寮という名の
あの後なんとか祐樹の説教を終わらせてもらって、その後志帆姉さんと合流してなんとか寮にたどり着いた。
「俺はさ、寮って言ったらアパートみたいなものだと思ってたんだ」
「私も学生の時は驚きましたよ」
「だよね。俺がおかしいわけじゃないよね」
「はい。まさか寮が住宅街だとは普通思わないでしょう」
そう。寮というのは名ばかりで実際には二階建ての一軒家が立ち並んでいる住宅街だった。
この中の一軒に俺が住むことになるらしいんだけど……やっぱりおかしいよな。12歳に一軒家とかおかしいわ。やっぱり。
それにしても姉さんともう一人のメイドさんが住むところはどこになるんだろう?俺の隣って言ってたから隣の家?
「私と真霞は急遽作られた小屋に住みますので何かあったら呼んでください」
……???
「えっと。それってあれに住むってこと?」
「はい」
はい、じゃねえよ!!なにあれ!?確かに小屋はあるよ。あるけどあれ6畳くらいしかない掘立て小屋じゃん。俺あんなのに住んだら2日で寝込む自信があるよ!?
「志帆姉さん」
「はい?」
ああ。志帆姉さんの目からは、この扱いが当然の事と思ってることが見て取れる。やっぱりあんなところに住ませるわけにはいかない!
「一緒に住もう?」
「……今なんと?」
……?聞き取れなかったかな?
「一緒に住もうって言ったんだよ」
「……ッ!?!!??」
「ほら、あんな掘建小屋じゃあ志帆姉さんが体調崩しちゃうだろうし、多分この家の大きさなら十分部屋の数も足りると思うからさ」
「……ありがとうございます。(ええわかっていましたとも。プロポーズなんかじゃないってわかっていましたとも。ええ、全然浮かれてなんかいませんから)」(小声)
姉さんは下を向いて表情を暗くしている。
……どうしようか。志帆姉さん全然嬉しそうじゃない。もしかしてほったて小屋愛好家だったの?あそこでの不便な生活を楽しみにしてたの?そうだったら悪い事した……いや、やっぱり間違ってないわ。人として自分は快適で、護衛の人がそうじゃないのを許しちゃいけないよな。
「じゃあ早速家に入ろうか」
「……(でもやっぱり少しぐらい期待しても)「志帆姉さん?」ひゃ、ひゃい。なんでひょうか」
「いや、なんでそんなかみかみに……まあいいや。ほら早く家に入ろう」
そう言ってカードキーを翳し中に入った。
「結構立派な作りだな。玄関も広いし制服置き場を作れそうだ」
扉を開けるとそこには四畳ほどありそうな玄関が広がりそこから廊下につながっていた。
新築なのだろうか。家の空気から若干だけど木の匂いがして落ち着く感じがする。試しに壁を叩いてみると音の響き方がおかしい。多分鉄筋で作った上に木を貼り付けているんだろう。中に入ると18畳ほどありそうなリビングが広がっていて、ダイニング、志帆姉さん、キッチンと繋がっていた。……何故そんなところに?
……ああ、キッチンが気になるのか。昔料理にハマったとかいう話を聞いた気がする。
とりあえず志帆姉さんのことは放っておいて、左手にあった襖を開ける。そこには10畳ほどの和室。畳も張り替えられたのだろうか。みずみずしい緑色でいい匂いがする。それに炉の部分が作られているのが見えた。これなら趣味の茶道ができそうだ。俺の趣味を学校が知っていたんだろうか?
そして2階に上がってみると廊下があって部屋が五個もあった。このうちの二つに志帆姉さんたちは住んで貰えばいいな。
一通り家を見て回ったあと家から届けられた荷物の荷解きを開始する。結構ものがあって大変だったけど充分一部屋で収まる量だった。……これ残り二部屋完全に持て余してるな。
残り二部屋は物置かなー。なんて考えながら降りていくとリビングからとてもいい匂いがしてきた。
住宅街が男子寮って......そりゃ維持費がかかりますわ。
抹茶っていいぜ。みんなも飲んでみ?慣れたら美味しいから。
それと今回少なめでごめんさい。