2パート
「途中で恵さんのとこによっていこう。何かわかるかもしれないし。」
桜の提案で2人は恵のところによった。珍しく恵はとても怒っていた。桜が話しかけた。
「なんであんな乱暴働いたのかな。父さんに似たのかな!」
「恵さん。どうしたんです?」
「雄介のヤツ喧嘩したの。親子で料理作ろうって言ったのに雄介ったら卵を取られたって言ってものすごく怒ってさ。相手のこの頭を引っぱたいたの。いつからあんなに乱暴になったのかわからない。相手の親御さんいい人で笑って許してくれたからいいものの。怪我でもさせたらってほんと。今度やったら二度とおもちゃ買わないからねって言ってやったわ。たまにしか会えないのに。夜ご飯作ってあげられない時もあるのにたまにあって嫌な気持ちになるとか本当に嫌だわ。」
「雄介くんは?会ってもいいですか?」
「上の階に預けてる。ひとしきり泣いたあとだから元気ないかもよ。」
「わかりました。」
雄介は保育室の隅っこで座っていた。
「雄介くん。久しぶりだね。」
「桜お姉さん。」
「お母さんに怒られたのか。」
「うん。言い訳は聞きませんって。何も聞いてもらえなかった。」
「じゃあ私が聞く。」
「僕ね、一人で目玉焼き焼けるようになったんだ。お母さんの前で作って食べてもらいたかったのに。たまにしか会えないのに。」
桜の後ろで黙って聞いていた暁美が優しく聞いた。
「その事お母さんは?知ってるの?」
「しらない。驚かせようとしたの。」
桜が思いついたように言った。
「私と一緒にお母さんに目玉焼き作ってあげよっか?手伝うよ。」
「いいの?」
桜は少し面倒を見ると言って恵からアパートの鍵を借りた。
恵、暁美と雄介の3人は部屋で目玉焼きを手伝った。
「公務中にあたしら何やってんですかね。」
「この人達も鬼のせいで会う回数が減った事を考えれば被害者の心に寄り添う。立派な公務だよ。」
「なるほど。」
出来上がった目玉焼きは火加減も下手くそで水を入れすぎたのかすこし白っぽかった。桜が恵のところに持っていった。
「この目玉焼きは?」
「雄介くんが作ったんです。あの子は恵さんが帰らない日には目玉焼き、練習してたんです。親子の料理の時に見てもらいたくてあんな事を。」
雄介のぐにゃぐにゃな手紙がついていて下手くそな絵があった。「めだまやき、ママのためにつくった。いつもこわいけどありがとう」恵は優しい笑顔で目玉焼きを頬張った。そうか。雄介、勘違いしててごめん。お母さんのためだったのか。叩いたのは悪かったけど理由を聞かなかったのは私のまちがいであった。
恵は暁美の後ろから覗いていた雄介に言った。
「雄介。目玉焼き、ありがとう。お母さん話聞きもしないで、ごめん。今日早く帰るから。ハンバーグにでもするか。」
「やったぁ!」
雄介は暁美の後ろから飛び出し、恵に飛び付いた。
「ほんと、素敵な親子だね。」
「そうですねぇ。」
病院から出てきた桜と暁美はそんな話をしていた。そんな時に無線が入った。
「ヒョウ型の鬼がそちらへ逃走しました。非常に動きが早いです!気をつけて。」
「桜さん、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
「ジーチェ・シーフェン。」
魔法少女ヒカリに変身した暁美はすぐさまミントをつかんだ。
「な、なに。僕はまだ何も。」
「いくつか呪文を教えなさーい。」
「わかったわかった。離して。掴まれてると背中がかけない。」
ミントを捕まえていくつか呪文を聞き出した魔法少女ヒカリは蝶の召喚呪文を唱えた。
「カーモ・フーラバ。」
巨大な蝶が飛んできて背中に魔法少女ヒカリを乗せた。更に水の形態への変身呪文を唱えた。
「ジーチェ・ターウェ。」
水の形態に変身した。白かった部分が一部青くなった。
「カーモ・ロアー。」
ブレスレットから弓矢が飛び出し、魔法少女ヒカリはそれをつかんだ。蝶に乗りながら弓矢を構え、敵を探していた。
「このあたりにいるはず。ミントもさがして。」
肩の上で背中をかいていたミントは返事をして一緒に探し始めた。
「いた!あそこ!」
ミントが指す先には道路を猛烈なスピードで走る鬼がいた。つがえていた指を離し、矢を放った。矢はヒョウ型の鬼に命中、爆破した。
変身を解いて桜のところに戻ると桜は本部へ戻るため、一緒に車に乗り込んだ。
「何だか恵さん親子をみてるとさ、本当は犯罪なんかなければいいのにっていつも思うよ。喧嘩するにしても謝れば仲直りできる、ハンバーグで幸せになれるっていいじゃない。」
「そうですね。私たち警察はお仕事がなくて困るのが本当は理想ですよね。」
「いつか、来て欲しいね。警察や自衛隊とかが全く要らなくなる日が。」