外へ
もう書いてから気付いたけど、
片目、ミカエルという名の白いドラゴン、あるゲームを聯想させるよね。
群青色。
その色は何もかも吸い込んでしまうような色。
雲に点綴された空、蒼に引き立てられた太陽、
このすべては俺がずっと夢見た光景、ずっと手に入りたい現実。
そして俺は今、その求めた場所にいる。
どんな言葉が今俺の気持ちを写せるのか?
俺たちは、遺跡から出たのか?
空は、こんな様子だったのか?
俺たちは、こんなに美しい世界に生きているのか?
頬から何か冷たい物を感じた。
指先で拭き取ると、透明な滴。
涙。
俺は、泣いたのか?
もう一度、空を見上げる。
水平線までも伸ばす空の蒼さ、
その無限の広さの向こうは、何があるのか?
行きたい、
見てみたい、
この世界を、回ってみたい。
もう、ここに囚われてないから。
だから、
「ミカエル、行こう」
「キュウ?」
翼を広げろ.
「そうね、何処でもいい、遠いところへ」
「キュイ~」
俺は、もうそれを手に入ったから。
**********
風が俺の身体を撫でてながら、流れ過ぎる。
ミカエルの背中に乗っている俺は、下の風景を感応している。
雲の近くまで飛んでいる俺たちだ、ここから見る物がすべて壮麗で絶景だ。
なにも考えてない、考えたくない、今はただこの美しさに溺れたい。
「キュ~ウ~」
「うん? 何だ?」
「ギュ~ウ~」
「なら適当に何処に降りようか」
「キュイ~!」
ミカエルだから、こんな時に限ってお腹が減った。
仕方ない、下は見る限り殆ど森だから、それに飛ぶ時間も結構あったし、降りれる場所を見つかったら休憩に入るとしよう。
そして俺たちは高度を下げ始めた。
適当な場所と言っても選択はあまりないみたい。
まぁ、森の中だから、そういうことだろう。
木のない一番広い場所に着陸して、ミカエルは肉の準備に、俺が焚き火の準備に入った。
散らばってる落ちた枝を集まって、『トーチ』で火をつける。
俺の仕事は簡単だからすぐに終わった。
それで俺は附近のところに何か食える野草がなるのかを探している、
焚き火を作っているとき突然に閃いたことだ、肉は本当に飽きたから。
さてと、何かあるかな?
あ、これ食えるんだ。
まだ旅商人伸してで働いたとき、誰かに教わった気がする。
でもそれも、遠い記憶。
考えるのは止めよう。
今は野草を抜くべきだ。
そんな俺が野草抜きに夢中になったとき、
ミカエルは口になにがしかのの鹿を咥えて戻ってきた。
野草ももう十分だ、俺は焚き火のところに戻る。
ミカエルから死体を受け取って、ナイフで処理を始める。
まず毛皮だ、これが一番時間掛かる。
「それにしても、まさかお前がここまでになるとは、昔の姿が懐かしいな」
「キュ、キュ~ウ~」
99層の魔石、あの手より大きい玉をミカエルにあげた。
そのせいで、今のミカエルは俺より遙かに超えて、成竜になったのだ。
身体だけだけど。
「まぁ、アホさは昔と変わらないな」
「ギュウ!?」
横目でミカエルと話しながら、鹿から皮を剥ける。
そして皮の下を見たら、顔が硬直した。
「え?」
黒い、黒い皮の下も黒色なのだ。
......黒い肉、食えるのか?
でもこれしかない、なんとかなるでしょう。
ミカエルにもう一度取ってもらうにも時間が足りない、
もうすぐ夕刻になるから危険だ。
皮を剥けた後は、内臓を取り出す、次は肉を魔法で分ける。
ナイフで鹿を分けるなんて、誰がやるか。
肉を枝で串刺しにして焼く。
黒い肉はどう見ても慣れない、まぁいいか。
俺は自分で取った野草を口に入れた。
少し苦いけど、噛めば噛むほど甘みが出る。
癖になりそうだ。
「ミカエル」
「キュイ?」
目を肉にしっかりと見つめている。
そんなアホに、俺は命令を下す。
「口を開けろ」
「ギュウ~?」
疑問を持ってるのに、それでも口を開けた馬鹿の口に、野草を入れた。
「ギュウ?」
一度だけ噛んだミカエルは、
「ギュブ!!」
と吐いた。
それを見た俺はまず、魔銃を取り出す衝動を抑え込む。
「てめえ! 何で吐いた!? お前の口がどれだけくさいのか知ってるのか!!」
「ギュ~! ギュキュウ~!!」
「関係あるに決まってるだろう! いつもいつも寝るときお前の口臭を耐えるのは誰だと思うんだよ!!」
「ギュウ!」
「臭いに決まってる! 自分で自分の口臭なんて分かるもんか!」
「ギュイ! ギュウギュ~!」
また抗議してきたミカエルは尻尾で地面を叩いている。
「肉しか食わないから臭いんだよ!」
「ギュ~ブ」
プイ、と頭を逸らしたミカエル。
はぁー、もういい、食を取ろう。
「ほら、肉はもう焼けたぞ」
「キュ~イ~」
黒い肉だから、少し躊躇した俺であったが、ミカエルが楽しそうに食べているのは見て、決意して口に運ぶ。
......美味しい。
予想以外の美味しさに、俺は少しの間喋らずに食べる。
俺たちが黒肉を完食して暫くすると。
「キュ~イ」
「はぁ?」
マナがほしい?
「お前、黒竜の魔石を食べたばかりじゃないか?」
「キュ~~ウ、ギュ、ギュウ~」
それは全部身体の成長に費やしたから、生理的に必要な分は残っていない。
つまり、俺がマナの補充をしなければならない。
しかし残念ながら、ミカエルは身体だけが成竜になった、それはつまり、必要な分も小さいときと違って多い。
あと一つ、大きくなったから、歯も当然大きくなる。
じゃあ、ミカエルはどうやって俺の手を咥えるのか?
上顎と舌で咥える、それで歯と歯の隙間も出来るから、俺のことを傷つけない。
食いしん坊のミカエルが提案したことだ、食に関わる時だけ頭を動くのだ、こいつは。
まぁ、それは別にいいのだ、傷つけることはないし、でもな、におうんだ。
こいつの口臭のせいで、臭いが移る、しかも何十回も洗わないと臭いが取れないほどの臭さだ。
これも、先ほど俺がキレた原因の一つでもある。
ちょっと考えてみよう、ミカエルにマナを吸われて、その上にまだ水を出さないとならないのだ、疲れろというよりしんどいのだ。
しかし、やらないと、諦めて腕を出した。
ミカエルは俺の腕の部分を丸ごと咥え込む。
手首からの部分はどうしてもミカエルの口から出るから、逆側で見たら、きっと竜に食べられた人の手、に見えるでしょう。
「て、手が......」
声?
「うん?」
「ギュウ?」
「ぎ、きゃあ、ぎゃあああああああぁぁ!」
悲鳴が響いた。
ーーーールーティ視点ーーーー
私の名前はルーティ、ヴァーレントム王国の辺境にある小さな村、ヘイムス村で生まれ育った女の子です。
お父さんは村長だから、うちは周りより少し富裕だけど、都市の人たちと比べたら同じく田舎だよねー。
私の上は二人の兄とひとりのお姉ちゃんがいますけど、お姉ちゃんは私より何歳も離れてるから、何年前に隣の村にお嫁いだ。
上の兄さんは村長やりたくないと言って大きな都市に行きましたけど、それから音信不通になりました、だから残った下のお兄さんは村長になるしかない。
お父さんもそのためにお兄さんにいろいろの事を教えた。
私もそろそろ成人の17歳になるけど、お父さんは私に好きにしていいって言ってくれた。
そして私は、冒険者になりたい。
小さいときからずっと外の世界を憧れしたの、外の世界を見てみたい、一生この村で過ごすなんていやなの。
だからね、冒険者になって、いろんな所を回って、いろんな事を経験してみたい!
そのために、私は小さいときから魔法の練習を頑張ったよ。
剣は手に入らないし、稽古の相手もいない。
なら道は一つしかない、魔法だ!
幸い私は魔法の才能があるみたい、周囲のみんなも私が百年に一人の天才だとか称えているから、ちょっとこそばゆいです、しかしこれが私の自慢できるところです。
今日は、私はひとりで森に入った。
お母さんが風邪引いてるから、そのための薬草を探しています。
傷なら私の魔法で癒やせるけど、病気だけは魔法で癒やせない。
お母さんが早く治してくれるように、私が一人で来ました。
この森は魔物とかあまりないから、小さいときはよくほかの子供たちと一緒にここで遊んでいるから、どこに何があるのかもうすっかり頭に入った。
あと少し前に木のない大きい広場があって、いつもそこで魔法を練習する。
あそこも薬草になれる草が一杯はえているから、今はそこに向かっています。
森に入ってから何分も歩いて、広場に近づいたら、見慣れない物があった。
白い姿。
最初の時は何かの見間違いかな?
と思ったけど、近づいたらそうじゃなかった。
しかも大きい、まだ身体の部分しか見てないから、何の生物なのかは分かりません、でも大きい。
あぁあぁ、どうしよう、緊張してきた。
でもわくわくする!
見てみたい、あの白い生き物と会いたい、危険あるかな?
......やはり見てみたい! こっそり近づいてみましょう!
こうして、私は足音を出来るだけ発しないまま、こっそりと、こっそりと、多分頭の位置だと思われるところに移動している。
そしたら、目の前に広がった光景に、私は息を詰めた。
口は少し開けているから窺える無数の歯、どれも大きくて鋭い。
白い頭は巨大で、人を一口で呑み込めるそうで、怖い。
ドラゴン、あの伝説の生き物が、
一生に一度見るべきのあのドラゴンが、今私の前にいる。
普通なら嬉しすぎて心が破裂しそうだけど、
「て、手が......」
口から漏れた人の手。
このドラゴンは、人の手を食べている。
私も、食べられる?
「うん?」
「ギュウ?」
「ぎ、きゃあ、ぎゃあああああああぁぁ!」
もう立ていられない、足に力が入らない。
お父さん、お母さん、
私を産んでくれてありがとう。
今まで養ってくれてありがとう。
こんな不肖の娘ですが、あなたたちの事が大好きです、感謝しています。
私がいなくなったとしても、強く生きてほしい。
私はたった運が悪かっただけだから、あんまり私の死に囚われないように。
もし来世があるなら、次の時も、お父さんとお母さんの子になりたい。
私はとても幸せです、だから、心配しないで。
あとね、お兄さん、いいお嫁が探せるように下で祈るから、頑張って!
私の哀れな最期、みんな見せなくてよかったです。
さあ、ドラゴンさん、逃げないから、せめて痛くないようにしてください。
「おい」
「キュウ?」
目をしっかりと閉じて、その上両手で目を遮る。
自分の最期を目にするなんて、私には出来ません。
「おい」
「キュ、キュウ?」
さあ、来い!
「......ほらミカエル、お前の間抜けな顔のせいで話が出来なくなったじゃないか!」
「ギュウ!? ギュギュ~、ギュウ!!」
あれ?
何が聞こえたような?
人の声?
きっと死神様が私を迎え行きましたよね。
ああ、お父さん、お母さん、さよならです。
ついでにお兄さんも。
「はぁー、仕方ない」
また声が聞こえた。
でも死神様の声は無視する。
ちょっと待て、死神様の声が聞こえると言うことは、私、死んだ?
いつの間に?
本当に痛くない!!
「あ、いたっ!」
私が目を開けようとしたときに、ゲンコツが頭に炸裂した。
あんまりの痛さに、私は手で頭を撫でる。
そしてつい目が開けた。
気付いたら、私の前に一人が立っていた。
なるほど、この人が死神様ですか。
長い艶のある黒髪、左目に髪と同じ色のアイマスクを付けている。
右目は鋭くて、金色をしている。
金色の目は初めて見た、この人は女の子ですか? それとも男の子?
言葉扱いが荒いだけど、声も中性的で判別し辛いです。
でもこんなに長い髪をしているから、女の子でしょう。
そして目が順次に下へ見ると、胸がまっぴらです。
そこだけは振らないように注意しましょう。
後はローブを着ている、その下も黒一色の服を着ている。
えっと、死神にしては、少し貧相ですね。
あ! 死神様でも神様ですから、ちゃんと敬わなきゃ!
「あの、死神様ですよね!」
「はあ?」
「キュイ?」
「え?」
さっきのドラゴンです。
さっきの人の手を食べたドラゴンです。
どうして地獄まで追ってきたんですかー!
もう私の身体を食べたのに、魂くらいは放してくださいよ!
「ほらやはりお前のせいだ、ミカエル! こいつが怯えているのはお前の間抜けな顔のせいだ」
「ギュウウ! ギュ~ウ~~~!」
あれ?
死神様は誰と話しているのですか?
またつい閉じた目をゆっくりと、開けてみたら、
そこにドラゴンが人と話している光景があった。
え? どうして?
でも、緊張感は不思議なくらいに、もう感じなくなった。
「あ、あのー」
取りあえず話を掛けてみる。
何もやらないでは何も始まらない、お父さんの口癖です。
「あの、あなたは死神ですよね?」
「......何でそう思う?」
「だって私、もう死んでしまったよね?」
「そか」
やはり、私は......
「痛い!!」
またゲンコツが!
「痛いのか?」
「遺体に決まってるでしょう!」
「ならいい、痛いのは生きている証拠だ。 お前は、また生きている」
「え?」
痛いのは、生きている証拠?
私は、また生きている?
「え、う、うそ」
私は、またお父さんとお母さん途会えるんですね、
まだ、私の人生を続けるんですね。
良かった。
また、生きていられるんですね。
手を胸に置いて、ぎゅっと抱きしめる。
心の鼓動がまだ感じられる、
私がまた生きている証拠。
「ぅ、私はまた、また生きて、いるのよね」
「ああ」
「キュイ~!」
「よ、よかっ、た、ぅ、うわ、わあああぁぁぁ、ぅわあああぁぁぁぁ~」
**********
気まずい!!!!
どうして泣いたのよー! 私は!
もう! 話しかけるのが気まずくなったじゃない!
もう私の馬鹿ー。
私は今、黒髪の女の子と、白いドラゴンと、焚き火の周りに座っています
「あの、こ、攻撃してこないよね?」
「ミカエルは人を攻撃しない、心配するな」
「ミカエル?」
「こいつの名前だ」
「キュイ!」
「そ、そうですか」
話が尽きちゃった。
初めて会った人ですよ!
しかも私が大泣きした後ですよ!
話題が尽きない方がおかしいよ!
それに隣は超大きいドラゴンまでいるのよ!
名前すらあるなんて、まるでペットみたい。
名前、あ。
「あ、あの、私はルーティと言います、あなたは?」
「......バルト」
「え? け、結構男前な名前ですよねー」
バルトって、ちっとも女の子らしくない!
それに胸も......考えちゃダメ!
きっとそれを劣等感を抱いているから、気をつけなきゃ!
「あの、バルトさんとミカエルさんはどんな関係ですか?」
「バルトでいい、後こいつはお前だけでいいから」
「ギュウ!? ギュギュウ!!」
ミカエル、さん? くん? どっちも変だね。
ミカエルは尻尾で地面を叩いて抗議しているみたい。
もしかして人の話を分かるのかな?
そうでしたら本当に賢いのよね。
「こいつとの関係か......」
バルト、さん? ちゃん?
やはりバルトさんで呼びましょう。
なんか近寄り難い雰囲気がする。
だからバルトさん。
そしてそのバルトさんはミカエルと見つめ合っている。
目で交流しているかしら?
「何だと思う?」
「キュ~ウ?」
頭を傾けているミカエル、ちょっと可愛いかも。
しかし二人はどんな関係かな?
気になる。
飼い主とペット?
友達?
それとも恋人?
種族の線を越える来いなんて、燃えるよね!
あ、家族もありかもしれない。
「な、一つ聞いていい?」
「あ、はい、何ですか?」
「今、もう何年だ?」
「えーっと」
「今は王国歴何年だ?」
「確か、王国歴326年です」
「......3年、か」
バルトさんの最後の言葉がとても小さくて、囁いているような弱々しい声でした。
私はバルトさんが何言ったのかは分かりません。
でも、バルトさんの顔はとても重くて、踏み込んではいけないと、このときの私はそう思った。
だから話題を逸らしましょう。
「あの、二人はどうしてこんなところにいるのですか?」
「休憩だ」
「いや、そうじゃなくて、私は聞きたいのは、二人は何のためにここに来たのですか?」
「ない」
「え?」
「目的なんかないさ、ぷらぷらしてただけだ」
「え、えっと、じゃあ良かったら、私の村に来ない?」
私のうちなら、確か客室があったはず、だから連れて帰っても多分大丈夫かと。
「......」
バルトさんは目を閉じて、ながーい時間を経ってから、目を開けた。
「いいのか?」
「私が言い出したのですから、もちろん問題ありません! でも最終決定を下すのは私のお父さんですから、それに、ミカエルはどうしますか? 私の村は貧窮じゃないけど、さすがにドラゴンの食料は無理」
「それなら大丈夫だ。 ミカエル、お腹が減ったら適当に狩りに行けぇ」
「キュウ?」
「いいか、俺は暫く村に暮らす。 毎日ここに来るから、呼んだらちょんと来るんだぞ」
「キュ~イ」
「分かったな」
「キュ~イ」
「絶対だぞ!」
「ギュ~イ!」
何ですか?
まるで子を心配する親じゃない。
でもミカエルが一人で本当にいいかしら?
取りあえず、私はバルトさんを連れて村に帰ろうとした。
「そう言えばお前、なんでここに来たのか?」
「あ!」
薬草を探すのを忘れた!
このあと、バルトさんも薬草を探すのを手伝ってくれました。
寄り難い人なのに、いい人ですね、バルトさんは。
**********
バルトさんをうちに連れて戻ったら、お父さんが二言で了承してくれた。
さすがお父さん、分かってくれる。
やはり女の子一人で野宿とかは危険過ぎるよね。
そして私はバルトさんを二階にある客室に連れてきました。
「ここが客室だよ、バルトさんは自由に使っていいから」
「ありがとう」
「では、私は下にいますから、何かあったら遠慮なく呼んできてください」
「ああ」
私はバルトさんを後にして、一階にある調理場に来た。
お母さんの様子はもうだいぶ良くなったから、後は薬を飲めば完治出来る。
今はその薬を作る。
まずは火を起こす、そのために外から薪を持ってくる。
次は鍋に水を入れて沸騰させる。
その間は薬草をすり鉢に入れて細かく粉にする。
これは体力を一杯費やすけど、お母さんのためだから、頑張ります。
後は沸騰した水に入れて、ゆっくり茹でる。
水が半分ほどになったら、砂糖を入れます。
砂糖は高いけど、お母さんのためなら、それに薬も飲みやすくなる。
これで薬は完成した、後は冷やすのを待つだけ。
完成した薬をお母さんのところに持っていて、お母さんに飲ませる。
「ありがとう、ルーティ」
「ううん、それより早く治してね」
「ええ、せっかくルーティが薬を作ってくれたから。きっとすぐ治られるね。」
「うん!」
薬を飲んだお母さんに休んで貰い、私は次の計画を実行しようと決めた。
まずはうちの風呂場に入り、浴槽に湯を張る。
薪を隣に備えて、湯をちょっと高い温度に加熱する。
こうしていれば、後出来たときは丁度した熱さになる。
手で湯に入れて温度を確認してから、二階の客室に来ました。
「バルトさん、もう寝ちゃった?」
「いや、まだ起きている」
「良かった、さあ、お風呂に入りましょう!」
「風呂?」
「ええ、湯はもう張っていますから、入りましょう」
「そ、そう、分かった」
あれ、バルトさんの顔がちょっと硬いみたい、気のせいかしら?
でも良かったです、これで私の計画は成功した!
ズバリ、裸の付き合いです!
せっかくバルトさんと知り合ったのですから、もっと仲良くなりたいです。
ならばこれが一番いいです!
それに、バルトさんの髪は綺麗で艶があるのに、手入れが全くしていないなんて、勿体ないです。
そういうわけで、私はバルトさんと風呂場に来ました。
「どうしたの? バルトさん」
「いや、俺が風呂に入るんだよね」
「そうですよ」
変な質問、バルトさんも風呂に入るに決まってるじゃない。
「なら何でお前はまたここにいるんだ」
「あれ? 一緒にはいるじゃないの?」
「お前はそれでいいのか?」
「何言ってるのですか? さあ、入りましょう」
変なバルトさん。
そんなバルトさんを放っておいて、私は服を抜き始めた。
「うっ」
「バルトさん? 服を抜かないの?」
「いや、抜くよ」
どうしたの? 顔がちょっと赤い。
あ、もしかして他人と風呂に入るのが恥ずかしがっているのか?
意外に可愛いところがあったよね。
どうやら今回の計画は大成功する!
「そうだ、目を閉じれば......チッ」
バルトさんは何がつぶやいていながら、服を抜いた。
私はそんなバルトさんを見て......
股間のそれは......
え?
............
「きゃあぁああああああああああああああ!!!」
ーーーー主人公視点ーーーー
風呂場から、頬で紅葉を連れて部屋に戻った。
何でこうなるんだ?
チッ。
ルーティが部屋に風呂を誘ってるときは俺だけ入ると思ったから、ついて行ったけど、風呂場に入ったのにルーティは全く出る気がない。
そう聞いたら、ルーティが一緒に風呂に入るって言い出した。
もしかしてルーティにとってこれは普通かもしれない。
郷に入っては郷に従う。
それに俺はもう3年も世から離れている、風俗が変わったとしても何もおかしくない。
だから俺も決意して服を抜いた。
それなのにビンタを食らった。
何故だ?
トントン。
「あのー」
ルーティだ。
彼女は俺のいる部屋のドアをノックした。
「入れ」
「えっと、その」
うずうずしていたルーティは、いきなり俺に頭を下げた。
「ごめんなさい!!」
「まず説明してくれないか、何故俺はビンタされたのかを」
「えっと、そのー、バルトさんは、男ですよね?」
「はあ? なんだその馬鹿な質問は?」
「ごめん! 女の子だと間違えた!」
俺が女だと思ったのか......
「俺のどこが女に見えるのか?」
「えっと、髪?」
髪?
ああ、そう言えば俺の髪は長いな。
邪魔にならないから放って置いた。
前髪は時々目を刺さるから、たまりナイフで切る。
「それ意外は?」
「......ありません」
「そうか、つまりお前は俺が女だと思ったから、風呂を誘ったのか」
「えーっと、はい、そうです」
「はぁー、もういい、気にしてないから、帰れ」
「お、怒った?」
「怒ってない。 疲れただけだ」
「あ、分かりました、ごゆっくり休んでください」
ルーティはそう言って帰った。
俺は彼女がいなくなった後、ドアを閉める。
ベッドに身体を任せだ。
ベッドは柔らかいとは言えない、でも堅い床と比べたら十分気持ちいいのだ
前にベッドで眠ったのは何時?
覚えてない。
ベッドはここまで気持ちいいとは、
しかし、慣れない。
まあ、すぐ慣れるだろう、それより、
もう3年か。
俺が捨てられたのは王国歴323年だ。
そして今は王国歴326年、3年も経ったのか。
いや、あの入り口で死んだ人たちと比べたら、3年だけで出たのだ、むしろ幸運だ。
ミカエルがいるから、俺がここまで来たのだろう。
俺一人だけなら、もう疾うの昔で死んだのだ。
俺が今でも見えるのも、あいつのお陰だ。
あいつの身体は成竜になったから、ここら辺であいつを勝てる魔物はないだろう。
でも心がまだ幼い、たった3歳だ、まだ子供とも呼べるのだ。
何か変なものを食っていないならいいけど。
あいつを一人にするのは不本意だが、俺は世離れしすぎだ、今の情報が欲しい。
そのために、まずこの村に来ると決めた。
幸い案内人までついていたのだから、迷わないし、情報の収集も楽で出来る。
情報が手に入ったら、これからのことを考えよう。
どこに行くのか、どこへ向かうのかを、そのときから決まっても遅くない。
俺たちには時間がある、ゆっくりしていればいいのだ。
それにしても、俺は本当にあの遺跡から出たのか?
ずっと心の何処かはそんな疑問を持っている。
俺は身体はまだ、あそこに残っている、今このすべては、たった俺の夢に過ぎない。
もう何度もそう考えた。
これは、夢なのか?
分からない。
でも、もしこれが夢だとしたら、これを現実にすればいいのだ。
俺は諦めない、止められない、そう決めたから。
もう寝よう。
義眼は閉じられないから、
より睡眠が重要になったんだ。
例え見えるでも、何も考えないになれば寝れる。
出来なきゃ身体が持たない。
だから、もう何も考えない......
何時間が過ぎたのか?
意識がまだはっきりとしている。
眠れない。
これは義眼のせいじゃない、ただ俺が眠れないだけだ。
慣れないベッドを使ったせいか?
ならベッドから起きて、床で横になる。
これで眠るはずだ......
イライラする。
未だに精神がはっきりしている自分に、イライラする。
眠れなきゃならないのに、眠れない、眠ることが出来ない。
何でだ、
一体どこが変なのだ?
俺の心は、どこが変だと訴えている。
でもそれは何故なのかは、言葉に出来ない。
......ミカエルが傍にいないから?
それがどうした?
まさか俺が寂しがっていると言いたいのか?
あいつの存在を感じなくなっただけで、
俺が眠れないのか?
口臭がなくなったのに?
あいつのいびきがなくなったのに?
それなのに、俺は眠れない?
......
もう一度起きて、今度はベッドの横に座り、背中を預ける。
明日は、まず村長から話を聞く。
この世界はどうなったのか、全然知らないから。
その後はミカエルを探そう。
本当に呼んだら来てくれるのかな?
あいつは馬鹿だから、何かに巻き込まれないように、大人しくしてほしい。
あとは、そうだな、狩りに行って、獲物を村の人と交換しよう。
いろんなものがほしいから、少しずつ備えていく。
何日も掛かるかもしれない、それが終わったら、
この村から出よう。