模擬戦
「というわけで最後が訓練の体験よ〜」
そう言い放った師匠の後ろには、大人の女性に投げ飛ばされる少女達が見えた。
「最後の体験というのは模擬戦だったか」
「俺もよく姉弟子に投げ飛ばされてたなー」
「……模擬戦。つまり合法的に奏斗さんへのお触りオッケー?」(小声)
それにしても……美少女、美女達が道着がはだけた状態で激しく動き回り、流す汗で色っぽさが生まれている……いいな。すごくいい。
そうやって俺が目の前の光景に鼻の下を伸ばしていると、師匠が大声で彼女達に呼びかける。
「皆んなー。お寝坊さんの奏斗ちゃんを連れてきたわよ〜」
そして、次の瞬間……「バッ」っと全員の目がこちらを向き、ざわついた。
「あ、起きたんだ。良かった〜」
「虎白院さんと祠堂さんはずっと一緒にいたんだ……いいなぁ」
「私も看病したかったけど……寝込みを襲わない自信がなかったんだよね」
「わかる」
「あれが、キャンディ先輩の弟子」
「当代二人目の恐神流男性の使い手」
「やっぱりあの子も……そっちなのかしら」
「それはないでしょ。あんなにかっこいいんだよ?」
「そうそう。あれでオカマだったら人類の損失だよ」
「委員長会いたがってたけど、寝てたせいで会えなかったんだよね」
「私たちへの飛び火が怖い」
うんうん。色々言われてるねぇ。寝込みを襲うって話は、あれだね。俺が経験者になったらいくらでも来ていいし、むしろウェルカムなんだけど今はダメかな。まだ十二だし。あとは、オカマ疑惑は全力否定させて欲しいですな。俺は、可愛いまたは綺麗な女性が好きなんだ!!
と、頭の中でどうでもいい事を考えていると、突然師匠がとんでもない事を言い放った。
「もう、時間的にほとんどの子が終わったでしょ?だから最後に……奏斗と急所攻撃以外なんでもありの100本組み手をやりましょう!」
「は?」
「え?」
「ふぇ?」
「「「……よっしゃぁあああ!!!」」」
△▼△▼△
俺は、何故道着を着て現役のメイドと向き合っているのだろうか。そして、清楚な感じのする彼女は一体何を呟いて居るのだろうか。
「関節技で決める。意識を落とすと決着着いちゃうから関節決めて動けなくして、その後は……ぐへへへ」(拡大音声)
……聞かなきゃ良かった。台無しだよ。さっきまで清楚な感じがして好みかもなぁ……なんて思ってた俺の純粋な心を返してくれよぉお!!
もう、女の人を信じられないかも……なんて思っているととある3人の声が聞こえてきた。
「奏斗さん。どうか無事で。……いえ。祈るだけではダメですね。いざという時は肉壁になってでも守らないと……!」
「大丈夫だ。その時は私が介入する。時間稼ぎくらいならなんとかなるはずだ」
「大丈夫よ〜。どうせ負けたって何かが減るわけじゃないんだし〜。それに負けなければいい話だもの」
ああ……美琴と秋穂は優しさが身に染みる。そして師匠へのヘイトが溜まる。あと師匠。何がとは言わないけど俺の精神と液体Xが減るんだよ!
「それでは、桐生奏斗さんと新人メイド達による、急所攻撃禁止、ノックダウンでも勝敗決定で百本組み手を開始します!……始め!」
周りの人達が……学園の人たちが心配そうに見守る中試合開始のゴングは鳴らされた。……え?メイドの人たちはって?そりゃぁ……目がギラギラしてたよ
△▼△▼△
「はぁ…はぁ…はぁ……」
「くっ……無念……!」
「80人目ダウン!」
あれからどのくらい経ったのかわからない。もう、三日三晩戦ったような気もするし、数分しか経っていないような気もする。体が重い。目が霞む。心臓が悲鳴を上げている。だけど、自分の集中はこれまでにない程に高まっている。今は垂れてくる汗どころか、自分の心臓の音すら煩わしく感じる。
「81番!入れ!」
「は、はい!」
「はぁ…はぁ…はーーーー…スゥゥ…」
次が始まる前にに何とか息を整えようと息を吐いてから吸う。そのついでに髪をかき上げオールバックにし汗も拭く。何やら外野がどよめいた気がするけど、気にしない。今この瞬間の相手の動きに集中する。出来るだけ最小限のエネルギーで仕留めるために……初撃で決める。
「始め!」
「ハッ!」
△▼△▼△
「凄い……」
思わず私はそう呟いて居ました。
次から次へと襲いかかってくるメイド達を文字通りバッタバッタと薙ぎ倒して行くその姿に私は見惚れてしまう。……もしかして
「もしかして、キャンディさんは勝つ事がわかって居たからこの勝負を?」
「んー。確かに勝つとは思ってたけど……正直に言ってここまで余裕があるとは思わなかったわ」
「それはどういう事ですか?」
と、その暗に負けて居たかも知れないという言い方に思わず強い口調で返してしまった。
「ああ、違うのよ。別に奏斗ちゃんで遊んでるんじゃなくて、一度追い詰められる事で一皮剥けて欲しいっていう考えでやったのよ。だから本当に危なくなったら助けに入るつもりだったわ」
「……そうだったんですね」
あまり私は武術のことは分かりませんが、それでもキャンディさんが奏斗さんの事を考えての事だと分かり、私も少し安堵しました。
「……では、恐神さんの想定より桐生が強かったということか?…ですか?」
「いいわよ。敬語使わなくて。……それで強さはね……想定内だったわ」
「……?では何故?」
「それはね…」
とキャンディさんが答えようとした時に、丁度80人目の方が倒れ、奏斗さんが髪をかき上げました……ふぁああ!!い、色気がすごいです。まだ、奏斗さんは12歳の筈なのに、何か香り立つ色気のようなものを纏ってます!あ、ああ!おなかが!おなかがいま見えちゃいました!……あ、鼻が少し熱いです。ティッシュ何処かにないですかね?
「これよ。私は一応分類上は男だから気付かなかったけど、奏斗の偶にはだけて見える腹筋やら、この部屋に充満してる奏斗の汗の匂いやらであの子達のメンタルがやられているのよ」
「なるほど……これみたいにですか」
「そうよ。……何であなたは大丈夫なの?」
「私にはもう心に決めた人がいますから。多少の動揺はあれどあそこまでにはなりませんよ」
「あら、あらあら。何よーそんな男がいるならもっと先に教えてよ〜。もっと話たかったじゃない〜」
「シャァ!」
「81番ダウン!」
か、奏斗さんの雄叫び……いいです。
ちょっとバトル要素入ったけど一応「残酷な表現」ってタグつけてないから、実際のシーンは出来るだけ描かないようにするっす。
というかバトルシーン苦手。




