2パート
「般若。刀途も倒されたようだ。」
「まぁ。魔法少女ヒカリも随分粘るね。」
般若は高層ビルの高い所の階をめざし火途とあるいていた。奇しくも魔法少女ヒカリが初変身した場所と同じだった。火途の報告をきき、般若は両手を握り、開くと両手のひらの上にたくさんのカラスの羽が現れた。そこに息を吹きかけた。
カラスの羽は四方八方にひろがり着地したところから次々と鬼に変わった。
鬼は暴れ始めたが腕にブレードを持った捜査員やライフルの狙撃班などが駆けつけた。そして、次々と鬼を鬼を撃破した。
ライフルも強化弾に改良が加えられ一発で倒せるようになっていた。
「総数13。全部撃破しました。」
「よし、警備を続けてくれ。」
大きなフロアに出た般若は六角形になるように紋章を描き、中央部で坐禅を組んだ。
「今こそ人類の悪しき魂を祓い、罪を洗い流す禊の儀式の時。」
目を開くと目が真っ赤になっていた。
「時は来たれり。」
般若はお経のようなものを唱え始めた。
般若の背中から巨大なカラスの翼のような真っ黒な羽が生え、羽ばたき始めた。羽ばたくと同時におびただしい数の黒い羽がばらまかれた。
般若が足をつけてつけた刻印の部分から光の柱が上がりそれぞれの光の柱が六角形の形となった。
解き放たれた黒い羽が着地し、鬼が次々と誕生した。
「鬼が大量に生まれました。数、カウントしきれません!」
捜査員が次々とブレードを持って戦い、撃破するがとても減っている様子はない数だった。
病院の地下シェルターでは民間人の恵と雄介の親子や病人の瑠々ちゃんのような人々が避難して、事態の収束を待っていた。
「はやく、戦い終わるといいね。」
「うん。」
刀途を撃破してテントに戻り仲間に合流した暁美は戦いに行こうとしたが桜が止めた。
「まちなさい。」
「どうしたんですか?」
「あなた、朝から何も食べてないでしょ。だめよ。そんな状態で行っては。」
「食べるもの持ってませんよ。」
「あなたの実家に送ってもらったわ。ほら、あなたのお友達のおばあちゃんのさつまいも。ふかしといた。」
「これ。桜さんと出会う前にくれたおばあちゃんのさつまいもだ。」
そんなこともあったなと少し懐かしくなった。
「またあのおばあちゃんに会えるのかな。」
「会えるわよ。何弱気になってるの。大丈夫。みんな頑張ってるから。」
まったく。こんなにいとおしく感じるようになるとは。第一印象は最悪だった。言ってることはとんちんかん、でも顔はかわいいからかさほど怒られない。そういう女がとても嫌いだったが共に戦ってきて今は本当にとても心配している自分がいる。代われるもんなら代わってあげたい。無事に帰ってきてほしい。怪我だってして欲しくない。
ぱくぱくと甘いさつまいもをほおばる暁美の頭を桜は優しくなでてあげた。なでながら話した。
「本当に無理だと思ったら逃げておいで。」
「逃げちゃうんですか。」
「うん。魔法少女ヒカリですらかなわなかった相手だ。誰も文句なんか言わないよ。それくらいの気持ちで行きなさい。わたし達もすぐに追いつくわあなたのところに。」
「少し元気でました。」
「きっとこれが最後だよ。あなたとは仕事ばっかりでどこにも行けなかったから、これが終わればどこかに遊びに行きましょう。どこがいい?」
「うーん。ディズニーランドがいいです。」
「わかった。楽しみにしててね。」
頭をなでてもらいながら暁美はこくんと頷いた。
「それと画用紙のステッキ。雄介くんに預かってもらいたいんです。届けてくれますか。」
「わかった。さつまいも、食べ終わった?」
「はい。鬼たちをやっつけてきます。」
「気をつけて。」
テントを出るとあたりはもはや地獄絵図だった。大量に鬼がいて、うろうろと歩き回っていた。
「ミント。行くよ。」
「うん。これがきっと最後の変身だよ。」
「わかった。」
「我に魔法の力を。ジーチェ・ジーフェン!」