏斗』
『は?邪魔するつもりか?』
ああ、奏斗さん。私のために怒ってくれているんですね。かっこよすぎです。これ以上私の点数稼いでどうするおつもりですか?もう私は奏斗さんの虜ですよ♪でも私の為に争わないで!(祐樹と)
『違う違う。邪魔なんてするわけないじゃないか。ただあんなのの為に手を汚す必要なんてないよ……試合中に事故で骨を折ることなんてよくあるしね?もしそこが肺だったら気胸で入院……うまくいけば死ぬかもしれないけどさ』
『お前こそ落ち着こう』
『何で止めるんだい?秋穂を物扱いしたんだよ?アレは駆除すべき害虫じゃないか?』
「ふふっ♪祐樹ったら♪」
あら、秋穂さんも乙女になっちゃってますね。それに周りの女子達も奏斗さんと芳田さんにウットリしています。
『でも事故とはいえそんなことしたら何らかの措置は取られると思うぞ?それにそんなことになったら秋穂は悲しむんじゃないか?』
『それは……確かに』
確かにそれで罪に奏斗さん問われたりしたら私も悲しいですね。……もし本当に起きたら権力を全力で振りかざして握り潰しますが。
『だから、サッカーで精神的にボコボコにしよう。な?な?』
『……そうだね。そうしようか。……でもやるなら徹底的だ。奏斗骨の二、三本覚悟してやるよ?』
『お、おう』
そんな!?骨を折る必要なんてないんですよ!ああ、心配です。奏斗さんは危険に対して躊躇がない様な気がするんです。世の男性のお母様方はお子さんを桜堂に入学させる時こんな気持ちだったんでしょうか?
奏斗達みんな気性が激しすぎるよ!もう少し穏便に考えようぜ!




