2パート
「桜さん、そんなかわいい子を邪険にするもんじゃないよ。あながち間違ってるともいいきれないし。」
「ったくかわいい女の子にはどうしてみんなこうなのよ。」
「いずれにせよ勾玉を鬼が狙った事は確かですから。」
しばらく調査をした結果特に手がかりは見つからなかった。
「その石はあなたが祠に戻しておいて。猫ばばはだめ。それと鬼の事件はあなたに関係ない。首を突っ込むな。」
「私、鬼と戦ってやっつけます!」
「はいはい。できもしないことを言わない。それじゃまたね。」
車の窓を閉めた。桜の中で暁美の第一印象は最悪だった。なんだあいつは。へらへらしてるし言ってることもとんちんかんなのにかわいいからかあんまり怒られない。私の一番嫌いな人種だ。桜は怒りながらクルマを走らせた。
すると無線に通信が入った。
「高層ビルの屋上付近に巨大なクモの巣のようなものが発見。近くの方は急行してください。」
ナビゲーションを見て桜が一番近かった。
「桜です。私が行きます。」
本当だ。まるでクモの巣だ。早速ビルの中に入り高い階までやってきた。だれかいるのだろうか。
するといきなり赤い手が桜の胸ぐらを掴んで放り投げた。背中を打った桜は投げた方を見た。そこにいたのは鬼だ。しかも、クモの巣やクモのような装飾がしてあった。口から糸をはき、桜をからめとろうとした。
桜は拳銃を撃ちまくったがなんと全く効かない。なんて相手だ。
「消えてなくなれ。」
クモ型の鬼はビルの中のコードを引きちぎった。火花はカーテンに燃え移った。あたりは火の海だ。
応援を呼ばねば。桜が走って逃げようとした瞬間、クモ型の鬼は口から糸をだし右足に巻き付けた。転んで足を激しくひねった。火の手は目の前に迫っているが動けない。かなりやばい。
すると近くの扉から暁美が飛び出して駆けつけた。
「桜さん、足が。」
ナイフを出して糸を切った暁美にクモ型の鬼が飛び掛ろうとした。
「あなた、関係ないって言ったでしょ。」
「私、やっつけます。」
「馬鹿な事いわないの!」
ピンク色の石を腕にあてた瞬間、ブレスレットになった。ブレスレットが激しく発光した。
「我に魔法の力を。ジーチェ・シーフェン!」
呪文を認識したかのようにピンク色に発光した。
カーテンの火は床やあちこちに燃え広がっていた。暁美は生身のままクモ型の鬼に飛びかかり蹴りを入れた。蹴りやパンチを入れる度に足、腕が変化し全身を覆い、顔をマスクがおおった。
最後の一発をくらいクモ型の鬼は後方に吹っ飛ばされた。桜は見を見張った。
闇夜の中炎に包まれながら立っていた。全身をつつむ白いボディーに入るピンクのラインが女の子らしいが、闇夜に映るその姿は神々しかった。ブレスレットから羽の生えた小さな黒猫がとびだした。黒猫は変身した暁美を見て行った。
「おおー、またヒカリか。僕はミント。よろしくね。」
「よろしく!」
クモ型の鬼が立ち上がった。
「なっ・・・・・貴様、魔法少女だったのか。シャーマンの血を継ぐ者はまだ途絶えていなかったんだな。」
「あら!私、魔法少女なんだ。」
「僕たちの言い方からすると少し違う。君が変身したその姿は魔法少女ヒカリ。」
「おっけーおぼえた。私、魔法少女ヒカリ!」
闇夜の中、照らされながら光るその姿は魔法少女というよりも希望そのもののようだと桜は内心思った。背後からヘリコプターのローターの音ともにライトの光が魔法少女ヒカリを照らした。
「あれは新手の鬼か?攻撃準備!」
桜が無線に呼びかけた。
「白いタイプは光良暁美が変身した姿です。攻撃してはダメです。」
「了解!攻撃は鬼の方に限定、白い方は傷付けるな。」
クモ型の鬼は構わず殴りかかって来たがそれをすかさずかわし回し蹴りを決めた。敵の動きを見極めながら足技を中心に優勢に戦った。クモ型の鬼は逃げようとしたが背中に飛び蹴りを入れた。
「ねぇ、ミント。武器なんかないの?」
「え、ステッキがあるよ。」
「なんで言わないのよ。」
「いや、いらないのかと。呪文はカーモ・キーテス」
「わかった。カーモ・キーテス!」
ブレスレットからステッキが飛び出した。クモ型の鬼を放り投げた。クモ型の鬼は為すすべもなく床に叩きつけられた。
「必殺呪文は?」
「ツーヒツ・キーテス」
「おっけー!ツーヒツ・キーテス!」
ステッキが長く伸び、先がピンク色に発光した。ジャンプして勢いをつけて発光したステッキを叩きつけた。
クモ型の鬼は爆発し、消え去った。
変身を解いた暁美はすかさず桜にかけより、足にやけどがないか確かめた後手を差し出した。
桜は手をつかみ痛そうにしながらも立ち上がった。
「やっつけるって言ったじゃないですか。」
「ええ。とりあえず有言実行はできる人だとは認識しとく。」
桜と暁美は歩いてビルを降りていった。