校外学習が終わった
「おひさ祐樹」
「おはよう。奏斗」
翌日組み手の疲労からすっかり回復した俺はいつも通り学校に来ていた。
「祐樹は昨日楽しかったか?」
「あーうん。……楽しかったかな。奏斗の方は?」
祐樹も微妙な感じか。そして俺は……バスに乗り、師匠に気絶させられ、百人組手をやらされ、家に移送された……楽しい要素ひとつしかねぇじゃねえか‼︎
「楽しくなかった」
「そ、そう……」
おい、確かに陰鬱とした感じだったけどそんな哀れむような目で見ないでくれ。余計に悲しくなる。
「祐樹はどんな事やったんだ?」
「僕はね……」
そう言って祐樹が語ったのは次のような事だった。
1女子だらけのバスには乗れないため一人だけ乗用車に
2着いた後も常に自分の周りを囲むように四人の人がバリケードを構築
3生徒の作品を見て回る
4教授の前で簡単に演奏
5アドバイスをもらう
6帰宅
「………あれだな。校外学習じゃないな」
「学校見学に行った気分だよ」
同士よ。お前も中々に苦労したんだな。俺みたいに直接的に何かあったわけじゃないけど、ただ退屈なだけってのもなかなかに辛いもんだ。特に絵画とか見るの大変だったろうな。俺にはあれの良さが分からん。特にピカソ系。
「まぁ最後のピアノは楽しかったけどね」
はいお前俺の敵けってーい!
「奏斗は何したの?」
「命削ってきた」
「何してきたの!?」
「戦い=命を削る」だから間違ってはないぞ?
そう思いながら俺は乾いた笑いを浮かべたのだった。
△▼△▼△
乾いた笑いを浮かべる奏斗を見て僕の心が痛む。
さっきの「命を削ってきた」という言葉。あれは多分、寿命が縮むほどのストレスがかかったという事。秋穂に電話で聞いた時、何か隠しているような感じだった。多分それが、奏斗にとっての悪い事だったんだ。(〇〇チラッを連発していた事など言えない)
それなのに奏斗は僕に心労をかけないように誤魔化している。いや、もしかしたら弱いところを見せたくないのかも知れない。(言葉たらずなだけ)
話してくれないのは……少し寂しいけれど、僕を気遣ってくれてのことだと思うと少し嬉しい気もする。だから
「今度、焼肉にでも行かない?」
「俺は緑のキノコが食べたい」
「……そんなの食べたらライフが減るよ」
「だよなぁ。俺マリ〇じゃないし」
意外と余裕?な気がするのは気のせいなのかな?
△▼△▼△
「あ、美琴」
「はひゃい!?」
俺達に少し遅れて登校してきた美琴に声をかけたら悲鳴を上げられた。……俺なんかした?
軽く傷つきながらも元々言おうとしていた事を言うためにしっかりと美琴と目を合わせ
「昨日はごめん」
深々と頭を下げた。
「へ?え?何ですか!?」
「ちょっと最後の方の記憶があやふやなんだけど、俺が勝ったって言うことは美琴を攻撃したってことでしょ?しかもあの時多分手加減ができる状態じゃなかったと思うからどっか怪我させちゃったかなって心配でさ」
一応この世界でも男女の身体能力の差は変わっていない。だから万が一俺が全力の攻撃をしていた場合美琴に怪我をさせていた可能性が高いってことなんだ。……クッ!これなら真面目にやろうとせず胸チラかパンチラで決着をつければよかった……ッ!
「い、いえ奏斗さんは攻撃をされませんでしたよ!」
攻撃してないのに勝つとは?……もしかして棄権してくれたのか?それはちょっとモヤッとするんだが。
「あ、棄権したとかじゃなくてですね!私が勝手に自滅したと言いますか、奏斗さんの匂いにやられたと言いますか。……あれはある意味攻撃のような気も?あ、ではなくてですね!とにかく!私は怪我を負うような事は何もされていませんから大丈夫です!」
真ん中のあたりが聞こえなかったけど……まぁ怪我してなかったなら良かった。
「ならよかった」
「はい!すっごくよかったです!」
「……?」
「な、何でもありません!」
そ、そう。……なんか今日美琴が顔を赤くして叫ぶ事が多いな。そしてかわいいな。……それでだ
「なぁ祐樹、獅子は我が子を千尋の谷に落とすというのをどう思う?」
「やりすぎだとは思うけど必要ではあるんじゃないかな?」
「では、可愛い子には旅をさせよは?」
「……ねぇ秋穂。さっきから似たようなことばっかり聞いてくるけど何かあった?」
「い、いや何もないぞ?」
あいつらは俺が真剣に謝ってる裏で何いちゃついてんだ?今から子育ての話か?お早いこって。
そんな事を思っていると次に向井さんが教室に入って来た。
「向井さんおはよ!出版社どうだった?」
「か、奏斗さんおはようございます。し、出版社はいつm、じゃなくてすっごく楽しかったです」
「へー。どんな感じだったの?」
向井さんにはこっちが一方的に苦手意識を持ってたせいであんまり仲良くなれてないからね。会話を広げないと。
「え、えーと。いろんな所を見せて貰いました」
「たとえば何処?週間少女ジャンプとか、トコトココミックの所とか!?」
前世とは主人公が女子だったりとちょっと違うところがあるとはいえ、こっちでも冒険物だったりスポーツ物が多いジャンプは俺も毎週読んでる愛読書なんだよ。だからそこの話が聞けるかも!って思ってかなり興奮した。
「あ、そ、そこではなくて、え、えーと……て、転生先は貞操観念逆転世界!?っていうライトノベルの担当者に会いました」
「へー!確かあれって流行ってるんだよね?やっぱり面白いの?」
もう題名が俺の境遇と一緒だから興味はあったんだけど、なんだかんだでまだ買えてないんだよね。
「た、多分。あ、でもアニメ化するって言ってました」
「じゃあやっぱり面白いんだね。俺も今度読んでみるよ」
「あ、そ、それはやめた方が」
「……もしかして男が読まない方がいい感じ?」
あれかな?ちょっとエッチ要素入ってるとか?俺はこの世界の男みたいに「キモッ!」なんて言わないし、何なら鼻の下伸ばすタイプの人間だよ?
「え、えーとそうじゃなくて、あれはその、女性にとって都合のいい世界を書いているので、そ、その男性には不快じゃないかな?って」
「それなら大丈夫だよ。俺そういうのは気にしないし」
何ならその主人公に親近感抱いてるしね。
そして、俺はその日のうちにネットで3巻までを一気買いした。
久しぶりの向井さん登場!夏休みに出番増えるよ!ちっちゃい保護よく掻き立てる系のヒロインが増えるよ!
ブックマークと★評価をお願いします。もしもらえたらもっと面白くなるかも!?
次話投稿まで2日ほど待ってちょ。懐かしいキャラが出てくるよ




