料理
いい匂いを嗅ぎながら、なにを作ってくれたのだろうと楽しみにして、扉を開けると、そこには……ちっちゃいお皿に少なめの料理が載っていた。
「……志帆姉さんこれは?」
「フレンチフルコースですが?」
え?なんで「それがなにか?」って顔してるの?フルコースだよ?お高いレストランで頼むやつだよ?フルコースって家で作るものじゃないと思うんだ。
「……というかこれ、この短時間で作れるものじゃないよね。っていうことはあれかな?フルコースのデリバリーとか?」
フルコースのデリバリーってなんだろう
「……実は奏斗様よりも先に家に入って下ごしらえを済ませておいたんです」
いっしゅん黙ったから当たったのかと思ったけど違ったよ。
それにしても俺より先に家に入ってたのね。やけに家に入ってから静かだと思ったけど、俺のワクワクを邪魔しないためだったんだね。……うん。全然気にしてないよ。自分が最初じゃなくて少し落ち込んだりなんかしてないよ。
「……作ってくれてありがとう。大変だったでしょ」
作られた料理のインパクトで忘れてたけどお礼はちゃんとしないと。
「そんな!全然大変じゃなかったですよ。私の作った料理が奏斗様の体を構成すると思うと楽しくてしょうがなかったですから」
お、おう。……今一瞬メンヘラの波動を感じたんだけど気のせいだろうか。
ちょっと前の話と繋がってないけど俺は今すっっごく話題を変えたいからしょうがない。強引に変えよう。
「あー……あ、でも志帆姉さんがこんなに料理上手だったなんて知らなかったよ。すごいんだね」
「そうでもないですよ?桜堂学園の卒業生はみんなこのくらいの腕前を持ってるはずです。淑女の嗜みということで鍛えられますから」
…………オレ氏驚愕。
桜堂出身の母さんが作れる料理ってカレーとかそこら辺の主婦料理が限界なんだけど。だから俺が代わりに作るなんて発想に至ったわけだし。
俺の顔から驚いていることに気づいたのだろう。志帆姉さんが恐る恐る聞いてきた。
「まさか奈々美さんはこういう料理を作らなかったんですか?」
「……うん」
「……ちなみにどんな料理を?」
重いよ!空気がおもいよ!これじゃあ母さんを庇って嘘つくっていう選択肢が取れないよ!
「……大体カレー、焼き魚、生姜焼き、冷凍食品のどれかだったかな」
「……そんなものを食べさせられていたんですね」
やばいって!これやばいって!なんか姉さんから変なオーラ出てるよ!こう、闇の帝王とかが纏ってそうなやつ!
「いや、別に食べさせられてたわけじゃ……」
俺全然母さんの料理に不満なんてなかったよ?なんなら作ってくれるだけでありがたかったんだけど……そんなふうに涙ぐまないで。可哀想なものを見るような目で見ないで!なんか自分がおかしいのかって思っちゃうじゃん!
「そんな手抜きの上に栄養も偏っていそうな料理を食べさせられていたんですね」
「だ、大丈夫だよ?自分で副菜作ったりしてバランスとってたし「奏斗様に刃物を持たせたんですか!?」う、うんそうだけど」
なんでそんな驚いてるの?もしかして俺刃物持たせちゃいけないような危険人物だと思われてるの!?え、すっごい不本意なんですけど。
「男の子に刃物持たせるとかありえません!もし指切っちゃったらどうするんですか!?」
「へ?」
そっち!?こいつ前科持ちだからーとかじゃなくてそっちなの!?それ五歳児に対する心配じゃん!
「そんなに気にする必要ないんじゃ。滅多に怪我なんてしないんだし」
「いいえ。だめなんです。『もし』が起きてしまってからじゃ遅いんです。だからその『もし』をなくすために動かなきゃいけないのに………!!」
そんな、原発事故を予言していながら無視され、それが現実に起きた後の研究者みたいな事言わないで。これそんな大事じゃないから。
「奏斗様は先に食べていてください。私は少し用事ができましたので」
そう言って志帆姉さんは俺が止める間もなく、携帯を引っ掴み2階へ上がって行った。
「……母さん。頑張って。応援してるから」
その後2時間ほど志帆姉さんは一階に降りてこなかった。
あ、あとフレンチフルコース美味しかったです。
オラに元気を分けてくれ!
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