巨頭会議
東京某所
「ではこれより会議を始める」
「今回は桜堂学園についてのことだ」
「今あそこで起きていることを今一度皆で確認し、対策を講じなければならない」
「しかり」
そう言う男たち、ではなく女たちがいるのは薄暗く完全に密閉された一室。
そこにいる女性たちは四人。全員が40〜60ほどと思われる外見で、切れ者といった雰囲気を纏っていた。
「まず、今までの桜堂学園では本来の目的をしっかり達成できていた。これは問題ないですね?」
三番目に若い女性の発言に皆が頷く。
「だが、それはある一人の生徒によって崩されつつある」
「桐生奏斗ですか……」
「その通り」
一番若い女性に相槌を打ち、そのまま続ける。
「もともと桜堂学園は次代のリーダー。つまり国の舵取りをする者たちを育てる場」
「だからこそ早くに男性に慣れさせて、将来結婚相手の言いなりにならないようにする必要があった。そのために作られたのが今のシステム。ですよね?」
そう二番目に若い女性言うと、一番歳をとった女性が満足そうに頷いた。
「あそこでは、男子と一緒、成績が良くなると男子のレベルも上がる、というように男子を景品化して生徒たちのレベルを上げ、その一方で男子のひどい態度を見続ける事によって、将来男性にのめり込み過ぎて国に混乱をもたらすことがないようにする。という目的のもと今の体制を築いきました。……けれども」
「桐生奏斗は良くも悪くも理想の男性象を体現しすぎていたですか」
その通りです、と最年少に同意する最年長。
「彼のせいで、男性に対する憧れ、執着、期待、を削ぐという目的が達成されず、それどころか彼一人に中1のほとんどが夢中になっており、あの虎白院と青龍院の娘すらも既に夢中になっているとか」
「ですが、本人は完全な素でやっていること。それゆえに対処ができない」
「そうなると強引な手段を使うしか方法はないわけですが」
「……確実に彼は悲しむでしょうね。学校を楽しんでいるようですから」
「「「「……………」」」」
「ま、まだ様子見でいいんじゃないですかね!」
「そ、そうですね!まだ入学して二ヶ月ですしね!」
「右に同じく!」
「私もよ!」
「「「「……………」」」」
「……ではこれで今回の会議を終わりですね。総理お願いします」
そう言われて、一番若い女性が立ち上がった。
「これにて会議を終了とする。わざわざご苦労さまでした委員長方」
「「「お疲れ様でした」」」
そして彼女たちは部屋から出て行ったのだった。
……………この国は大丈夫だろうか?
△▼△▼△
何やら黒スーツに身を包んだ物々しい雰囲気を発する女性たちが行き交う廊下を先ほどの二番目に若い女性が歩いていた。そこに、一人の女性は重要な事なのだろうか、近づき小さな声で耳打ちする。
「先ほど、情報が入って来ました」
「なんだ。また極右が何か企んでいるのか」
「次の校外学習でここ、男性護衛委員会にくる生徒の中に桐生奏斗様の名前が入っていました」
「………それは今誰が知っている」
「他の委員の方々だけです」
「……校外学習の受け入れ担当の上層部にだけ教えておけ。そして秘密裏の準備を進めろ。情報漏洩があったらまずいからな」
「承知しました」
その司令を受けた女性は去っていき、男性護衛委員会委員長、武藤薫は自室の扉を開けて中に入る。そして扉を閉め中に誰もいないことを確認し
「しゃあ!!奏斗様ゲッッツ!!つーか初めてじゃね!?ここ男性護衛委員会に男がくんの!しかもくるのが奏斗様とかもう、神様が日頃のご褒美をくれたとしか思えねぇえ!!」
歓喜の叫びを上げた。
「おっと。私としたことがつい我を失っていたな。こう言う時はあれを見て落ち着かねば」
そういって金庫から取り出したのは数枚の写真。それは
「はぁー。やっぱり奏斗様はいいわー」
奏斗の盗撮写真である。
「……次は動画を取らせるか?いや、動画は証拠が残りやすいから無理か」
先ほどまで、国の舵取りをする人物が男性にのめり込みすぎないように……などと話し合っていたとは到底思えないような顔で奏斗の写真をうっとりと眺めていた。
……………もう、この国はダメかもしれない。
優しいとも言える




