ぎゅう
―――ジリリリリ!!
――カチャ
「.........ねむい」
おれは寝ぼけたまましばらく起き上がった状態でボーとする。
おれこう見えて朝に弱いんだ。だから起きたら十分くらいそのままボーっとする時間を作ってる。
しばらくして目が覚めてくると、制服に着替えて下に降りて行く。
そしてリビングに入って最初に目に飛び込んできたのは、ソファにもたれ掛かりながら天井を睨みつける志帆姉さん。 なんかすっごい疲れてるみたい.........疲れてるのに睨むってすっごいきよー
「あ、おはようございます。ご主人様」
「あ、うん。おはよ......だいじょうぶ?」
「ふふっ......大丈夫です。〇×紛争に連れて行かれた時以上に気を張ってたのに何もなくて、肩透かしを食らっただけですから。特に精神ダメージ受けたりしてませんから」
これは......ダメだなぁ。完全にやられちゃってるよ。睡眠不足と、気の緩みとが重なって無気力になってるみたい。こういう時はたしか......『奏斗。私が疲れ切ってるときはぎゅって抱きしめてね。そうした
ら元気が出るから』って姉さんが言ってたなー。
他人にこれをやるのはためらうけど、小さい頃とかはよく頭撫でられたり膝の上に乗せられたり色々されてたから志帆姉さんなら大丈夫かな。まぁ、大した効果はないと思うけど、病は気からっていうもんねー。
「志帆姉さん」
「......なんでしょう?」
志帆姉さんが不思議そうに見上げてきた。
「ぎゅう」
「ぎゅう.........@%&¥/#¥#@“&!??!??」
年下に抱きしめられて恥ずかしいのはわかるけどあばれないで。あばれたらもっと強く抱きしめないといけないじゃん。ほら......ぎゅううっと
「ん ゙ーん ゙ん ゙ーん ゙ん ゙ん ゙ーー」
そんなペチペチ叩かないでよ。痛くはないけど気持ち的に痛い気がしてきちゃう。頭撫でてあげよ
「ん ゙ーーん ゙ん ゙ーmー、n .........」
動きが止まったや。少しうでをゆるめて志帆ねえさんを見てみると、気持ちよさそうに眠ってた。
うん。ねむれてよかったよ。 さ、ちょうしょくたーべよっ
△▼△
「やってしまった......!」
俺はまだ人が誰もいない教室で頭を抱えていた。
「完全にやらかした!いくら寝ぼけてたとはいえぎゅうはないだろ、ぎゅうは!あの時のオレぇえ!!」
朝の事を今更ながらに悶絶しながら机を連打していると教室の扉が開き、祐樹と祠
堂さんが中に入ってきた。......手が痛い
「荒れてるねぇ。どうしたの?やっぱり寮で何にかあった?」
「祐樹ぃ......聞いてくれるか?」
ニコニコと笑いながら俺の話を待ってくれる。お前は天使だ。
「うん。なんでもきくよ」
「俺は......今日の朝寝ぼけて志帆姉さんに抱きついちゃったんだよ」
「.........ごめん。僕の脳が理解を拒むんだけどなんて言ったの?」
だよな。もし俺が聞く側でもそうなる。
「俺の担当メイドに寝ぼけて抱きついた」
「.........なんでそうなるのさ。それ絶対にやっちゃいけないやつだ
よ」
「俺もわかってたんだよ」と呟く。そう、俺だって抱きつきがダメなことぐらいわかる。前世でも大して親しくない人に抱きつかれたら通報ものだもん。
「というかそのメイドさんは大丈夫なの?死んでない?」
「......大丈夫。一回幸せそうな顔して気絶してたけど、俺が家出る前に気を取り戻したみたいだったから」
よほど俺の力が強かったのかな......いつのまにか締め落としてたよ。(締め落としてない)しかも俺、気絶を睡眠と認識してたからな。オレ、やばい。
「......私はそのメイドさんに同情するよ。確実に女の子として失っちゃいけないものを失っただろうからね」
二人からの視線が痛い。誰か助けてくれないだろうか。
「みなさんおはようございます」
この声は......美琴様!!
「おはようございます。女神よ」
「ふぇっ!?」
「だからやめな!」
いま少しだけ心の声が混じった挨拶をしただけで祐樹に殴られたよ。ひどい
「このぐらい別に別に良くない?」
「ダメなんだよ」
「でも美琴って、美人だし「ひゃい!?」虎白院のご令嬢なんだから言われ慣れてるだろうから、大丈夫だろ?」
「だからそれをやめろって言ってるんだけど?」
俺と祐樹がやり合っていると、そこに胸に手を当てた美琴がフォローを入れてくれる。
「......あ、あの大丈夫ですよ。私が少し驚いてしまっただけで全然桐生様の言動に問題はありませんから」
「ほら!問題なかったってよ。祐樹?」
「いや......でも......大丈夫なのかな?」
「はい。全然大丈夫です」
「了」
さっきは普通に話せてたじゃん......あ、そう。さっきのは独り言で美琴を意識してなかったと。
「(やっぱり虎白院はすごいね。さっきまでセルフ心臓マッサージをしてたのに、フォローを入れる余裕があるなんて)」
ぼそっと、祠堂さんが何か呟いていたけど小さすぎて聞こえなかった。
「祠堂さ「あ!もういる!?」「本当だ!早すぎない!?」「ちょっとあんたら!......すみません。うるさくして」
「あ、うん。全然大丈夫だよ」
仲良し三人娘が教室に入って来てから続々と教室にクラスメイトが入って来て一気に騒がしくなるのだった
お寝ぼけ奏斗くん