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FPS  作者: N19
第1章 サバイバルホラー編
6/43

FPS episode.05

episode.05――

2014/7/30 首都アルダート 国立評議会場 ――


『――残念だけど、貴方1人で死になさい!』


 ルイはハンドガンを構えると、間を置かずに男へ向けて引き金を弾いた。そしてそれに合わせる形でザック達が大臣の顔をしたテロリストへ向け一斉に無数の弾丸を浴びせて、事なきを得る……筈だった。


『そんな、馬鹿な………!?』


 周囲の面々から驚愕を隠せぬ声が挙がる。


 それもそうだろう。テロリストの男は全身に銃弾を受けているにも拘らず、信じがたい事に不気味な笑みを漏らしながら平然と立っていたからだ。


「くくっ……ムダだ。我は偉大なるサーヴェイン様に全てを捧げた者。例えこの身が朽ちても、貴様らを黄泉の道ずれにしてくれる!」


 男は持っている魔石に再び魔力が展開され始その場に居た人間達は騒然とする。だが、未だルイだけはその冷静さを保っていた。


……アレは唯のバーサーカーとは何か違う。


 本来、強化された人間のほとんどは自我を失って獣同然の知能まで下がってしまう。だが、今目の前の個体はどうだ。普通の人間では致死の状況でも平然とし立っていながら言葉を話している。


 恐らく、他人の顔を複製したりと教団は次々に常識を覆す程の新しい技術の実戦運用に成功しているという事だろう。


「まったく、手間をかけさせてくれる……」


 バーサーカーに通常弾では歯が立たない。ルイはまだ弾が残っているマガジンを捨てると、緑色の光を帯びた弾が入っている別のマガジンを銃にセットし装填する。そして、風の様な速さでルイは男に接近するとハンドガンをゼロ距離に近い位置で構えその引き金を引いた。


――――バシュンッ!!


 次の瞬間、男は頭蓋は微塵に吹き飛ぶ。


 残った胴体は赤い飛沫をあげ、爆発寸前であった魔石が床へ落ちる。その一連の出来事に圧倒された場内はシンと静まり返る。



『まさか彼が入れ替わっておるとはな……』


 周囲が沈黙する中、キャスターは複雑そうな表情でそう呟く。恐らくはもう用済みとなった本物の大臣は既に殺されているだろう。


『えぇ、今回ばかりはこちらの想定を超えたわね。まるで私達を嘲笑うかのように……』


 ため息混じりにそう零したルイだったが、テロリストが倒れた今でも不穏な気配は未だに消えていない事に違和感を覚えていた。


「……嫌な予感がする。陛下を安全な場所へ」


 近くに居た警備兵にルイは命令してから、それに添う形でキャスターに口添えする。


『多分……“まだ”奴らは居るわね』

『ふむ。ここは素直に引いておくか……』


 2人で示しを合わせると警備兵と共に大衆を掻き分けキャスターの逃げ道を作っていくが、それから間を置かず警戒していたザックから呆れた様子で報告が入る。


『――ルイ、こっちにも1人居たが事前に抑えた。一体、何人いるんだコイツらは?』


『やはり標的を変えてきたか……この分だと他にも敵が居るぞ。皆、警戒しておけ』


 控えている団員にそう促し、自身も人混みの中を最大限目を凝らして警戒を行っていたが、その悪い予感はすぐに的中する事になる。


 会場から退避しようとしていたキャスターに向け本来は彼を守る筈の第六騎士団の護衛が突如、その前に立ちはだかったのだ。


「神を冒涜する皇帝めぇ、死ねぇーーーー!」

 叫び声と共に乾いた発砲音が場内に響く。


『――――くっ!』


 しかし、いち早くそれに気づいたルイが、咄嗟に前へ出てキャスターに当たる筈の銃弾を自らの身体を盾にして防いだのだ。


「ルイっ!」キャスターの声が場内の響く。


『………大丈夫、急所は外れてる』


 だが、運良く急所から外れたとはいえ、その表情に普段のポーカーフェイスが見られないのは彼女自身に余裕が無い証拠だった。


 先程キャスターを仕留め損ねたテロリストも再び持っていた銃を構え直そうとするが、その瞬間に2階に居たザックとリックがその頭と胸を撃ち抜いた。



――――グゥゥオオオォォォォォッ!!


 しかし頭と胸を撃ち抜かれて絶命した筈のテロリストは倒れることは無く、白目を剥き忽然と立ち上がり雄叫びを上げる。


 限界を超え強化されすぎた筋肉組織が皮を破り剥き出しとなり、その姿はおぞましく人ならざるものへと変質を遂げた。


「――――なっ!」


 バーサーカー化した巨大な腕がルイを襲う。急所では無いにしても銃弾を受けた身体は、頭で分かっていても反応することが出来ず、ルイは首を掴まれてしまう。


「…ぁ……くっ………」


 苦しむルイを弄ぶ様にイタぶるバーサーカーは首を掴む腕に少しづつ力を入れる。


『――ザック、そこからは撃てんのか!』


『ここからではルイに当たる。リック、そっちからはどうだ!』


『あぁ、行ける。野郎をブチ抜いてやるっ!』


 だが、リックがバーサーカーに銃を向けるとそんな事は予め想定済みと言わんばかりにルイをザック達の射線を遮る様に盾にする。


『なっ、野郎……団長を盾にしやがったぞ!』

『クソっ、どうする事も出来んのか……』

『ぬぅ……』


 騎士団の面々が何も出来ず苦虫を噛む中、ルイは薄れゆく意識の中で必死に逃れようとするもたいした抵抗も出来ない。


 ……くっ……限界…か…………






『――って、思うじゃん?』


 その声と共に会場の遥か遠方から放たれた光弾が空を裂き轟音と円状の筋を残しながら、ルイの顔の真横を髪を揺らし通り過ぎた。


 そして、その光弾はバーサーカーの胸部に直撃すると、そのまま肩から上を根こそぎ喰らい尽くし消失させる。


『ゴホッ…ゴホッ……なん…だ……』


 強靭な力から解放されたルイはその場に膝を着き、自分の身に起こった事を堆肥する。


『ヒュー!まさにギリギリセーフっていう所かな。救世主が助けにきましたよ、団長っ!』


 数刻前まで死を覚悟したルイにそんな呑気な声が耳に入る。だが、不思議と感じたその安心感にルイは戸惑っていた。


団長みたいだった…そんな筈…ないのに……


 ルイの脳裏に写ったのは7年前に死んだ筈の第一騎士団の団長の姿だったからだ。


『――オイッ、ジャクソン!ルイに当たったらどうするつもりだったんだ、お前はっ!』


 と仲間達からは賞賛どころかそんな罵声がジャクソンに浴びせられている。


 だが、ジャクソンは『そんなの女の子に当てる訳、無いじゃん?』とまったく悪びれる様子もなく、あっけらかんとそう返した。


『『『ハァ………』』』


 その言葉を聞いたルイ以外の全員が、追求するのも馬鹿馬鹿しいとタメ息を漏らした。


『皆、それくらいにしてやれ……ジャクソン、よく戻ってきてくれた。助かったわ』


 ようやく平静を取り戻したルイは素直にそう礼の言葉を伝える。


『ま、まぁ……天才ですから?ナッハッハーっ!』


 そんなふうに戯けるジャクソンにルイは昔に団長から教わった一つの言葉を思い出す。


 ――いいか、撃つ前にどんな結果になろうと受け入れる覚悟をするんだ。


 アレだけの狙撃をやって見せたジャクソンが、そのトリガーを弾くまでにどれ程精密で繊細な準備と弾く為の覚悟が必要であっただろうか……そんな光景を思い描いてみたルイの口元が思わず緩む。


 ――相変わらず、素直じゃない奴……。


 こうして連日続いていたテロ騒動は数名の犠牲を出したものの無事に終息したのだ。


 

やっとこさ第5話目です!いかがでしたでしょう?

まだまだ、地道に進んでいきますよー♪


PS

500PV達成です。皆様にかんしゃぁ~!Σd(゜∀゜d)

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