しあわせずわり
25時。
布団の上で横になっていると、不意に足元にそいつは現れた。
ふわふわの体毛を身にまとい。
四足歩行にアーモンドのような瞳。
その前脚で物色するかのようにあたりを踏みちらし、座った。
まるで香箱のようだ。
無警戒に寝息をたてており、なぜか私に安心感を与える。
同時に眠気も。
携帯に目を通し、メールのチェックや返信をしていたがどうでもよくなるような。
この足元にいるものをどかせば良いのでは。
そうすれば、まだ続けてられる。
まだたくさん仕事が残っている。
今やらないと明日に影響が。
しかしどうにもどかす気になれない。
いま私がすこしでも動けば、おそらく二度とこの状況には戻れないだろう。
眠気が体全体を支配していく。
いつもは眠るのに睡眠薬や酒が必要だったのに。
今日は─────
朝。いつもどおりの。
ハッと起き、時計を見やる。27時。
マズイ、完全に遅刻だ。
昨日はつい寝てしまった。
今日も仕事があるし、持ち帰ったぶんがまだ……!
元凶ともいうように、足元を私は睨んだ。
しかしそこに思い描いていた姿は無く。
拍子抜けをした。
ため息をつき、ずくに切りかえいやいや仕事の準備をする。
だるい体を起こし……ふと気づく。
いつもより体が軽く、いくばくか楽に感じた。
どんなに寝ても、疲労が取れなかったのに。
……気のせいだろう。
その日はいつもよりかはいくばくか上機嫌に、会社へと向かった。