クラスメイト
入ってきたのは濡れ羽の様な艶やかな黒髪ロングをストレートにした和風美人。中学生にしては大きめなものをお持ちで将来が楽しみである。
「御歓談中失礼します。御二方に私どもの入室の許可がいただきたいのですが問題ないでしょうか」
言葉遣いが……!本当にこの子中学生?俺が中学生の時は頭の中ゲームしかないようなクソガキだったよ?
「……………」
「全然大丈夫だよ。というか許可なんてとる必要ないから。俺たちのことなんて無視していいからさ」
固まってしまった祐樹の代わりに俺が答えた。祐樹お前ほんとに無理なんだな。ここまで見事に石になるとは……でも安心しろよ。親友である俺が守ってやるから!
和風美人ちゃんは「ありがとうございます」と言って、他の子達に声をかけて中に入れて行った。
みんな恐る恐る中に入ってくる。中には「聖域に私ごときが」とか言ってる子もいてちょっと面白い。多分二年生がかかる病気なんだろうね。(確実に違う)俺も掛かったからわかるよ。(わかってない)
そんな中全くの自然体でこちらに歩み寄ってくるベリーショートのかっこいい系美人さん。
目線が祐樹に行ってるからそっち目当てだな。自分に全く興味を持ってくれていない事を普通なら悔しがるんだろうけど今回は違う。
女性恐怖症の祐樹に近づけるわけにはいかない。
俺は今、祐樹のサーヴァントだから!
そう思って俺は立ち上がり口を開こうとし、
「友達ができてよかったな。祐樹」
「うん。すっごいいい人なんだよ。秋穂」
あれぇ?知り合い?あっもしかしなくとも件の幼馴染ちゃんかな。うん、だったら安心だ。祐樹の心の安寧は保たれた。俺の心は羞恥で荒まくってるけどな。ハハッ……
「あ、奏斗紹介するね。この子は僕の幼馴染の祠堂 秋穂」
「祐樹の幼馴染の秋穂だ。桐生様?かな。うちの祐樹共々よろしくお願いします」
何故か一部だけ声が大きかったけど……まあ気のせいか
「こちらこそよろしく。祠堂さん。あ、あと様はつけなくていいよ」
同級生に様付けで呼ばれるのはすっごくいやだ。なんかむずむずするんだよね。
そう思っているとさっきの和風美人ちゃんがやってきた。
「私も混ぜていただいてよろしいですか?」
「全然いいよ」
「是」
「私も気にしないぞ」
うん、やっぱり美人さんとはお近づきになりたいよね。俺の好みにドストライクだし。
それと「是」って……祠堂さんがいても一言しか喋れないのか。一瞬ここはSFの世界だったのかと思ったよ祐樹。
「私は虎白院 美琴申します。これからよろしくお願いします。桐生様、芳田様」
その自己紹介に俺だけでなく…………… 俺だけが驚いていた。
虎白院――それは戦後に生まれた五大財閥の一つ。その本家である五大家は政財界に多大な影響力を持つため実質的な仁保无にほんのトップは五人の当主であると言われているぐらいなんだ。そして、目の前の美人の苗字が虎白院っていう事はこの子が本家の子だっていうことになるんだよ。
そんな子が目の前にいたらびっくりするに決まってるじゃん…… 前から知っていない限り。世間知らずでごめんなさい。
「宜」
「宜しくだってさ。私は祠堂秋穂よろしくな」
先に反応していた二人に慌てて俺も自己紹介を返す。
「俺は桐生奏斗って言います。こちらこそ宜しくお願いします」
そう言って俺は握手のために手を出す。やっぱり握手は初対面の時の基本だよな
「…… えっとこれは何でしょうか?」
「なにって握手ですけど…… ?」
あれ!?もしかしてこの世界には握手がない?
「へ?…… さ、さわっていいんですか?」
「いいですよ!」
よかった。握手は存在していたよ。多分戸惑ってたのは握手を求められることがなかったからだろうな。女子同士ので握手することなんてないだろうし。(男子への接触はセクハラだからびっくりしたのだ)
虎白院さんはそっと手を添える。
「 よ、よろしくお願いします…… あ、あとできれば下の名前で呼んでもらえると…その」
「こちらこそお願いします。美琴」
「ひゃ、ひゃい!?」
そういうと美琴は変な声を出してしまった。添えただけの手を握られたのにびっくりしたのかな。それとも呼び捨てにした事にびっくりしたのか?……確かに下の名前でって言われただけで呼び捨てにしていいなんて言われてねぇ。やばい、虎白院のご令嬢の気分を害しちゃった!?こ、こいいう時はどうしたら……
『いいか?取引先の気に触ることをしちまった時はとにかく褒めろ。この世に褒められて嫌がる奴なんて居ねえからな。そうすりゃ大体何とかなるんだ。覚えとけよカナト』
石黒先輩……!俺、今からそれ使います!!
「美琴さんってすっごく美人ですよね。「ふぇっ!?」同い年のはずなのに年上の様な余裕のある大人びた雰囲気を纏っていて魅力的ですし「はぅうう」それだけじゃなくて可愛さも持っていてそれがふと出た瞬間のギャップも魅力的で俺は好きですね「こひゅ」それに、むぐっ!?」
急に祐樹が俺の口を塞いで強制的に座らせてきた。
ふつーに口を塞がれるのは嫌だし、まだご機嫌取りの途中なんだから邪魔しないで欲しい。
「んーんーんー」
タップしても離してくれない……これはタオル形式か……っ!くっ、今俺はタオルを持っていないどうすれば!?
「もが、もがもがもが(なあ、離してよ)」
「ちょっと黙って」
あ、女子がいても対象が男なら喋れるのね
「はっ……虎白院さん大丈夫?ほら、思い出して桐生様は学校に行ってなかったから常識がかけてるんだって事」
何故か固まっていた祠堂さんが同じく固まっている美琴の肩を揺らし、呼びかけていた。
それにしても常識が欠けているって酷くない?いや、事実だからさいいんだけどもうちょっとオブラートに、ねえ?
「……だ、だいじょうぶです。ごしんぱいおかけしました。わ、わたしはすこしやすんできますね」
そう言ってフラフラとおぼつかない足取りで美琴が去って行った。
……さっきのもしかしてNG行動だったのか。
……………常識の勉強しよう。
虎白院は陰陽五行思想の白虎から取ってるので、琥珀の間違えじゃないです。