帰宅
コメディ半分シリアス半分
知っているだろうか?ありとあらゆるスポーツにおいて限界を超えてなお動き続けると、体から無駄な動きが消え、体力が有り余っていた時よりも良い動きをする事があるという事を。そして、今98人目を前にして俺はその境地に到達していた。
「秘技!プリティインp「くらえ!胸チラッ!」きゃ!?」
「隙ありぃ!」
「そ、ん、な……」
「98番ダウン!」
「すまないが負けてくれ!」
「あ、ズボンの紐が」
「へぁ!?」
「隙ありぃ!」
「あお、だった……」
「99番ダウン!」
ふっ!これこそが無駄な動きを消した最適行動なのさ!決して卑怯なんかじゃない。周りからの熱視線の中、師匠からの視線だけ氷点下の気がするけど気にしない。割とまじで限界来てるから。もう、立ってるのも辛いくらい。
「そして100番と行きたいところなんですが……2人ほど限界が来てトイレに行ってしまった(意味深)ため人数がたりません」
つまり、俺の勝ちって事だ!ようやく……ようやく休めr「なので代役として出たい方いませんか?」……何でそうなるんだよぉお!!もう俺の勝ちでいいじゃん!俺頑張ったよ?少しくらいは多めに見てくれてもいいじゃん!
「では私が行こう」
「いえ!わたしが行きます!」
お。秋穂と美琴だ。この2人ならどっちでもいいかな。手加減してくれそうだし。
「すまないがここは譲ってくれ。私は以前から桐生と本気の手合わせをしたいと思っていたんだ」
おい。待て。手加減は?手加減してくれないの!?つーか本気の俺ってお前どこ見ていっってんじゃ!見ろよ今にも倒れそうなくらいふらふらな俺を!
「それならなおさら譲ってください。今の奏斗さんは全力から程遠い状態です。今にこだわる必要なんてないでしょう!」
そーだ!そーだ!手加減してくれる美琴がいいー!
「ふむ……確かにそうだな。だが虎白院。お前は戦えるのか?」
「もちろんです。護身術として柔道習っていましたし、3段まで行きましたから。負けませんよ」
おっと?美琴さんや。そんなに強いのかい?わし、勝てる気がせんのだけど?それと負けてくれないの?
「ならいいだろう。くれぐれも手を抜くなよ」
「ええ。わかっています」
待って。何でそんな熱くなってるの?最初は助けに入るとか言ってくれてたじゃん。俺の何が気に入らなかったんだ!
「ハニートラップは許せんからな」
……俺が完全に悪かったです。
△▼△▼△
「では、最後の100番勝負、始め!」
さて、どうしようか。正直に言って勝てる気がしない。脱水のせいかな?目が霞むのに加えて耳も遠くなってきた。平衡感覚がうまく掴めない。これは……何も出来ないかも。仕方ないからハニートラップもといパンチラいくか。いやここは脇で行こう。とそう思ったその瞬間
「フーー……いざ尋常に」
というどこまでも真剣な美琴の声が聞こえてきた。それ聞いて俺は恥ずかしくなる。いくら限界だからって真剣勝負でハニトラなんて事をしようとしていたことに。だから俺は腋チラ作戦から真剣勝負に切り替えた。
そして俺達は同時に踏み込み
「あれ?」
「ふぐ!?」
力が入らず俺はそのまま倒れ込んだ
美琴に向かって
「ふきゅ〜〜……」
「わっ」
バタン
「……桐生奏斗さんの勝利!」
その言葉を聞いて、やっと休める。そう思いながら俺の意識は薄れていった。胸で美琴の顔を潰しながら。
△▼△▼△
「「「ありがとうございました」」」
そう言って頭を下げバスに乗り込んでいく桜堂の生徒達、そしてその中には女子生徒を背負った女子生徒の姿と、男子生徒を背負ったオカマが混ざっていた。
「秋穂ちゃん手伝ってくれてありがとねぃ」
「いえ、このぐらい全然大丈夫です」
「そう。なら良かったわぁ」
そう言ってまた会話が途切れる。そのまま無言で順番が回ってくるかと秋穂は思ったが、その前に武蔵が数トーン低い声で話し始めた。
「ねぇ、秋穂ちゃんの意中の人って芳田くんの事じゃない?」
「……!何故それを!?」
背中の美琴が落ちてしまうのではないか、と思うぐらい激しく秋穂が動揺する。
「あの事件の時突入部隊の応援として私も参加してたのよ。あの時はしっかり防具付けてたし、フルフェイスのヘルメットもつけてたから、秋穂ちゃんが覚えてないのも無理ないわぁ……私も名前聞くまであなたの事わからなかったのだけどね」
「そうですか……その、あの時はありがとうございます」
「いいのよ。それが仕事なんだし。……それでね、私がこの話をしたのはその芳田くんをうちで鍛えてあげようかって話なのよ」
武蔵からの意外な提案に秋穂はその意図を考え、自分の弟子の友人を気に掛けているのだと納得する。が、だからと言ってそれに賛同できるかは別だ。
「それは……出来るのですか?祐樹は運動神経はいい方ですが、所詮良い方というだけで特出した才能はありませんよ?」
「……難しいかもしれないけど、アマチュア相手だったら圧勝できるくらいには何とかなると思うわ」
「そうですか……では」
「まぁ、今すぐって話じゃないし何なら祠堂流でも全然良いと思うわ」
「は、はぁ……」
では、何故今こんな話を?と秋穂は困惑し生返事を返した。
「私が言いたいのはね、過保護になっちゃうのは分かるけどある程度あの子自身にも力を持たせてあげなさいってことよ」
「………」
「納得できないって顔してるわね……別に今の状況が悪いってわけじゃないわ。何なら正しいとすら思う。だけどね、これから多分……いえ、確実にうちの奏斗と関わる上で女性に対する忌避感は薄れていくわ。そしてそうなった時、あの子は多分自分一人の力で動きたいと思うはずよ。そうなった時あなた反対できない」
「それは……」
確かにその通りだ。祐樹……いや、人は自分で立てるだけの力を持てばその時自分を守る……悪く言えば縛る存在を疎惜しく思い、一人の力で動きたいと思うようになる。そしてその時秋穂は祐樹に反対することはできないだろう。
「だから、どこかのタイミングであの子に自衛の力を持たせておいた方がいいって話なの。別に肉体的強さじゃなくても、社会的地位による強さでも良いわ。……まぁとにかく、この事を頭の片隅にでも留めておいて」
「……はい」
ちょうど、秋穂達の番が来て、武蔵は先に入り座席に奏斗を寝かせて外に出てきた。そしていつも通りのトーンで別れの挨拶をする。
「じゃ、奏斗ちゃんの事よろしくねぃ。バイバーーイ」
そう言って武蔵は去って行った。
「くらえ!胸チラ&パンチラ!!」
↑俺たちがやったら懲役300年ですね。イケメンだけに許される技っす。
ブックマークと★★★★★をお願いします!もし入れてくれたら異性の(胸)パンチラが今日訪れるかも!?(冗談です)
言い忘れてたんですけど百人組手って物凄く危険なのでやっちゃダメですよ?百人組手って極真空手の物なんですけど、過去に救急搬送される方が出てそれからあまりやらなくなった、と聞いていますから。




