三章4 誕生日についての話
夜。ちょうど夕食を食べ終え、お茶を飲んでいる時に、レイルが顔を出した。
会食だったので、白いかっちりした上下を着ている。レイルはワインを用意させ、同じテーブルを囲んだ。
「ライラ姫、お時間をとっていただいてありがとうございます」
「構いませんわ。なんだかお疲れね、レイル様」
「狐狸の集まりとの会食だったんですよ。隙あらば娘を嫁にと差し出そうとするので面倒です」
「ですが、王ならば世継ぎは必要でしょう? 若いうちに結婚をと思うのは当然だと思うわ」
「姫まで同じことを言わないでください」
疲労たっぷりに溜息をつき、レイルは口をへの字にして横を向く。すねたようだ。
「まったくもう、子どもみたいな方ね。それで、お話ってなんですの?」
「ああ、そうでした。一週間後が姫の誕生日でしょう? パーティーを開こうと思うんです」
「私の誕生日をよく知ってるわね」
「メアリーから聞きました」
ライラが傍に控えているメアリーを見ると、メアリーはにっこりした。
「メアリーってば、しかたないわね。パーティーなんて必要ありませんわ。この国の皆様はまだ私を恐れているんですから、刺激しないほうがいいでしょう」
「身内の小さなパーティーですよ。知り合いしかおりません」
「そう? それなら構わないけど」
「それで料理についてご相談がありまして。好物を用意したいので、教えていただけませんか」
レイルははりきった様子で、文房具をテーブルにそろえる。
鶏肉を使った料理、ポットパイシチュー、ゆでたブロッコリーのサラダ、ベリータルト、はちみつをたっぷりかけたパンケーキが特に好きだ。卵料理も捨てがたい。
「こんなところかしら」
「ありがとうございます。料理長に伝えておきますね。プレゼントも期待しておいてください」
紙にまとめ終えると、レイルは気がはやるとばかりに席を立つ。
「小広間を使いましょうかね。飾り付けの手配と、それから……」
準備するレイルのほうが楽しそうだ。
「レイル様、あまりがんばらなくてよろしいですわよ。飾り付けや料理より、誰が一緒かが大事ですから」
「ああ、そうですね。ではその日はメアリーやニコラも客としましょうか」
レイルの提案に、メアリーとニコラがうれしそうに微笑む。ライラもうれしくなった。
「それは楽しそう。よろしくお願いしますわ、レイル様」
「はい、お任せください」
レイルは笑みを深くする。
「では、明日は朝が早いので、これで失礼します。お休みなさい、姫」
あいさつをするとレイルは慌ただしく部屋を後にしたのだった。