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FPS  作者: N19
第2章 ダークファンタジー編
32/43

FPS episode.31

episode.31――

2014/4/25 バスティーユ男爵の屋敷


 エルディス帝国は元々は2つの国々が過去の戦争で併合され誕生した。このバスティーユ男爵領は国内の対立した勢力のちょうど中間に位置しており、昔から戦の中心となる事が多い。だが、それ故に人々の行き交いが盛んに行われ現在では貿易都市として、帝国経済の中枢を動かしているといっても過言では無い。


 また、首都アルダートから離れた場所に位置しているという事もあり帝国政府の支配が及ばない勢力がこの地に数多く存在していた。それらを利用し男爵は強大な利権や莫大な財を独自に蓄え、今では貴族派閥を裏で動かしているというのが一般の論調であった。



 そんな現バスティーユ男爵当主ハンスはカミノ教会の敬虔な信者であり、世界教や異世界人などを兼ねてより敵視している事でも有名であった。


 聖カミノ教会。この世界に過去実在されたとされる唯一無二の神を崇めている宗教教団であり、国教では無いにしてもこの大陸で最も信仰されている宗教だ。帝国第三騎士団は過去のエルディス皇帝がカミノ教に回心した折、結成された神殿騎士団を起源に持ち、その信者や関係者を中心に組織されている。政教分立はされているものの帝国内でもカミノ教の影響力は強く、他教の信者や異世界人に対して神の名の下に好き勝手をしているらしい。



 しかし、それらを良しとしない勢力も帝国には存在する。帝国領土の南方を支配するスフィーダ伯爵はこれまでバスティーユ男爵が行った所業を糾弾するとし、過去より秘密裏に繋がりがあったと俺たち世界教の部隊を支援して、男爵の襲撃を依頼した。


 各勢力の様々な思惑が交錯する中で俺たちは強大な貴族の後ろ盾を得たものの、後にこの事が帝国全土を動かす程の大きな事件に発展するとは、その時に誰も思っていなかっただろう―――





「ったく……あの2人は何やってるんだか………」


 俺と大地はマクベスとイフリーによる偵察の結果を男爵の屋敷の近くで伺っていたが、未だに彼らからの連絡が無く長い時を持て余していた。



『――聞こえたぞジャクソン。貴様、屋敷への潜入がどれだけ大変なのか分かっていない様だな』


 だが、そんな俺のボヤきに対してタイミング良くマクベスからの声が返ってくる。彼らは現在、身分を偽り一時的なボーイとメイドとして、泊まり込みで屋敷に潜入していた。時たま窓際から見える髪をオールバックにして、ボーイ服を着こなしたマクベスの姿は執事然としており、随分と様になっている。



『余りにその格好がお似合いなもんでね……』


『ぬかせ……それよりも男爵が自室に戻った。護衛の配置も想定通りだ。今なら問題無いだろう』



『だっ…そうだが……どうする、大地?』


『――あぁ、迷っている時間はあらへんな。突入を開始しよう。スノーマン、ケンプ……始めてくれ』



『――ようやくだな、待ちわびたぞっ!』

『―――オラァ、ブっ放すぜぇー!!』


 大地の静かな合図と共に作戦は開始され、待ち侘びたとばかりにスノーマンとケンプが動き出す。


 今回の作戦の概要はこうだ。先行で屋敷に潜入したマクベスとイフリーが男爵の位置を確認した後、そのタイミングを以って、スノーマンとケンプが正面から囮として銃撃を開始する。


 そして、護衛の注意がその囮に向いている内に俺と大地が裏から潜入し、スニーキングが得意なイフリーが逃げられない様に後方を固める。これまでの調査で男爵の周辺には護衛が多数いる事が分かっている為、至ってベーシックな作戦ではあるが、今回は最も有効だと判断した訳だ。



「―――ヨシ、オレ達もいくぞっ!」


 正面からの激しい銃撃が聞こえたのを皮切りにジャクソンと大地も隠れていた裏手から、ボウガンで屋敷までワイヤーロープを張るとフックを掛けて一気に降下する。


「ジャクソンは右の奴や。オレは左を殺る!」

「――任せろっ!」


 俺は先日に新しく手に入れたサプレッサーを付けたサブマシンガンで降下しながら護衛の1人を仕留める。大地もそれに続き残りの護衛を手早く始末すると俺達は屋敷の中へ潜入を開始した。



「――このまま2階へ行くで、護衛に気をつけや」


「分かってるよ、そんなこっ――あっ!」



「――なっ、貴様らは!! て、てきしっ………」


 しかし、先行して廊下を進む途中で言っている側から見つかってしまった俺だったが、それは増援を呼ばれる前に何とか仕留める。幸いサプレッサーのお陰で周囲に俺たちの存在はまだバレていない様だ。



「………何とか間逃れたわな。それよりジャクソン、お前いつん間にそんな射撃が上手くなってん?」


「いや、マグレだよ。それより男爵の所に急ごうぜ」


 大地にはそう言ったものの先日の不思議な体験後から妙に身体のキレが良くなっているのは事実だったし、自分の感も怖いくらい冴えている気がするがまぁ、特に支障も無いので今はヨシとしよう。



 その後も大地と連携しながら音を立てずに階段を駆け上がっているとちょうど2階に着いたタイミングでイフリーからの連絡が入った。


『――大地、そっちの状況はどう?』


『もうすぐや、男爵の方は?』


『まだ動かず自室に居るわ。少し前に外へ護衛が向けられたから残りは5人ね。それとマクベスは予定通り、脱出路の確保に行ったわよ』


『分かった。後方は頼んだでっ!』


『――えぇ、了解よ』



「護衛が5人ね……ジャクソン、やれるか?」

「あいにく今日の俺は負ける気がしないからな……それくらいの相手なら楽勝だぜ」


「なら、オレはバックアップや。先行頼むで!」


 算段をつけた俺達は気取られる前に前後二手に分かれると離れた位置から大地がライフルを構え、そこから狙撃したタイミングを見計らい俺が単独で前に突っ込む。



「―――先手必勝ぉっ!!」


 先日とは違い屋敷内の護衛は比較的に軽装であり、サブマシンガンでも十分に対応する事が出来る。ジャクソンは彼らに声を上げさせる間も無くヘッドショットを決めると残りの護衛も難なく仕留める。



 そして、男爵の部屋の大きな扉に大地が手を掛け、突入に備えると互いに目でタイミングを合わせ、向かいで銃の照準を合わせたジャクソンは頷く。


「これでチェックメイトや、準備はええか?」


「あぁ……ここで男爵を生け捕りにしてやる」



「――んじゃ、行くでっ!!」


 そのまま大地が勢い良く扉を開け放つと中に居た護衛が剣を腰から抜くが既に遅い。俺達は瞬きする間も無くそれらの護衛を仕留めると残った男爵と思われる身なりの男が険しい表情でこちらを睨んだ。



「ふむ、まさかここまで踏み入れるとはな………」

 

「お前がバスティーユ男爵やな? それ以上は動かんで貰おう……従わん場合、命の保証は無い」


 大地はそう言うと男爵に銃を向けて投降を進める。しかし奴はこの状況にも狼狽する様子を見せないどころか「下賤な匹夫供め……」と悪態を吐く。



 その太々しい態度にジャクソンは胸倉を掴むと「クロネ村の礼を返しに来たと言えば分かるだろう?」と敵意を込めて返すと男爵は呻く様に呟く。


「ふん、世界教の狂信者どもか………」


「――狂信者は貴様だ。何故、あんな事をっ!!」


「何故だと?……私はこの世界に害悪をもたらす異世界人と穢れた異教徒を駆逐してやっただけの事。お前達こそ、この国の治安を乱している元凶ではないかっ!」


 男爵は侮蔑を込めた表情でそう返すと当然であると答える。自らの行いに何の非も無いとばかりに……。


「――害悪?穢れただと? そんな身勝手な偏見の為にみんなを殺したっていうのか!!」


 ジャクソンは怒りに任せて男爵を殴りつける。


「やめやっ、ジャクソン! こんな奴に何を言うても無駄やで!」


 大地に制止されるものの、男爵はこちらを蔑むように睨む。


「……つくづく救い難い。お前ら異世界人が組みしている世界教……邪神たるサーヴェインが、どれだけ卑劣に人々を殺してきたかも知ら―――っ!!」



――――全ての――罪人に――死を――――


 だが、男爵の刺さるような殺意と「サーヴェイン」という言葉へ反応する様にジャクソンの視界に無数の赤い呪詛が浮かぶと意識は全て侵食されてゆく。自らの身体の感覚は失い、まるで目の前で起きている事が一人称の映像の様に進んでいくと、辺りに赤い鮮血が飛び散る。


「―――ぐっ…があっ………しと…めぇ……」


 視界は飛び散る赤い血液が埋め尽くし、気管が詰まり満足に息が出来ないのか、血が溢れる首を必死で抑え男爵は呪いの呪詛を唱えながらジャクソンにしがみ付くも程なくして力なく崩れ落ちた。



―――なっ、何だよ……今のは………


 男爵に付けられた血の体温が徐々に感じられる様になるとようやく身体に自身の感覚が戻る。そして血に濡れた自らの手を見ると腰に刺さっていた筈のバリスティックナイフが握られていた。そして、それで自分が男爵の首を真一文字に切り裂いたのだと理解する。


「オイ、ジャクソン……お前、一体どうしたんや突然………」


 自らの手でやった事なのに自分でやったという実感が無い事にジャクソンは恐怖を覚えていた。まるで男爵を殺した時にだけ、フィルムが差し替えられた様な感覚に囚われていた。


「………すまない」


「まぁ、こうなったら別の手を考えなアカンな……」


 大地の言う通りこの作戦は男爵を捕らえ虐殺の罪を世間に公表して、公然の場で断罪してこそ意味がある。ここで男爵を殺してしまえば、その意義を失ってしまうというのはジャクソン自身が一番良く分かっていた。


(クソっ、どうなってるんだ…………)


 自らのした事に理解が追い付かずにいるジャクソンは呆然としていると後方で微かな足音を耳が拾う。



「この賊め、よくもお父様をっ―――!!」


 突然の声にジャクソンは振り返ると男爵が落としていたナイフを拾い上げた少女の姿が目に入る。



「――――ジャクソンっ!?」


 大地の声が耳に届くと同時に先に気配に気づいたジャクソンはその凶刄を容易に避けると少女の持っていた手を捻りナイフを捨てさせた。



「―――離しなさいよ、この人殺し!!お前を殺してお父様の仇を私が取ってやるわ!」


「………参ったな。どうするべきだと思う、大地?」


「男爵が死んだ事はまだ公表できへん……可哀想だが、その子を連れていくしかない」


 その後もキーキーと騒ぐ少女の首を打ち据えると彼女は容易に意識を手放した。そのまま少女をおぶい大地は男爵の亡骸を担ぐとそのまま部屋から出ると、予定していた通り隣接した食糧倉庫側から外に出てイフリー達と合流する。



「――ちょっと、2人とも遅いわよ!」


「悪い……男爵の確保に失敗した。遺体を運ぶから、脱出路まで先導を頼む」


「弱ったわね。ところでジャクソン、"ソレ"は何?」


「男爵の死を見られたて、やむ得ずだよ」


「ハァ……これじゃ私たち本当にただの悪党だわ」


 深い溜息を吐くイフリーに大地が苦笑いをしながら何処か悲しげに答える。


「元々オレ達は正義の味方じゃ無い。自分達の利益やエゴの為にこうしているんだ。それが例え、悪だと言われるとしてもな」


「そうだけど……自分が悪だって思っていられる程、人間て強くはいられないものよ………」


 イフリーのその意味深な呟きに改めて考える。復讐者の末路がどうなるかなどは自分でも分かっていたつもりだったが、実際にそうなってみると居心地の悪さを隠し切れない。


 この人殺し……か………


 例えどんな非道な人間であったとしても父親を殺されたこの子にとってジャクソンは虐殺を行った騎士団の連中と何も違わないのだろう。自分の考える正義を行う為に他人にとっての悪を成すことになるなんて……まったく、何とも当然で馬鹿げた話だ。


 だが、それでもせめて自分の周りの人間だけでも、守ると決めたのだ。それが人殺しやエゴイストだと言われたとしても……

 

31話目、1週間も遅れてしまいました~相変わらずの遅書きなのです(ノД`)


今回は厨二分全開でお届けしました〜〜。


実は別にもう1つお話を書き始めているのですが、そっちが楽しくなり過ぎてはいけませんね。。でも、いつかお披露目したいものです(*´ω`*)フッフッフ


PS

今後ともFPSをよろしくです~Σd(゜∀゜d)


6/16 厨二分が足りなかった為、ちょい追加しました。

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