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FPS  作者: N19
第2章 ダークファンタジー編
41/43

FPS episode.40

episode.40――

2014/6/1 クリミナ 冒険者ギルド


 それは戦闘とは呼べない、一方的な殺戮だった―――


 黒装束の男達は満足な抵抗をする事も出来ず、次々と血を滴らせながら無残な骸が積み上がっていく。


「――この…化け物がぁあぁ―――!!」


 そして、その中に居たリーダー格に止めを刺すと、そいつの頭を掴んだまま生かしておいた最後の1人の元にそれを投げつける。この男は最初に四肢を潰していたので、自分で逃げる事も出来ずただ迫り来る苦痛に顔を歪めていた。


「最後のチャンスだ……禁呪を使ってる奴はこの街の何処にいる?」


「――っ、たとえ死んだとしても貴様などに言うものか!」


 だが、一向に口を割る様子を見せない男に見切りを付け、その首にナイフを向ける。



「――貴様は我らの主に楯突いた報いで……全てを失っ――がぁあっ!!」


 引き千切られた男の首から空気が漏れる音と共に大量の血液が部屋の至る所へ飛び散り、血の滴り落ちる窓ガラスに映る自分の顔は見るに耐えない程醜い。


「……我ながら酷い顔している。これじゃあ、ただの狂人か殺人鬼だな………」


 そして、その醜態を映し出しているガラスについた血は徐々に動き文字を形成していく。



――…罪深き者に…死を……死を…………――


(……あの呪詛が…また出てきやがった………)



「―――クソっ!!」


 その幻惑を映し出していた窓ガラスを拳で壊すが、頭の中は掻き回された様に最悪だ。


 始めの内は自らの力の対価だと思っていたが、最近では使う度に何か自分とは別の意思を強制するような感覚に陥る事がある。


「不便な力だ……人殺しばかり上手い癖に……結局、誰も救えないのかよ………」


 あのクロネ村での惨劇の際にジャクソンはこうならない為に力を求めた筈だった。なのに、現実では未だ何も出来ずにいる自分の無力さが忌々しい。



「良かれと思ってやっても最後は結果に裏切られる。いつもこうだ……俺はどうしたらいい………」


 もう動かなくなったルーシェに縋る様に問い掛けても、彼女は何も言ってくれはしない。だが、既に光を失っている筈のその瞳はジャクソンに何か伝えようとしているかの様に小さな輝きを写している。


「なんだ………」


 その瞳に映った赤い粒子の光を目で追っていくと、その先にはあのカールトンの宿があった。


 この状況ではもう街で生きている人間の方が少ないだろう。それでもまだ誰かが助かる可能性があるなら、それに掛けるべきだ……多分、ルーシェはそう言っているのかもしれない。


「………ありがとう……俺、行くよ」


 さっきとは違い心なしか安らかに見える彼女にそう声を掛け、床に置いていた銃を拾い冒険者ギルドを出る。そして、もう僅かのプラーナで無理やり脚に強化を施すと宿に向かって街を駆け抜けて行く。


(もう……助けを求める人々の声すら無いな、こんな状況で本当に生き残りなんているのか………)



 そんな懸念を抱きながらも途中で邪魔も入らず宿に着く事が出来たジャクソンは不自然な程静まりかえっている玄関ホールを警戒しながら進んでいく。


 外と比べ物にならない程、濃密な満たされている粒子は宿のある一点に向けて収束していた。そして、その行き着く先には平然と佇む、神父の姿を見つけた。



「――ふむ。随分と…遅かったですね。待ちくたびれていましたよ……英雄殿」


 彼の憂いを帯びた表情はこの凶事にも関わらず、以前とまったく変わりが無い。唯一違うのは後方にある魔方陣とその触媒となる宝石……そして、彼の部下と思われる赤い装束を来た2人の男達だけだろう。


「やっぱりアンタかトーマス神父……いや、"Mr.Dirty"と言った方がいいか?」


「ふむ……何のことでしょうか………」


 マクベスが以前に言っていた事を確かめる為にカマをかけ神父をそう呼ぶと彼は目を細める。だが、そのたった一瞬の間で全てを察する事が出来た。コイツは最初からジャクソンたちを利用する為に仲間の面をしてきたのだろう。それどころか、この世界に皆が連れて来られた事にも関わっている可能性が高い。



「もっと早く気づくべきだったよ。全ての元凶がお前達だっていう事をな……」


「それは言いがかりというものです。現に君がこの街に来なければ、彼らもこの様な事にはならなかった筈だ……違いますか?」


 まるで説教をする様にそう御託を並べる神父にサブマシンガンを向けると奴はまるで、子供を相手にするかの様に諭す。



「――ふざけるな! 貴様がやっておいて偉そうにっ!!」


「そう生の感情を出し過ぎては判断を誤りますよ。それに君では私を殺せない……試してみると良い」


「あぁ、遠慮無くそうさせてもらう――っ!」


 後ろの赤装束の男達が動く気配を見せていないのは些か不気味ではあったが、迷っている時間など無い。ジャクソンは構えていたサブマシンガンのトリガーに指を掛けると躊躇わず、それを一気に引き絞る。


―――だが、その無数の弾丸を神父に浴せていく中で、ある異変に気づく。



「――そん…な……何で…だよ…………」



 確かに神父に向けて弾丸を撃った筈なのに1発も当たっていなかった。それどころかジャクソン自身がわざと外したかの様に後ろの壁だけを撃ち抜いている。


「……どうしたのですか? この距離で一発も当てることが出来ないとは拍子抜けにも程がありますね」


 そのジャクソンの行動があまりにも滑稽であったのか、神父は口元を緩めて笑う。


 (どういう事だ……確かに奴に向けて撃った筈なのに………)



「………何をしやがった?」


「言ったでしょう。君がどれだけ優れていたとしても摂理を曲げるには及びません。"君では私に勝てない"んですよ……」


 神父がどんなマジックを使ったのかは分からない。銃では叶わないならば、避ける事は出来ない接近戦しかないだろう。ジャクソンは銃を投げ捨て腰に差した2本のバリスティックナイフを抜く。



「ハッ、訳のわからない事を……ならっ――」


 そして、全身に強化を施すと黒装束の男たちの戦闘とは比べ物にならない程の速さをつけて、神父の背後に回り込むとそのナイフの刃を返す。


「――ククッ、愚かな……」


 しかし、確実に取ったと思ったジャクソンの渾身の一撃は容易に避けられ、逆に自分自身が壁に吹き飛ばされてしまう。


「がはっ――!!」


 信じられない様な力で壁に叩きつけられ、脳震盪を起こした身体は意思に反して自由に動かない。


(今のは…なんだ、突然神父が目の前から消えた……くっそ…思う様に身体が…動かねぇ………)



「言いましたよ。君では勝てないとね……無駄な抵抗などは辞めて、現実を受け入れると良い。見なさい、君の誤った選択の結果を……」


 神父はそう言うと宿の奥に目線を向けてジャクソンを促す。その先にはギルドと同様に死屍累々となった幾人もの亡骸が悶え苦しんだままの姿でそこに居る。その中にはルーシェの親父さんも含まれていた。



「足掻けば足掻く程、この様な犠牲者が増えるのです……しかし、君が望めば救われる命もある」


 ジャクソンを断罪するかの様な重々しい表情で神父はそう言うと赤い装束の男の1人が、奥の方から誰かを抱えて戻って来る。それが誰であるかはすぐに分かった。


「――まさか……まだ生きて…るのか……」


 グッタリとして意識は無い様だったが、それがアリアちゃんであることは間違い無いだろう。


「この娘は他の人間よりもプラーナ量が豊富な様でしてね……まだ死んでいません。適切な処置を施せば、生きる事も出来るでしょう。この惨劇の犠牲となってしまった彼女を君は救いたいと思いませんか?」


「さっきから……何が言いたい?」


「……分かりませんか? これは簡単な取引ですよ。君のその特異な能力は非常に希少性がある。私としてもこのまま殺すのは惜しいのです。この娘を救いたいと思うなら、再び君の意志で私に降りなさい」


「なんだと……」


 嘘か誠か、神父はジャクソンの事を本気で取り込もうとしているらしい。態々人質を取ってまでこんな芝居の掛かった事をしているのもそのせいだろう。


 なら、奴が隙を見せたその機に乗じる事が出来れば、この状況を打開する事が出来るかもしれない。


(そうだ……何か切欠さえあれば………)



「……分かった……その要求を飲んでやる。だから、その子は助けてやってくれ。このひとでなしめ……」


 ジャクソンは降参して銃を床に置くと神父は満足そうに頬を緩める。



「ククッ……よろしい。ではその反抗的な態度も出来ない程、次は従順な兵として差し上げましょう」


 そして、赤い装束の男に指示を出してジャクソンの腕を縄で縛ると神父は何か大掛かりな詠唱を始める。



「――――我が主に献る。御身の偉大なる力を示し、この愚者に鎖の導きを与えん――――」


 神父の詠唱が為されると以前の様に激しい激痛が首を襲い意識を刈り取ろうとする。


(……くっ……あの時と一緒だ…………)



 何かドス黒い深淵の中に引きずり込まれる様な感覚と自分のものでは無い感情が意識を侵食する。


(……ヤバイ……持っていかれる………)



「ふむ。サーヴェインの禁呪でさえも制御が出来ないとは……まったく、君は"何時も"私の想定を超えてきますね。……だからこそっ―――ぬっ!!」



――――ダァン―――ダァンダァン!!!


 何時もより饒舌に喋る神父の隙をついて不意の弾丸が奴に襲うとそれによりジャクソンに対しての術が、ギリギリの所で解除されると失いそうであった自我を取り戻し目の前で起きた事を把握する。


 瞬きをする程一瞬の出来事ではあったが、外から放たれた3発の銃弾は魔方陣を展開していた錬金装置と術者の神父を貫き、それによって辺りに満ち溢れていた赤い粒子が一気に離散している。


 また、致命傷には至ってなかった様だが、神父は自らの思惑を破った張本人を忌々しく睨む。


「……やはり、貴方は先に殺して置くべきでしたね」

「それはそっくりそのまま返すで、トーマス神父」



 そんな事は気にした様子も無いと大地は軽口を返してジャクソンに目を向ける。


「悪いな…遅くなった。まだお前のままか、相棒?」

「あぁ、まだ…何とかな……」


 恐らく大地は今までのやり取りを聞きながらチャンスを伺い、ジャクソンが術に取り込まれる寸前の所で勝負に出たのだろう。その証拠に最後の一発は腕自由を奪っていた縄を密かに落としていた。


「くっ、止む得ません。もはや容赦の必要はない……彼は此処で殺しなさい――!」


 その命令と同時に赤い装束の男たちは背に担いでいた槍とハルバードを手に大地に襲い掛かる。



「その大振りじゃ、そうそう当たりはしないさ――」


 大地はデカイ図体に似合わない素早さで暴風の様に振るわれる2本の得物を上手く避けながら、装束の男にライフルで弾丸を撃ち込んでいく。


 その1発が男の額へ命中するとその反動でフードが捲れ上がり、男の素顔が晒される。


 男の顔はまるで死者の様に蒼白であり目は白目を剥いていた。その異様さを形容するとすれば、リビングデッドとでも言う表現が正しいかもしれない。



「彼らはとある実験の産物でしてね……以前は勇敢で屈強な騎士でしたが、今では人を超越した存在です。その程度では“死ねません”よ」


 そう口舌を垂れて愉悦を含んだ表情を浮かべる神父に大地は舌打ちをする。



「まさか…人体実験か……………」


「偉大な研究には犠牲は付き物です……どうですか、希望すれば貴方も同じにして差し上げましょう」


 まるで遊びにでも誘うかの様に神父は笑う。その間にもハルバードを構えて、リビングデッドは彼の息の根を止めようと容赦無く襲い掛かる。



「悪いが遠慮しておく、それにこの程度の化物でオレを倒せると思ってもらっては困るで!」


 大地は一気にリビングデッドと距離を取ると銃を構え直し、詠唱のような一節を口ずさむ―――


『――主よ、我が砦となり力をお貸しください――』


―――ダァッン――!!!


 そして、雷鳴の様な光を纏ったライフルの引き金を引くと眩い閃光と共にリビングデッドの腹を貫くと、化物の一体はその胴体に大きな風穴を開けて動かなくなり、そのまま地に倒れた。



「――っ……まさか、魔術をそこまで使いこなしているとは……賞賛に値しますよ」


「伊達に努力は積んでないんでな……さぁ、覚悟してもらうで!」


 大地は狼狽えた神父に対して止めを刺すべくライフルの銃口を向けるが、それを阻止する為にアリアちゃんを抱えていたもう1体のリビングデッドが彼女を手放すと大地に矛を振りかざす。



『―――グォォォォッ――!!!』


『――我が誓約、御名を仇す傲慢な者に報いる――』


―――――ダァァッン!!!


 だが、それも大地に届く事無く2発目の閃光が周囲を照らすと死霊の騎士の胴体が吹き飛んだ。そして、その弾丸は後ろに貫通して、神父の身体へ直撃した。


 あの化物ですら一撃で仕留めた魔弾だ……人の身ではひとたまりも無いだろう。



―――しかし、勝利を確信したジャクソンとは対照的に大地の表情には余裕が無い。


「………アカン。その子を連れて逃げろジャクソン。チャンスは…今しか無い」


「何を言ってんだ。神父なら今の一撃で…っ………」


 ジャクソンはそう言い掛けて、息をするのも忘れるくらい目を疑った。何故なら直撃を受けた筈の神父は何事も無かったかの様にそこへ立っていたのだ。それどころか、何か禍々しいエーテルに包まれている。



「……嘘だろ…何で生きてるんだよ…アイツ………」


「どうやら、本当に今のオレ達では奴に勝てないらしいな……だから、早う逃げるんや」


「くそっ…なら、お前も一緒にっ――!?」


「いや、奴をそのままにしても逃げきれはしないだろうい。大丈夫や、まだオレにも充分に勝算はあるさ。それよりも見てみい、その子の身体の方が持たない。お前、その子を見殺しにするつもりなんか?」


 プラーナは人の生命力そのものだ。その欠乏が続けば例え命が助かったとしても彼女に重い後遺症が残る可能性もある。感情的になっているジャクソンより、今は大地の判断を素直に聞くべきだろう。


「……死ぬなよ…大地………」

「あぁ、またな相棒……」


 お互いに差し出した拳を合わせ別れを告げ、ジャクソンはアリアちゃんを背負い大地を残して後にする。


 遠ざかる宿からは凄まじい銃声と共に激しい戦闘の轟きが響く。だが、大地の意思を無駄にしない為にも今はこの子を救わなければならないと自分を言い聞かせ、クリミナの街から離れた。


 それが大地との最後の別れになるとも知らずに………

 

明けましておめでとうござます!(*゜ロ゜)ノ☆


そして、しばらく更新出来ておらず、すみませんでした。。


今回、書いても書いても全然納得のいく出来にならず、こんなに時間が掛かってしまいました……正直、まだ納得出来てない部分も多く、修正するかもしれません(;´・ω・)


やっぱり、シリアスな展開は向いてないのかも…と思う今日この頃です。。


一応、次話で2章は最終回の予定ですので、がんばるます!!

 

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