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FPS  作者: N19
第2章 ダークファンタジー編
30/43

FPS episode.29

episode.29――

2014/4/21 クロネ村の古びた教会


 時を置いて落ち着いた後、俺はベルを連れて教会へ向かった。既に騎士団の連中に襲われている可能性もあるが、この包囲された村から逃げるにはそれくらいしか方法が無いと考えたからだ。それに大地やマクベス達はあのヴァラクーダを上手く切り抜けたのだ、そうは簡単にやられはしないだろう信じたかった。


 しかし、教会の近くまで足を運ぶと複数の銃声と共に人間達の叫び声がそこら中に響いている。


「こっちも戦闘中か……正面からじゃ無理だな……でも、あそこからなら………」


 俺は教会でシスター達が利用していたキッチンにある裏口を思い出し、再び音を立てずに森に入ると迂回してそちらへ向かう。そこは木陰に隠れ思った通り人目に付きにくい場所にそこはあった。


「――ベル、こっちだっ!」

「――おいたん。まって、あっ――!」


 その裏口に向う途中、運悪く樹の根に足を取られたベルが転んでしまい、その物音を聞きつけた騎士に見つかってしまう。だが、今は教会に向かうしか生きる術は無い。


「――裏口にも異端者がいたぞ、殺せ!!」


「見つかったか……ベル、先に教会へ行くんだ!」

「うぅ……ごめなさい………」


 ベルを起こしてそのまま教会へ走らせるとこちらに向かって来る騎士達と対峙する。しかし、思ったよりも数が多く持っているサブマシンガンの威力では、あの甲冑の装甲を貫通するには足りない。


(……くそっ、数が多すぎるな。どうする………)




「ウラァァァーー、死にやがれクソ虫共がぁ!!!」


 しかし、徐々に囲まれこれ以上は無理かと思われた時、周囲に野太い雄叫びを轟かせながら怒涛のように弾丸の嵐が騎士達を襲い、分厚い甲冑に風穴を開けて蹂躙していく。その背後からの声に目を向けると教会の窓から軽機関銃を構えたスノーマンが、イカツイ笑顔を見せていた。


「――スノーマンかっ!? 悪いが、その子を頼む!」

「ヨシッ、分かった。扉のバリケードを退かすまで、時間を稼いでくれ!」


「―――あぁ、任せておけっ!」


 そう言うとスノーマンは家具などで扉を封鎖していた物を退かし始める。俺は残りのマガジンを惜しみなく使い接近戦で近くに居た騎士を仕留めて、もう一人には手斧を投げつけ息の根を止めた。だが、銃声と悲鳴を聞きつけた連中が直ぐに増援に来るのが見えた。


「いいぞ、ジャクソン。今だ、来いっ!!」


 封鎖されていた裏口のドアをこじ開けたスノーマンがベルを中に引き入れ、すかさず軽機関銃で牽制に戻る。そして俺は入れ替わるように教会に走るとボウガンの矢が飛び交う中、扉の中に滑り込んだ。


「―――ハァ……ハァ……あの子は?」


「無事だ…それにしてもクソ驚いたぞ、ジャクソン。お前、クリミナに居たんじゃなかったのか?」

「まぁ、色々とあってね…それより今の状況を教えてくれ」


「お、おう……詳しくは正面にいる大地に聞いてくれ。俺はこの裏口を離れる訳にはいかなくてな」


「分かった、ここは頼む。ベル、行くよ……」


 ベルを連れてスノーマンの居る裏口から正面ホールに行くと、逃れてきた村人達が戦々恐々と身を潜めている。その奥では幾つものバリケードで固められた窓口から、大地とマクベスが外に銃を向けて迫り来る騎士達を迎撃していた。



「――よう、随分と苦戦してる様だな」


「まさか、ジャクソンなのか……お前っ!!」

「ほぅ……戻って来たか、オレ様は信じていたぞ」


 こちらの顔を見るなり対照的な表情を見せる2人に、俺は窓から顔を出さないように側に寄る。


「悪いが、今の状況を教えてくれ」


 大地から聞いたのは、現在この教会が完全に包囲されており、その状況を打開するべく神父のトーマスの案内でケンプとイフリーが隠し通路を先に確保しているという事だった。そして、彼らがその逃げ道の確保がするまで、気取られずにこの教会を維持する必要があるらしい。


「そんな感じで、分は悪いがまだ希望はあるってことや」

「そっか……状況は分かった。何か使える銃を貸してくれ、俺も手伝うよ」


「そう言うてくれると思ったわ。ホレッ、これを使え。マクベスじゃ、どうにも扱えんくてなぁ」


「――フン。 オレ様は狙撃手では無いから当然なのだよ!」


 拗ねるマクベスを背に大地は傍らに置いてあった銃をこちらに手渡す。俺はその銃を構えるとそれが、大地が以前にヴァラクーダで拾ったモノだと気づいた。



「これ……お前のM21じゃないか。俺がスナイパーライフルを使えないのはお前も知ってるだろ?」


「考えがあっての事や。ジャクソンは確か左利きだったよな……お前、利き目も左やないか?」

「それがどういうって……いや、まさか……そういうことかっ!」


 大地の言いたい事にようやく気づいた俺は持っていたライフルを左に構え直してそのスコープを覗き込むと、確かに右目で覗いていた時よりも視界に違和感が無く感じられる。


「正解や……スナイパーライフルでお前の弾が当たらんのは恐らく、右撃ちをしていたからやで。幸い、ボトルアクションなら左撃ちでも廃薬莢が当たる心配も無いやろ」


「お前、俺でも気付かなかったのに、よくこんな事を気づいたな……」

「どれだけ付き合いが長いと思うねん、当然やろ?」


「…そうだな。 だが、大地の銃はどうするんだ?」

「あぁ、オレには新しく手に入れた、このセミオートがあるや。心配せえへんでええ」


 そう言うと大地は後ろに置いてあったMK-14というマークスマンライフルを見せつける。それは俺が貰ったM21よりも近代改修された中距離用の銃で毎回手動で弾を装填する必要も無くより制圧に向いた銃であった。どうやら俺が居ない間の作戦で手に入れたモノらしい。


「頼りになりそうだ」

「――せやろっ?」


 リーダーらしく成長した姿を振舞っていた大地だったが、お気に入りの銃を見せて得意気にする様子に「そこは変わってないな」と俺は笑った。そして、久々の親友との再開に盛り上がっていると大地の言っていた地下の隠し通路から出てきたイフリーが俺を見て驚きの声を上げた。


「えっ、嘘。ジャクソンじゃんっ! ねぇねぇ誰、その可愛い子? 触らせてー!!」


「……うぅ……あ…ぅ………」


 そんな騒がしいイフリーが捲し立てる様にベルにちょっかいを出そうとしたが、その勢いに押されたベルが怯える様に俺の後ろに隠れてしまうとイフリーを「むぅ……」と睨んだ。


「騎士団に襲われていたところを助けたんだよ。この子の兄と母親も奴らに殺された」

「えっ!?……ご、ごめん、そうだったんだ………」


 イフリーはバツが悪そうに後ろに隠れているベルに謝ると「やっちゃったぁ……」とため息をついて肩を落とす。ヴァラクーダを切り抜けたヘイトのメンバーの中で紅一点の彼女は陽気なスペイン人であり、いつも明るく場を和ましてくれるが、今回は空振りに終わった様である。



「――それより、何か報告があるんだろ?」


「そ、そうだ! 通路は問題無く使えそうよ。皆一刻も早く退避して、私が先導するから!」


 彼女の報告を聞くと待っていたとばかりに皆はその場を立ち、それに合わせ大地が口を開いた。


「んじゃ、殿はオレが担当するさかい。皆は隠し通路を使こうて先に行きや」

「ちょっと待て、あれだけの数を一人じゃ無理だろ!」


「心配するなや。オレ一人でも……と格好付けたい所やけど、正直に言えばキツイ。頼めるか、ジャクソン?」

「当たり前だろ。 それに奴らには借りもある……」


 その問に先程に受け取ったライフルの弾を装填し、俺は答えると大地はゆっくりと頷く。


「オレとジャクソンは裏口のスノーマンが撤退後、隠し通路に入ったら残りの魔石で入口を爆破する。そんでしばらくは時間が稼げるだろう。むこうに着いた人間は各自マクベスの指示に従ってくれ。気を抜くな、見たところ奴らも馬鹿では無さそうやからな」


 大地がそう各自に指示を出すと皆は示しを合わせた様に一斉に動き、無駄なく自分の役割をこなしていく。ジャクソンもこれからの籠城戦に備え、後ろに居るベルに声をかける。


「ベル、君もイフリー達と先に行くんだ」


「……やだ……一緒…いる………」


「大丈夫、死にはしないさ。頼むから、言うことを聞いてくれ」


「……んん…っ………」


 だが、先程まで良く聞き分けていたベルが、急にグズり俺の袖を掴んだまま首を振り離れようとしない。予想外の反応にどうすれば良いのかと悩んでいた所に横から大地が声を掛けた。



「お前の負けや、ジャクソン。 お嬢ちゃん……そこだと矢の的になるさかい、教壇の近くに隠れや。そこからならジャクソンの姿も見えるし、流れ弾に当たることもあらへんからな」


「――おい、大地! お前っ!?」


 その意図を察したのかベルは小さく頷くと言われた通りに教壇の近くにちょこんと身を隠した。


「あのお嬢ちゃん、見た目に寄らず頑固そうなんでなぁ」

「だからって……危険過ぎるだろ。何かあったら……」


「………だから守るんやろ、あの子を」


 大地はそう言うと挑戦的にジャクソンへ目を送る。


「あぁ、守ってみせるさ……」


 そして、再びスナイパーライフルを構え直すと俺と大地は命を賭けた籠城戦の口火を切った。敵の総数は少なく見ても100に近い。銃火器があるとはいっても、まともに戦えばこちらが負けるのは目に見えているが、皆の逃げる時間を稼ぐだけならばやり様はある。




『―――主よ、我を恥からお救い給へ―――』


―――ダァッン!!!


 詠唱のような一節を口ずさむと、大地が無為に突っ込んで来る騎士の兜の僅かな隙間にヘッドショットを当てる。それはたった1cmにも満たない甲冑のウィークポイントに当てるという離れ業だったが、僅かな期間で大地には随分と腕に差を付けられてしまったかもしれないと俺は目を見張る。


「――ジャクソン、右やっ!」


 大地に促され俺は慣れない左撃ちで構えると、その照準を命知らずの騎士に向ける。


(………落ち着け……先ずは当てるだけで良い)


――――タァン!!


 だが、それは強襲用の盾を構えて突進して来る騎士の頭に当たり、兜が吹っ飛ぶも致命傷には至らない。それでも今まで一度も当たらなかった狙撃が、嘘のように狙った方向に当たった事に自分自身で驚く。


(――これならいける……次は外さないっ!!)


廃薬莢を排出しぎこちないの無い動きでライフルに弾を再装填すると、俺は再び狙いを付ける。



――――タァン!!!


 そして、放たれた次弾は今度は驚くほど素直に騎士の顎を砕き直撃すると、そのまま絶命させた。だが、復讐とばかりにボウガンの矢がこちらに放たれると俺の頰を僅かに掠める。あと少し角度が違っていれば、今ので死んでいたところだった。


「――あっぶねぇ。でも、やれば出来るじゃん、俺……」

「やるやんジャクソン、ナイスや!」


 集中砲火を受けていたところを大地の援護で立て直す。それと同時に地下から足音が聞こえてきたのを確認するとイフリーが顔を出す。


「――大地、村人達も大方逃したわ。後はアンタ達だけよ!」


「おぉ、そうか……んじゃ、裏口のスノーマンに伝えて先に撤収してくれ」


「了解。 悪いけど、もう少し持たせてね!」


 指示を受けたイフリーが裏口までたどり着くと後方で聞こえていた弾幕の音が消えた。そして、巨大な軽機関銃を担いだスノーマンが背中で息をしながらホールに現れると慌ただしく地下の隠し通路に向かう。


「じゃあ、先にズラかるぜ。お前達も早く来い!」

「――2人とも早くっ!」


「あぁ、これで最後や。先行きや、ジャクソン!」

「分かった。大地も早くっ――――」



――――パリンッ!!


 だが、皆が作戦の成功を確信した時、手薄になった裏口の窓から教会の中に投げ込まれたのは翠色に光る複数の魔石だった。そのひとつがホールの中まで入り込み、閉鎖された暗いホールを眩く照らす。


「――まさか、みんな伏せろっ!!」


 大地が声を上げると、皆が物陰に隠れる。しかし、後ろで控えていたベルだけがその意味を理解できず、綺麗に照らす眩い光をただ不思議そうに眺めていた。


「――ベルっ!!」


 それに気づいた俺は覆い被さる様にベルを庇うと次の瞬間、辺りを真っ白にする程の閃光で魔石が爆発し四散する。そして、バリケードとしていた金属などの破片が凶器へと変わり自らの背に突き刺さった。



「――――がはっ!!」


 辺りには焼けた瓦礫が舞い上がり何も見えなかったが、背には信じられない程の熱が帯びて痛みが走り、意図せずに大量の血が口から込み上げた。幸い、庇ったベルには俺を串刺しにしている大きな破片や瓦礫は当たっていない様だったが、自らの血で彼女の髪を赤く染めてしまっていた。


「…ぅ…えぐっ……っ…ごめ…な…さい……ごめん…なさい………」


 目を見開きせっかく泣き止んだ目に再び涙を溜め、ベルはどうして良いかも分からず口を震わせる。


「……っ…そんな顔…すんなっての………」


 血を失い視界が徐々に歪む中で、大地が思うように動けない俺を担ぐと必死で声を掛ける。


「大丈夫かジャクソンっ! こんな所でくたばったらアカンぞ、絶対にお前も連れて行くからな」

「……ハハっ……おおげさ…なんだよ……大地…は…さ……」


「――オイ! 目を開けやジャクソン、ジャクソン!!」

「ちょ、嘘でしょ!こんなのっ―――」


 皆が何かを叫ぶ呼び声も徐々に聞こえなくなっていくと、酷かった痛みも不思議と薄らいでいく。


 まるで灯火が消える様に生気が引くのを感じると、それに抗うことを諦め眠るように目を閉じた。

 


29話目です! ゴールデンウィーク、終わってしまいましたぁ~(涙)


明日からまたお仕事や学校が始まると思いますが、ブルーな連休明けを少しでも和らげる為の暇つぶしに読んで頂けると幸いですΣd(゜∀゜d)ガンバロー


PS

レビューありがとうございました~。感動して涙が……(ノД`)


文才が無く拙い文章なのに読んで頂けて嬉しいのです

これからもお気軽にご感想をお待ちしております♪


それと気がついたら1万PVを超えましたぁ~!本当に信じられないことです。。

これも皆さまのお陰です、これからもFPSをよろしくお願いします!


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