FPS episode.28
episode.28――
2014/4/21 クロネ村の入り口付近
クリミナの街を出て半日の道程を戻ると村は以前の安穏とした雰囲気が無残に変わり果てていた。
「…………何だよ…何なんだよ……これ………」
至る所には見覚えのある顔の亡骸が血を流して無残な姿で転がっており、周囲には物凄い死臭が漂っている。その光景はまさに地獄絵図そのものと言えた。
『――オイ、あんなところにも生き残りが居るぞ!』
『――異端者と異世界人は1人残らず殺せっ!』
何が起こったのかも上手く把握出来ず、村を彷徨っていると家屋から返り血を浴びた帝国の騎士達出て来るのが見えた。そして、奴らはこちらを見つけるなり、容赦無くボウガンを撃ち放ってくる。
「クソっ、狂ってやがる…アイツら………」
俺はその矢を躱しながら村を走りぬけるとそのまま森に逃げ込み教会を目指したが、途中でマークとベルに出会った場所へ通りかかり、その足を止めた。
(もう逃げてるよな……いや……まさか………)
嫌な胸騒ぎを覚えた俺は方向を変えて、彼らの住んでいた森の外れにある家へと走る。足が追いつかず、気持ちだけが焦っているのか、それ程は距離が無い筈なのに道のりが随分と長く感じる。
そして、やっとの事で着いた彼らの家は他の家屋に比べれば特に問題は無さそうに見えたが、玄関の扉は不自然に開けっ放しとなっていた。嫌な予感を覚えた俺はカバンからサブマシンガンを取り出し構える。
「―――イヤぁ!!」
だが、既に一足遅くベルの悲痛な悲鳴と共に彼女が家から飛び出したのが見えた。その後ろには小さな彼女を追う、甲冑の大男が長剣と手斧を持ってそれを追っている。
「――クソっ、遅かったか!」
俺は荷物を放り出しベルを追う男に向けMP5を斉射して、それを止めると銃撃に驚き怯んだ隙に飛びつく。
「この状況だっ――容赦しねぇぞ!!」
「――何者だ、貴様ァ!」
そのまま揉み合いとなりながら、俺は全力で甲冑の男を引き倒す。そして、無防備となった男の首に腰から抜いたバリスティックナイフを突き立てた。
「っ……かはぁ……異…世界人…め…ぇ………」
喉を潰された男は血と嗚咽を挙げながら、そのまま絶命した。
「………ハァ…ハァ……怪我は無いか、ベル?」
「う、うぅ……ぃ…たんとお母さぁんがぁ……えっく………」
顔を引き攣らせ、涙で顔をグシャグシャにしながらしがみ付いてくる彼女を見て、俺は頭を撫でてやるとベルは少し落ち着きを取り戻した。だが、俺自身の脳裏には最悪の事態が既に頭をよぎっていた。
「いいか、ベル……俺はお母さん達を助けに行って来る、君はそこに隠れてるんだ」
「……えぐっ……うん………」
こちらの意思が伝わったのかベルは泣くのを我慢しながら頷く。そして彼女が樹の陰に隠れたのを確認すると死んだ甲冑の男が持っていた手斧を拾って玄関の扉を潜った。
――だが、覚悟をしていたとは言え。その光景に冷静さを保つことなど、誰にも出来なかっただろう。
「嘘……だろ………」
玄関の先には剣で切られたと思われる傷で大量の血を流しているマークが苦悶の表情ままで倒れており、その様子から既に事切れているのが分かった。更に部屋の奥には先程と同じ騎士団の男に剣で腹を貫かれ、グッタリとした様子のエレナさんの姿が見える。
「……けっ、このアマが! いちいち手間を掛けさせやがって………オイっ、ちゃんと逃げたメスガキは始末したのか………って、テメェ誰だっ!!」
死んだもう一人の男と勘違いした騎士団の男が吐いたその言葉で俺はこの状況に至った経緯を理解する。そして、この眼前の害悪を始末する以外には、既に何も考えられなくなっていた。自分でも恐ろしい程早く身体が動くと、手に持っていた斧を男に振り下ろし男の身体を引き裂く。
「ぐっ!? テメェ何をっ、ギィヤァーーーー!」
「―――貴様がァァァァァァッァ!!!」
首を深く抉られた男は大量の血を吹き出しながら倒れ込む。そして、まだ辛うじてその息が残っていたが、男にとってそれは不幸以外の何物でも無かった。
「や、べ……ギャ!…べて……ぐぇ!!……ぁべ……っ…………」
「死ねぇ!! お前みたいな奴は死にやがれぇーーーーー!!!」
何度も何度も何度も自分の手から斧が振るわれ、その度に血と肉片が飛び散る。そして気がついた時には既に男は人間の形をしていなかった。これ以上は復讐すらも叶わないと俺は斧を手から落とす。
「くっ…そ……俺のせいだ…………くそがっ…………」
目の前の憎悪の対象が死に行き場を失った怒りは自分自身へと向いていく。
(何が冒険者だ……何が正義の味方だ……その結果がコレじゃないか……)
「……うっ……ぁ………」
「――エレナさん!!」
虚ろな表情で辛うじて息をしているエレナさんに声を掛けるが、既にその目には以前の様な光は無い。
「………り、来て……くれた……ジャッ…ク………」
「っ…すまない……もっと早く来れなくて………」
俺に気づいた彼女は血だらけとなったその手で頬に触れると、安心した様に表情を和らげる。
「……ベルを…あの子を……お願い…ね………」
そして、そのまま力を手放すと彼女は静かに息を引き取る。
「………っ……くそぉぉぉぉっ―――!!!」
激情に震える感情を床に血が出るほど何度もブツける。自分が狂いそうになるのをその痛みくらいでしか辛うじて抑え込むことが出来なかったからだ。
(……マーク……エレナさん………ゴメン……ゴメンな………)
そしてその感情が収まった頃、既に冷たくなっていたマークをエレナさんの側に寝かせ、俺は2人に一瞥してベルの元へ戻った。こんな時にどんな顔をすれば良いかも分からず、俺は重い足取りで進んでいるとこちらに気づいたのか、彼女は隠れていた幹の影からゆっくりと出てきた。
「…おぃたん……お母さんは………」
「………すまない」
不安を押し殺しているベルに声を掛けられた俺は家族を失った彼女に慰めの言葉すら掛けられずに俯く。その様子にまだ小さいながら全てを悟ったのだろう、ベルの頬に大粒の涙が溢れた。それでも泣き叫ぶ事はせずに必死で堪らえている彼女の表情があまりに痛々しく胸に突き刺さる。
「……ぅ……ぅっ…………」
その小さな身体で耐えるにはあまりにも過酷な現実にせめてもと震える身体を抱きしめてやると、彼女は安心した様にようやく胸に顔を押し付け、声を挙げて泣いた。
(……せめて……この子だけは守ってみせる………)
心の中で深くそう誓うと後は唯、その涙を受け入れる事ぐらいしか俺には出来なかった。
そして自分の無力さを呪い、自身の甘さを捨てることを選んだのだ――
28話目です☆ ギャー! こんな時間に更新になってしまったぁー!!
今回の話はグロ注意ですよ!……え、遅いって? 知りませんw
正直、この話は入れようか最後まで迷いましたが、ジャクソンの意識が大きく変わってしまう出来事であった為、あえてこういう形にしています。。
子供が無残に死んでしまったりと色々不快に感じられた方は申し訳ありません!
ただ、この先はもっと過酷になっていく予定ですので、お許しあれ。。
PS
次話は早めにアップする予定です! これからもよろしくですΣd(゜∀゜d)




