お転婆娘
パチリ、と目を開けると夜だった。ベッドの縁に体を預けたルイが眠っている。洗面台に濡れたタオルを取りに行き、顔を拭ってやる。
「ルイ、貴方王様なんだから泣いちゃダメだよ」
囁いて毛布をかけてやると、ルイが身じろいだ。・・・どうも私を責めたから起きなかったのだと思っているらしい。初対面の時の俺様な面影はどこへ行ったのやら。
「・・・ちょっとだけ、出かけてくるね」
濡れ羽色の髪にキスをして、ルランは窓を開けた。外を見れば登れそうな所が沢山ある。ならば、やることは一つ。
「ミレニア、覚悟しなさい」
ルイのクローゼットを勝手に漁り、動きやすい格好に着替えて大きな無地のマントを被る。しっかりとしたブーツを履き、手袋をし、奥にあったロープを手に取る。
「病弱だからって、何もしないとは思わないことね」
最後に護身用にナイフと短剣をそれぞれブーツとベルトに挟み、ルランは窓枠に足をかけた。
***
「わぉ、凄く綺麗」
せっせと壁や屋根を登りながら空を見上げると、綺麗な星空と月が見えた。まだ夜になったばかりらしい。どうしようもなく高揚する胸を押さえながら、サクサクと屋根を移動していく。ワクワクするのは心臓に負担がかかるが、失神したことがないから大丈夫だろう。
華やかな音楽が聞こえる方へ軽い足取りで移動する。真下は前回の舞踏会場。そとへ漏れる光で窓の位置を確認しつつ、硬い屋根の取っ掛かりにテキパキとロープを結んでいく。窓は結構下の方にあるうえに、ぶつかったら確実に刺さりそうな窓枠がある。窓のど真ん中に飛び込めなければかなり痛い目を見るだろう。
「ふふっ、娼婦ですらこんな馬鹿なことはしないだろうね」
狙うはミレニアただ一人。蹴破ろうとしている窓にいるか分からないが、妙な確信を持ってルランは駆け出した。
ロープを手に巻き付けてしっかりと握り、勢いよく屋根を蹴った。ブワッと風に包まれ、身体が落ちる。ロープに引かれて窓に突っ込む直前、ルランは確かにミレニアと、彼女に詰め寄ろうとするルイを見た。




