FPS episode.34
episode.34――
2014/5/27 世界教 魔術研究所
「――クソっ、遅かったか……」
「いや、まだ完全に占拠された訳じゃ無さそうや」
急報を聞きジャクソンたちが魔術研究所に着いた時には既に至る所から黒煙が上がっていたが、東西に分かれている建物の西棟部分の被害については比較的にまだ被害は軽微に見受けられた。
「皆、第9騎士団は帝国でも最精鋭の部隊だと聞く、中でも“黒曜の吸血鬼”と言われている奴に遭遇したら、各自は戦わずにまずオレ達へ連絡してくれ」
大地がそう指示すると皆は目を合わせ頷く。
「ヨシ、ジャクソンとオレは占拠された東棟の様子を見に行く。スノーマン、ケンプ、イフリーは他のメンバーを連れて生存者の捜索を頼むで」
「むぅ、帝国の強者と戦ってみたかったんだがな」
「あぁ……今の俺らなら騎士団に遅れを取らん!」
しかし、今では小隊の隊長となったスノーマンとケンプはそれに対して不満を漏らす。ここ最近のヘイトは負け知らずの状態であり、尚且つ新たなメンバーが増えた事で士気が上がっているせいだろう。
「なぁ、みんな。オレ達の目的はここの研究員を1人でも多く逃すことで無闇な戦闘は被害を増やすだけやない。君らは目の前の仲間の命より、自分の手柄を優先したいって事かい?」
大地はそう諌めるとスノーマンとケンプがバツが悪そうに目を泳がせる。
「うっ、そうだな。俺達が悪かった……」
「あ、あぁ……大地の言う通りだ」
「――ホラホラ!? 我々脳筋組はリーダーの言う事を聞いてなさいって事よ。捜索を始めなさい!」
手を叩きイフリーがそう仕切り直す様に纏めると、皆は仕方がないと頷いて一様に動き出す。
「助かったで、イフリー。後はマクベスの作戦通りに頼む。オレとジャクソンは敵を確認次第、戻るわ」
「りょーかいよ。まったく、アンタ達には迷惑掛けられっぱなしね……ホラっ、早く行ってきなさい!」
イフリーにケツを叩かれ気合いを入れられた俺達は半壊している東棟に向かう。研究所は屋敷を2つ程くっつけた様な構造になっており、見た目よりはかなり大きい。また、教団の最重要拠点の一つという事もあり警備の僧兵が多くいると神父に聞いていたが、東棟の入り口付近に今は無惨な死体として転がっていた。
「なるほど……帝国の精鋭ってのはデマじゃ無さそうだ。ほとんど抵抗した様子も無く殺られてる」
「そうやな。ジャクソン、左右で二手に分かれよう。各部屋を回って、人が残っていないかを確認する」
「――了解。10分後にここで再開しよう」
そうして大地と別れた俺は研究所を右手へと進む。途中の部屋には抵抗した研究員と思われる遺体が複数あったが、皆どれも銃弾によって殺されている。
「……帝国にも銃を使う奴がいるのか」
基本的にこの国は古き風習を重きに置いていおり、異世界の技術の最たる銃は忌み嫌われこちらの世界の人間が使うのは稀である。そんな帝国でジャクソンたちと同じ銃を主体とした装備の騎士団がいる事に驚く。
そして、更に奥へ進むと実験室と標札の付いた部屋の前に差し掛かり、警戒しながら扉に手を掛ける。
(………何だ……何か音がした気がっ…―――)
―――ダダダダダダァン!!
だが、嫌な予感を感じ取り手を引き自分を突き出す様な形で後ろに飛ぶと、その次の瞬間に目の前の扉は銃弾の雨によって風穴を空けて吹き飛ぶ。
「――あっぶねぇ〜!もう少しで蜂の巣だぜ……」
「オイっ!そこにいるザコ出て来いよ。この僕の視界に入っておいて、生きて帰れると思ってんの?」
こんな場所に似合わない幼い子供の声でそんな随分と酷い煽りを受け、俺は何事だと壁に身を隠しながら腰のナイフの刃の部分を使って中の様子を伺う。するとAK47というアサルトライフルを持った白髪の少年がイラついた様子でこちらに銃を向けていた。
(何だあのガキ……帝国にはあんなのもいるのか?)
「なぁ、そこのガキんちょ! お兄さん怒らないから、大人しく投降しろよ。悪い様にはしないぞ?」
「ハァ?……お前さ、馬鹿なの? 死ぬの?」
少年は心底見下すようにそう言うと前に出て銃を再び構えた。更にその後ろには、殺された研究員の死体が幾人も積み上げられていた。
「心配しなくてもお前も直ぐに殺してやる。だから、そのまま大人しく死んでよねっ――!?」
少年はワザと照準を外すと不意にこちらの逃げ道に向けて壁抜きをしながらライフルを撃つ。ジャクソンは成す術もなく部屋の中に飛び込むが、その途端に頭があった位置を数発の銃弾が射抜た。
「のやろっ―――!」
間一髪でそれを避けて再び物陰に隠れたが、今のはヤバかった……冷汗が止まらない。
「へぇ~ヤルじゃん。ただのザコとは違うんだね……褒めてやるよ、アホ面!?」
「そりゃどうも……まったく、口の悪いガキだ」
「でも次は殺す…だから避けんなっ!?」
「――くっ、ムチャ言うなよ!」
即座に反応して3合、お互いに撃ち合いをしながら物陰に隠れるのを繰り返すが、その動きと射撃精度だけでも少年がこちらのポテンシャルを大きく上回っている事を思い知らされる。子供の見掛けをしているが、アレはバッドマンとはまた別の化け物だ。
「まったく……ちょこまかしないで早く死んでよ」
少年はそう言うと激しかった攻撃がようやく止み、あまりに静かになったので様子を伺うと、金属音がこちらの近くに落ちた。
「――アイツ、まさかっ!?」
次の瞬間、辺りは爆散して、黒く焼け焦げた臭いが辺りに立ち込める。
「ヒュー、なんて事しやがるんだ。あのクソガキ……こうなったら先に抑えるしか無いな」
黒い煙が漂い視界が十分でない中、ジャクソンは一つの策を実行に移す。牽制で少年の後ろにある背の高い本棚をサブマシンガンで撃つとバリスティックナイフを抜いて正面から突っ込む。
「ぬぅおおぉーーーー!!」
「――ハッ、やっぱりタダのバカだな!自分から死にに来る何てさぁ!?」
少年はアサルトライフルの銃口をこちらに向けると容赦無くトリガーを引き絞り、銃弾がフルオートで発射されるのを見て、ジャクソンは動体視力を一時的に強化し発射される弾道を避けながら前に進んで行く。
それに危険を察したのか、少年はショートレンジのハンドガンに持ち替えるとこちらに向ける。
―――でも、それは想定通りさっ!
「――なんっ、正面は囮か!?」
こちらに気を取られた少年は後ろから時間差を付け本棚が倒れ込んで来た事に驚いた様子を見せたが、彼も常人を超えた反応でそれを辛うじて横に避ける。
「―――って、思うじゃん?」
だが、ジャクソンの本当の狙いはまさにその避けたタイミングにあった。
少年が上手く本棚を避けたのを見計らいドッグタグに魔力を有りったけ通すと自己強化をフルで掛けると自分のプラーナが喰い尽くされるのを感じながら、通常ではあり得ないスピードで少年の背後を取って、首へ手刀を打ち据えて少年を気絶させた。
「ふぅ……手間を掛けさせてくれる」
ジャクソンは意識を無くし倒れ込む少年を抱えると年相応な表情で寝ている彼の手をまた暴れられない様に縛る。辛うじて殺さずに済んだものの、この少年の戦闘技術はドッグタグの補正が無ければ、ジャクソンなど本来相手にならない程の相手だ。運が無ければ、今頃は逆に殺されていたかもしれない。
(まったく、トンデモないガキだったよ………)
スヤスヤと寝ている少年を適当な場所へ寝かせて、ジャクソンは改めて部屋の中を見渡すとその異様さに驚いた。人が入る程の大きさのガラスのビーカーに、黒く炭化した人型の様な何かと赤く光る小さな魔石が中の保存液の様な物の中に浮かんでいる。
「何の実験だろう……酷く不気味な感じだ」
何かの生物実験の後にも見えるその部屋を更に進むと主任研究室と書かれた部屋を見つけ慎重に入る。
部屋の中には何か重要な資料を処分しようとしていたのか、山積みにされた書物や書類が散乱していた。その一部は既に燃えて黒く焦げており、それをやった思われる学者風の男が側で気絶している。
そして、その横にはまるで磨かれた黒曜石の様に目立つ綺麗な黒髪の少女が、燃えずに残っている資料の数々を手にそれを読み漁っている。
「どうしたクリフ……隣で音が――っ!?」
恐らく先程の少年と感違いしたのだろう。彼女はそう言い掛けたが、その途中で入ってきた人物が違うと気付き、ホルスターから抜いたハンドガンの銃弾が数刻前までジャクソンが居た空間を射抜く。
「――おっとと、いきなり撃つなんて酷いぜ!」
何となく撃たれる予感がしたので予め避ける体制を取っていて正解だったな……。
「……誰だ。外に別の人間が居たはずだが?」
「あぁ、あの口の悪いガキはユックリ寝てるよ」
先程の少年の仲間なのはおおよそ察しがついていたが、あの少年を負かした事に彼女は随分と驚いている様子だった。
「まさか、あの子を1人で倒すとはね。貴方が最近名を馳せている“ヘイト”なのかしら……」
「さぁな。そういう君は分かりやすい。“黒曜の吸血鬼”ってのは、恐らく君の事だろう?」
美しいショートボブの黒髪にレッドスピネルの様な紅い瞳は彼女の鋭利な妖艶さを際立たせ、その通り名に相応しいものだとジャクソンは感じた。
「ほぉ、私を知っている様だな。なら話は早いわね。なら、知っている事を話してもらっ――……」
再びこちらに引き金を向けた彼女だが、対峙し目が合うとその瞳があからさまに動揺した様に揺れる。
(―――何だ、急に動きが止まった……今なら!?)
そのチャンスに乗じて背後に回り込むと彼女の白い細首にナイフを押し当て、形勢を逆転させる。
「勝負あったな……っていうか、手を抜いたろ?」
「えぇ、そうね。でも……戦闘中に集中を切らせた私の負けは変わらないわ。さぁ、殺しなさい」
観念した様にそう言うと彼女は抵抗もせず、引き金から手を離し、銃を側の机の上に置く。
「これで反撃も出来ない。さぁ、どうしたの?」
だが、ナイフを突き付けられているにも関わらず、続けないジャクソンが元から殺す気が無いのを彼女は知っているかの様な態度を続ける。
「気に入らないな……女や子供を殺さないとでも?」
「さぁ、どうなのかしらね……」
あまり舐めるなと殺気を込めても一切態度を変える様子を見せず、根負けしたジャクソンは首からナイフを離して降参だと手を挙げる。
「ハァ……どうせ、俺には殺せないさ………」
「……良いの? こんなチャンスは二度は無いわよ」
「それならそれで構わないよ。それより条件と言っては何だが、幾つか教えて欲しい事がある」
これ以上はこっちが情けなくなると話題を変えて、帝国に関して聴くには良い機会だと彼女に尋ねる。
「………答えられないかもしれないわ」
「別に答えられる範囲で良い。帝国の事……それと、君たち第9騎士団がここに来た理由が知りたい」
そんなジャクソンの質問があまりに意外だったのか、彼女はポカンと口を開け目を丸くする。
「貴方……この研究所でどんな事が行われていたか、本当に知らないの?」
「何言ってるんだ。 ここは教団が異世界人を元の世界に帰す魔術を研究している……そうじゃ無いのか?」
だが、その答えに彼女は深刻そうな表情に変える。
「そう……やっぱり何も知らされていないみたいね。どおりで“ヘイト”の行動が世界教のそれとは噛み合わない理由が分かったわ」
「どういう……ことだ?」
「貴方達が何も知らずに加勢している世界教が、本当はこの世界で何をしているか、教えてあげる」
彼女は深くため息を吐くと仕方ないと手元の資料を捲り、自分の知り得なかった事実をゆっくり語り始めた。
34話目です。ひさしぶりに黒騎士団の面々が再登場となりました!
ルイ達によって徐々に教団の化けの皮が剥がれてゆくことになりますが、
いったいどうなるのやら……気長に次回をお待ちください~(*´ω`*)
PS
気がついたら2万PV超えてました! 本当にありがとうございます!?
これからもFPSをよろしくお願いしますΣd(゜∀゜d)




