友よ!
俺が教室で黄昏ているとガララ、と教室の扉が開いて一人の男子が入ってきた。
そいつは茶髪茶目で何故か転職で失敗し人生に絶望したサラリーマンの様な印象を抱かせるイケメン。そしておそらく唯一の常識人であり俺が仲良くできそうな奴!
こういう時は第一印象が重要なんだ。だから俺は今から親しみやすい印象作りで会話をする!手に人、人、人と書いて呑み込む。よし、これで大丈夫!と顔を上げると
「うお!?」
目の前に立っていた。
いや、気配断ちすぎじゃない?全く気づかなかったよ。
「はじm」
――バァン!
えぇ……なんかいきなり台パンされたんだけど。ここって取調べ室だっけ?カツ丼出て来る?
超至近距離でそいつ――おそらく祐樹君は重々しく口を開いた。
「……桐生。ウルトラマ◯という存在を知っているね?」
「…………!?」
「ウルトラ◯ン」それは男子であれば絶対に見るであろう番組。過去に最高視聴率42.8%を叩き出したお化け番組である。
だがそのウルト◯マンはこの世界には存在しない。ウル◯ラマンの放送開始は1966年。つまりその前にこの世界では核戦争が起こっているのだ。そのせいで偉大なる円谷英二監督が死去。その結果ウ◯トラマンはこの世界には存在しないものとなった。
つまりだ、こいつが絶対に知るはずのない「◯ルトラマン」という単語を発しただ理由一つ
「……お前も?」
「うん。その通りだよ……一応確認だけど男女比は1:1?」
「……ああ。そうだよ」
お互いに相手が自分と同じ前世持ちなのを確信して……ヒシッっとどちらからともなく俺たちは抱き合った。
「俺、今まで生きてきて一番感動してるかもしれない!」
「……うん、僕もだよ。人生に絶望しても希望を追い続けた甲斐があったッ!」
そうやってしばらく抱き合っていたんだけど、流石に恥ずかしさがだんだん込み上げてきてどちらからともなくお互いに離れた。
「えーと俺の名前は桐生奏斗。よろしく」
「僕は芳田祐樹っていう。よろしく」
爽やかな風が吹いてきた。王子様系優等生かな?最初とは全く違う印象だよ。人って精神状態でこうも変わるんだね。
「あ、さっきの台パンはごめんね。ちょっと追い詰められててさ」
最初のことを謝ってきた。祐樹お前めっちゃいい奴じゃん。俺すっかり台パン忘れてたよ。
まあでもそんな事は俺たちの昔話トークの前では些細なことで、どんどん話が盛り上がって行った。
祐樹は前世22歳で死んでこっちにきたらしい。でも記憶が戻ったのは小学五年の頃でその時は転生をめちゃくちゃ喜んだんだそうな。けれど、
「僕はねこう見えて前世でもかなりの優良物件だったんだ。だけど何故か告白される事はなかった」
フッ俺はわかるぜ。原因は女子同士で牽制しまくった結果誰も近づけなかったってやつだ。昨日ドラマで見たから間違いない。
「でも自分から行ける様な度胸も持ってなかった」
チキンだな。(お前もな)(←前世彼女なし)
「だからこの世界に転生した時ははしゃいだんだ……だけど僕ははしゃぎ過ぎて隙を作りすぎてしまった」
……身に覚えが
「その結果クラスメイトと先生による監禁事件が起こされたんだ」
くっそ重いじゃん。俺のお気楽引きこもり生活とは全然違うじゃん。
「幼馴染が通報してくれたおかげで運良く未遂で済んだけど、おかげで家族と幼馴染以外の女性に分類される生物が怖いんだ」
おま、生物って……それじゃあ犬とかも無理って事じゃん。今度リハビリとしてカタツムリを見せてあげよう。あれ男と女の境目の生物だし、リハビリにちょうどいいはず。
「大変だったな……それなら何でここに桜堂に?」
「僕以外に転生者がいたらここに入学すると思ってね。やっぱり価値観の合う男友達が欲しかったんだ」
お前の予想は正しかったよ。俺という男が見事に予想通りの行動をしたから。
「俺もここでなら価値観の合う友達ができるんじゃないかって思ったんだ。そしてお前に出会った」
「桐生君もかい!よかったやっぱり君とは馬が合いそうだよ」
「奏斗って呼んくれよ。俺は祐樹と友達になりたいからさ」
「ああ!改めてよろしく奏斗!」
そう言って俺たちは固く握手を交わしたのだった。
△▼△
「それで呪術女っていう漫画が面白くて……」
「それ僕も読んだよ。特に3巻の……」
そのあと俺達は漫画の話で盛り上がっていた。途中まで意外と似た様な漫画があったり、全く知らない様なものがあったりと意外とこの世界の漫画は面白い。でもやっぱり女性向けのものが大半を占めるからちょっと物足りない感はあるけどそれでも十分なくらいには発展していた。
「……それでな」
「そうなんだ……」
と初めての友達と会話を弾ませていた時、ふと視線を感じた。それもたくさん。
……話に夢中になって気づかなかったのか。まだまだ俺も未熟だな。そう思いながら廊下を振り返ると
「おおう」
女子が俺たちを食い入る様に見つめていた。
うんマジでびびった。パンダとかはこんな気分なのかな?ごめんなミャンミャン。これから気を付けるわ。
「えっと……あれ何でかわかる?」
「わかる訳ないじゃん。俺の社会経験は祐樹よりも少ないんだから」
「だよね。小学生の時はこんな事なかったんだけどね」
「じゃあこれは……思春期か」
「入学までの三週間でそんなに変わるかな?」
「チッチッチ。わかってないな子供の三週間は大人の四か月に匹敵するんだよ。それだけの時間があれば行動も変わるでしょ」(どんぶり勘定)
「なるほど。確かにそれなら納得だね」
「だろ?」
なんて会話を交わしていたら、俺たちが自分たちを見ている事で大混乱になっていた女子の誰かが扉を開けて教室に入ってきた。
簡単に図示してみました
キャラは、優等生、僕っ娘、関西弁、チャラ男、明るい男で迷ったんだけど、チャラ男は扱いにくいし、関西弁はいまいちわからんし、僕っ娘の転生者とか意味不明だし、明るい男は奏斗と若干被るしで、優等生に決めたのさ。
祐樹君。ツッコミキャラとして頑張ってくれ!!
そして、そこの貴方!奏斗のハーレムが祐樹のせいで小さくなるとか思ってない?
大丈夫!その心配はない......はず。今のところ。




