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三章 レイルの婚約者 1 猫は小悪魔



 乗馬でのあの出来事から、一週間が経った。

 雲一つない快晴で、窓から見える庭に積もった雪が太陽の光を反射していてまぶしい。

 レイルのすすめに従い、ライラは部屋で過ごしていたが、そろそろ飽きた。塔で暮らしていた頃は、読書にふけるか、メアリーとチェスをするくらいだった。

 外を見たせいで、室内でじっとしているのは退屈だ。


「乗馬はできなくても、スノウライトに会いたいわ」


 あの優しい目をした馬を撫でているだけで、ライラは気持ちがほっこりと和む。


「分かります。可愛いですよね、あの子。でも、今はいけませんから、白雪で我慢してください」


 足元を歩いていた猫の白雪を抱っこして、メアリーはライラに渡した。白雪と雪明かり(スノーライト)で、どちらも雪つながりなのだなと気付いた。ライラはレイルとネーミングセンスが似ているのかもしれない。

 扉の傍に控えているニコラはうっとりとつぶやく。


「姫様と猫の組み合わせ、とても可愛らしいですわ。眼福です」

「白雪は誰といても可愛いわよ。あっ」


 ライラはそう言ったが、白雪は(ひざ)から下りて、暖炉の近くにある猫用のベッドのほうに向かった。丸くなるのを見て、昼寝の時間のようだと笑みをこぼす。


「自由気ままでまったく言うことなんて聞かないのに、なんであんなに可愛いのかしら。不思議だわ」

「猫は小悪魔ですからね」


 メアリーはくすっと笑う。以前、レイルも同じことを言っていた。


(だけど、小悪魔とはなんなのかしら。悪魔に大きいや小さいがあるの? いったいどういう意味?)


 今度、図書室で辞書を引いてみようと考えていると、廊下にいる扉番の騎士が誰かのおとないを告げた。対応しようとするニコラを制し、メアリーが廊下に出る。すぐに戻ってきたメアリーは険しい顔をしていた。傍にやって来て、小声で報告する。


「姫様、ランド公爵家のシェーラ様がおいでです。姫様に御用がおありとか」

「どなた?」

「レイル陛下の従妹(いとこ)ですわ。父方の叔母のご息女です。先触れもなく私室に突然いらっしゃるなんて失礼ですから、今日は追い払いましょう」


 メアリーはそう言ったが、ライラは好奇心を刺激された。


「レイル様の従妹? 会ってみたいわ」

「分かりました。では私がお傍に控えて、ニコラは陛下に伝言してもらいましょう」


 渋い顔をしたものの、ライラが目を輝かせているのに気付いて、反対しても無駄だと悟ったのだろう。慎重な意見を口にする。

 一週間前に矢を射られる事件があったのだ。メアリーの心配は当然だ。ライラも周りを刺激したくないので、レイルに伝言するのに否やはない。


「そうしてちょうだい。ニコラ、『あなたの従妹とお茶をしているけれど心配しないで』と伝えてくれる?」

「畏まりました」


 ニコラが退室すると、メアリーがテーブルを整えて客を通す。窓辺の明るい位置に、応接用のテーブルセットがある。椅子を立って客を迎えると、淡いピンク色のドレスに身を包んだ可憐な女性が静々と入ってきた。



 できる時だけ、0:00か12:00に、1Pが1000字程度で予約しています。

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