FPS episode.02
episode.02――
2014/7/30 首都アルダート郊外の山村 ――
「なぁ、これだけ探して何も無いんだ。そろそろ別の場所へ当たろうぜ?」
先程の人質救出作戦から数時間後、ジャクソンとクリフはテロリストの思惑を探る為に首都郊外にある世界教のアジトがあった村に来ていた。
「何も無かったで帰れるか、バカ。だから、お前は何時迄もヌーブのままなんだよ」
「まぁ、そりゃあそうなんだけどさぁ……」
建物は朽ち果てた古い教会跡にあったが、別働隊のザック達がここを占拠した際の血と硝煙の匂いが至る所に残っている。テロリスト達はこんな場所を寝倉にしていたらしいが、ゴーストハウスみたいなこの雰囲気は普通の神経なら誰でも嫌がるだろう。
「しかし、何で奴らは使い終わった筈のこの村にいつまでも居続けたんだろうな?」
「そんなの僕が知るわけ無いじゃん。それよりも気になるのは残った魔石の方だ。この村の規模で考えると並みの建物なら跡形もなく消し飛ぶ程度の威力はあるはずだ」
この世界での魔石とは非常に貴重な鉱石だ。それ単体だけで膨大な魔力を含んでおり、純度の高いものになれば数百年はエネルギー資源として利用が出来るという利便性がある。
その価値は元の世界で例えると宝石以上の価値が有ると言えるだろう。
しかし、魔石の利点はそれだけでは無い。その豊富に含まれた魔力を臨界させることで、とてつもない爆発を起こすことが出来る。
それを軍事転用した物が、先にテロリストが自爆の為に使おうとしたアレだ。
だが、そんな貴重な魔石をテロリスト達が安易に使える筈もなく、奴らが使った魔石は人造で作った代物で間違いないだろう。炭鉱で取れる天然物とは違い格段に質は落ちるがそれでも自らで作れるメリットは大きい。
また、その人造魔石の素材となるのは主に生物の魂と血肉である。恐らく奴らはこの村の人間達を生贄として使い、禁呪と呼ばている魔術で魔石に変えたのだろう。
「まったく……胸クソが悪い話だ………」
その証拠に村の至る所には皮膚が焼け焦げ、まるでミイラの様に黒くなった屍が幾つも放置されたまま転がっている。
――痛いィ、死にたくな…タスケ………
脳裏に焼き付いた過去の光景がフラッシュバックする。魔石作成に使われる禁呪は対象の人間に対して、とてつもない苦痛を与えながらその命を喰らい尽くす。その様子はまさに地獄絵図そのものだった。
「……ホント、神もへったくれもないよな」
教会のホールにある大きな十字架の傍には恐らく死ぬ直前に手で付けたであろう血の跡と朽ち果てた屍が残っており、その無念さがひしひしと伝わってくる。
「――――ん、何だ?」
その屍の様子を観察していると血が付いた部分に、一見して装飾にも見える目立たない窪みを見つけた。
(もしかしたら、ココに何か有るのか……)
その窪に手を触れ蛇を象った形を確認する。そこに何かをはめ込む部分があるのを見つけ、ジャクソンは傍らで朽ち果てている先程の屍を隈なく調べる。
「死体あさりとか……狂ったの?死ぬの?」
「妙なこと言うな。それよりコレを見てみ」
ジャクソンはちょうど屍の下敷きとなっていた蛇の装飾が成されている金属製プレートをクリフに見せた。
「――で?」
「まったく……リアクションがつまらん奴だ。ホラ、ここの窪みになっている所に同じ模様があるだろ?つまりはそういうことさ!」
「ワージャクソンサマスゴーイシネ」
「……もう…いいです」
コイツに何か期待したのがバカでした……
って言うか、最後のシネって何だシネって。
ジャクソンは気を取り直して蛇のプレートを窪みにはめる。すると後ろにある教壇がガタガタと音を立て横へズレるように動き出すと地下へ続く階段が覗いた。
「フフン…どうだ、パズルは得意なのだ!」
「どうでもいい……」
呆れ顔のクリフはジャクソンを無視して、ツカツカと先に地下への階段を降りて行く。
その後をついて下るとそこはに上の教会とまったく異なった様相の陰鬱で、気味の悪い手術室の様な部屋があった。
「なぁ、これって………」
部屋の中央には何かの実験体にされた人間が手術台に乗せられている。更に顔に至っては皮膚が剥がされており、正視するのも嫌悪感が否めない状態だ。
「何かの人体実験か……これを見ろ」
クリフから大きなガラスの瓶を投げられたジャクソンはそれを辛うじてキャッチする。
だが、その瓶の中を見て顔をしかめた。
「奴ら、人間の顔を作ってたのか……」
「それも色々な奴のがある」
棚に置かれた瓶の中には複数の人間の顔が浸されていた。それは男の物であったり女の物であったりそれぞれに異なっている。だが、その中に見知った人間の顔をジャクソンは見つけた。
「なぁ、このオッサンに見覚えは無いか?」
「……人質にされていた大臣に似てる」
あのオッサンは帝国の外務大臣であり、昨日人質となっていたのも今日行われる首脳会議の事前打ち合わせの為だ。恐らく本人は各国の首脳が集まる、その会議に出席しているだが……
「偶然にしてはタイミングが良すぎるな……。――まさかっ!」
もし……だ。顔をそっくり変えた世界教の信者が大臣に成り代わり自爆テロを起こせば、混乱どころの話では済まなくなる。恐らく、その事にクリフも気づいたのだろう。一転して、青ざめた表情に変わる。
『――ルイ、聞こえる。ルイっ!』
『落ち着けよクリフ。団長の居る会場は確か魔術を完全に遮断する結界があるって、来る前にザックのオッサンが言ってただろ。多分、今は無線も使えない筈だ』
殊更、団長の事になると普段の冷静さを失うクリフを諌める。そして、打開策は無いかとジャクソンは自分でも驚く程の冷静さで、それを模索する。
「――まて、マリーネさんはまだオンラインみたいだ。マリーネさん、聞こえるっ!」
『――んっ、あージャクソンだぁ。おはゆ~』
寝起きなのか眠気眼の様子で返事が帰ってくる。彼女は騎士団の技術担当兼医療担当をしている才女で普段からこんな感じなのだが、そっちの方面の才能と実績ではこの世界でも並ぶものは居ない。
『おはゆ~じゃないですよ、緊急事態です!キャスターと団長に至急連絡を取りたいんですが、マリーネさんはいま何処に居ます?』
『私は本部でお留守番だよ。他のみんなは、会議の警備に行ってて仲間はずれなのだ~。どしたの?』
それを聞いたジャクソンは、何とかなると判断して今の状況をマリーネさんに伝える。彼女は時折あくびをしながらも、今の状況を彼女なりに理解した様だ。
『う~ん、連絡を取る方法が無いことはないかな。ま、そこらへんは私にまかせて~♪』
『頼みます。 俺たちも直ぐにそっちへ……って、急に何すんだよクリフ!?』
『――バカ、隠れろ誰か来た』
まだ話をしている最中に後ろからクリフに無理やり伏せさせられ、机の下に隠れるような体制になる。
「――いいか、開けた奴を探して殺せっ!」
そんな物騒な事を大声で叫びながら唯一の出口であった階段から複数の男が降りてくるのを見て、ジャクソンは状況を理解する。
この村にはアジト探査の為にクリフとジャクソンの2人しか居ない筈であり、他の騎士団から増援が来るという情報も無い。つまり、この場所に誰かが居るという事はこちらの敵である可能性が高いということだ。
恐らくこの隠し部屋の存在を隠蔽しにでも来たのだろう。まったく、何とも運が良いのやら悪いのやら……
「どうする、クリフ?」
「そんなの決まってる……速攻で皆殺しだ!」
「何とも、頼もしいことで……」
予想通りの答えに溜息を吐くとジャクソンは覚悟を決めて、背負っていたライフルを手に構える。上から聴こえた足音から奴さん達の数は10人程度は居るだろう。
「――ヨシッ、いくぞっ!」
だが、その程度ならこの2人だけでも十分。タイミングを見計らっていたクリフの掛け声と共にジャクソンは飛び出した。
さて、3回めのお話でしたが、いかがでしたでしょうか~?
お話の流れとしてはバトルものというよりは作者が好きな、
攻○機動隊みたいな捜査もののお話をイメージしてます♪
次回は何故、このファンタジー世界に銃があるのか?
等を少し掘り下げていこうとおもってます~(*´ω`*)ノ
PS
200PV、本当にありがとうございます♪Σd(゜∀゜d)
今後ともFPSをよろしくおねがいします!!