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魔法少女ヒカリ  作者: シュガーウォーク
大敗
9/21

1パート

「前回イカ型の鬼を撃破する逆転の鍵となったスタングレネードにおいて有効だったポイントは光ではなく音によって生まれた振動でした。」


「物体には必ず固有振動数がある。その固有振動数と一致すればその物体を大きく振動させることができる。スタングレネードによって生まれた振動と、鬼の外骨格の固有振動数が一致したんだ。しかも外骨格で覆われているため割れたら相当不利になるのだろう。慌てたのも合点がいく。」


今度は桜と暁美が両方目を点にしていたので補足された。



「要するにスタングレネードの振動が効いたってこと。」


「あーそういうことですか。」


「その事から、弘樹さん達科捜研と共同で作られたのがこれです。」


警官は発射口が2つあるライフルを取り出した。


「上の発射口から、敵の外骨格部分に打ち込み遠隔操作で振動させます。外骨格が不安定になったところで下の発射口から強化弾を撃ち込みます。殺傷能力は不明ですが、多少は前よりも効果があると思います。」


「よし、ならば次の戦いに期待だな。」



その頃、日中にも関わらず真っ暗な森の中では闇の妖気が渦巻いていた。黒い服を着た般若が鬼と話していた。



「そろそろ、あなたの出番だね。」


「えぇ、魔法少女ヒカリを必ず倒し、首を持って参ります。」


「ううん。いいよ、命まで奪わなくても。むしろ生きたまま魔法力を吸い取り、変身できなくしてあげて。」



「そのようにしていいのですか?」


「魔法少女ヒカリに変身出来なくなって目の前の世界が変わってしまうのに何もできない無力感、絶望を味わってもらわなきゃ。」


「わかりました。」


「いい子ね。それと、最後の仕上げ。」



般若は、手のひらの上にカラスの羽をのせ息を吹いた。カラスの羽は鬼の体内に入った。


「あなたにはクラゲの能力をあげたから。また強くしてあげた。ここまで強くなるともう別の鬼になっちゃったね。あなたの名前は、そうだね。百鬼。」


「ありがとうございます。では行ってまいります。」


「行ってらっしゃい。」



都会の中心部に妖気の渦が生まれそこから百鬼は姿を現した。



「都内中心部に新たな鬼が出現。警戒してください。」


暁美は新たな鬼の所に桜に送ってもらった。


「ジーチェ・シーフェン。」



魔法少女ヒカリに変身して百鬼に接近。胸部に飛び蹴りを入れた。しかし、なんのダメージも受けている様子はない。様々な足技も効いていない。


「効いてないのか。」


胸部めがけてパンチをいれようとしたがつかまれ、投げ飛ばされた。ビルの壁に突っ込み、めり込んだ。


「なんて力だ。ジーチェ・トンモン。」


緑の魔法少女ヒカリ山の形態に変身した。


「カーモ・ピアレイ。」


レイピアで切断しようとしたがなんとレイピアをつかまれ奪われてしまった。レイピアは放り捨てられた。


「ジーチェ・ターウェ。」


青の魔法少女ヒカリ、水の形態に変身した。


「カーモ・ロアー。」


弓矢を接触させたまま打った。なんとそれも効かなかった。


「なんだその程度か。」


百鬼はいよいよ攻撃を始めた。まるで魔法少女ヒカリの攻撃方法を真似するかのように回転蹴りなど足技を重視した攻撃方法をとった。後方に吹っ飛ばされた魔法少女ヒカリめがけて百鬼は飛び上がり飛び蹴りをはなってきた。魔法少女ヒカリは、ステッキを呼び出し、必殺技呪文を唱えた。


飛び蹴りとステッキがぶつかりあった。激しく発光し、魔法少女ヒカリが吹っ飛ばされた。


「全部の必殺技が効かない。なんてやつだ。」


「仕上げだ。」



百鬼はクラゲの足のような細い足を魔法少女ヒカリの首に巻き付けた。


「死なない程度にな。」


そこから高圧電流が流れた。魔法少女ヒカリの悲鳴がこだました。遠くに離れ、ライフルに弾を込めている桜にまで聞こえた。



「暁美!逃げて!」



完全に戦意を喪失した魔法少女ヒカリから、百鬼は魔法力を吸い取り始めた。ピンクの光が百鬼へと取り込まれていった。


「暁美ちゃん、暁美ちゃん!全ての魔法力を吸い取られたら変身出来なくなる!暁美ちゃん!」


「うるさいな黒猫。」


ミントは百鬼が発生させた妖気からの落雷を食らって気絶した。そして、助けるべく駆けつけた蝶は体当たりをしようと試みたが無駄だった。百鬼はまったくびくともしないどころか地面に置いてあった魔法少女ヒカリのレイピアをもち、投げつけ蝶の頭部を串刺しにした。



そしてついに全ての魔法力を吸い取られ尽くし、魔法少女ヒカリの変身が解けた。



暁美の姿に戻った魔法少女ヒカリはそのまま横たわり、動かなかった。腕のブレスレットは完全に光を失い真っ黒になっていた。


「暁美!暁美ーっ!」



桜の叫びが虚しく響いた。


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