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FPS  作者: N19
第2章 ダークファンタジー編
24/43

FPS episode.23

episode.23――

2014/3/19 ヴァラクーダ強制収容所


 それは想像以上に大規模なものとなった。命を顧みない囚人達は大きな荒波となり看守を飲み込むとこれまでの怨み返しであるとばかりに所構わずに殺しまくる。


『――殺せっ!こんなクズ共に生きる価値はねぇ!』

「や、やめろ!ギ、ギャーーっ!?」

『――コッチにも生き残りが居るぞ、やっちまえ!』

「い、命だけは…私には家族が――ひぎぃ!?」


 剥き出しの殺意によって、血や肉塊が飛び散る有り様はまさに無法地帯と言ってよかった。収容所の施設は次々と壊されてゆき、散々に殺し尽くした囚人達はそれぞれが思うままに壁の外を目指し逃れていく。


「……ここまでは計算通りや。ステップ2……ジャクソン、メンバーを集めて目的の場所に行くで!」

「――あぁ、了解だ!」


 そんな惨劇を尻目に俺たちはマクベスの計画通り、看守達が利用している更衣室を目指す。


 計画はこうだ。囚人達を一斉蜂起させた後、一時的に所内は混乱するだろう。だが、それも何時までも続くとは限らない無い。恐らくはあのバッドマンの様な化物の他に必ず制圧用の部隊がここに来るはずだ。


 そうすればマトモな装備の無い囚人達はあっという間に制圧され、ここを逃げ出す事など出来ない。


 だから、折を見て他の囚人達から離れる必要があった。罪悪感は無くはない。だが、他人の事を気にする余裕も無い。生きる為には割り切る必要があるのだ。


「本当に大丈夫なのか、これでさ……」

「あれを見ろて……バッドマンや」


 看守達の私服に着替えながら窓越しに見える裏口を覗くと巨大な斧を担いだバッドマンが、群がった囚人達の前に対峙していた。その周りには縦や横に真っ二つにされた人間の身体がそこら中に散らばり、囚人達はそれ以上前に進めなくなっていた。


「うっ……ミンチよりひでぇ………」

「ああはなりたくあらへんな……」


 死体が次々に量産され、血の風呂(ブラッドバス)になったその光景を見ながら俺たちは戦慄を覚えた。


「――ヨシ、皆揃ったな!」


「いや、途中でアセムとダリルが看守にやられた」

「フン。こんな場所で死ぬなど、元から生きる価値が無いと言うだけだ。予定通り武器庫に向かうぞ!」


 別行動していたメンバーと共に俺たちは合流するとそのまま武器庫に向かう。そして、先に監視していたスノーマンからの合図を待って扉の付近で突入に備える。中からは人の声が微かに聞こえてくる。


「――早くしろ!囚人達が来ちまうぞっ!」

「分かってる。ここの鍵は3重なんだ、開けるだけで……ん、くそ…ヨシ、開いたぞ!」


 中には看守が2人居るようで、扉が開くと安堵の声をあげていた。そして、今がチャンスであると最先鋒の大地が手で合図を送り俺たちは中へと突入した。


「――な、何だ貴様ら!ま、まさかここの武器を!!」


「その通りや。態々開けてくれて、ご苦労さん!!」

「ま、待ってくれ……武器はやる。み、見逃してくれ……」


 既に俺たちに取り囲まれているのに気づき顔面蒼白の看守達はそう命乞いをすると大地は気にする様子も無く、殺すことも無いとあっという間に2人を張り倒し気絶させる。ご愁傷様……


「しかし凄いな……こんなに銃が置いてあるなんて……」


 武器庫の中には訓練中に扱ったものから、ゲームでしか見たことのない銃もいくつか並んでいた。その数からすると死んだ仲間の分を合わせた分とちょうどで、その種類も何処か見たことのあるものばかりだ。


「各自、身の丈に合ったのを選べ!余ったモノは予備として持っていくぞ」


 そういうマクベスは誰より先に置かれていたサプレッサー付きのショットガンを手に取ると、誰よりも嬉しそうにニヤつきながら銃を構えたりしている。


「……大地はどれにするんだ?」

「オレはもちろん、これやっ!」


「え~と……確かM14だっけソレ?」

「違うて。よく見てみろ、これは狙撃用に改修したM21や。しかも専用のカスタマイズモデルやで!」


 大地の言うM21という銃はジャクソンも知っていた。CODの中でも、某ギリースーツの大尉が使っていた有名で狙撃精度に信頼のあるスナイパーライフルだ。


「お前は何にしたんや、ジャクソン?」

「この中なら、これかな……」


 俺が選んだのはMP5というサブマシンガンだった。元々はジャクソンがゲームで最初に使っていた銃で、基本にしてその性能は優秀で扱いやすかったからだ。


「MP5K(クルツ)か、意外なチョイスだな。てっきり、スナイパーライフルを使うと思ってたけど」

「まぁね。そもそも実銃とゲームじゃ勝手が違うし、もう少し使いこなせないと実戦では使えないよ」


「そやな、確か訓練の時はえらい酷かったもんなぁ」

「それは言わないでくれ、軽くトラウマなんだ……」


 ジャクソンは肩を落としてうな垂れると大地が笑った。彼の言うとおり狙撃訓練時に俺は皆の中で、唯一1発も的に当てることが出来なかったのだ。狙撃もダメで射撃も並である今の俺に出来るのは、せいぜい下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると弾をバラ撒く事くらいだ……。


「じゃあ、これも持っておけ。多分、お前のやで!」

「――お、バリスティックナイフじゃんか!」


 俺は大地からナイフを受け取るとそれを繁々と眺めながら訝しげに返す。


「どうもここにはゲームで使っていたモノが揃ってる気がする……ここ本当に異世界なのか?」

「どうやろう。ひとつ言えるのはこの世界がFUBARフーバーだってことやな」


 大地はそう皮肉ると俺も苦笑しながらそれに頷いた。


「――よしっ、看守達は裏口で他の囚人たちに気を取られている。手薄になっている正面口に向かうで!」


 マクベスが考えた通り囚人達の波は最初は良かったものの、外からの増援が来たところで次第に鎮圧され始めていた。だが、正面口には未だ少数の看守しかおらず、俺たちはそこを容易に制圧することが出来た。


「上手くいったな、マクベス。後は看守に扮して外に出るだけだ」

「やった。オレたち、もう自由なんだ!」

「スゲーぞ!あなたが神かっ!」


「まぁ、オレ様の計画だからな。この結果は当たり前なのだよ!」


 皆からの賞賛に満足そうに腕を組むマクベス。相変わらず偉そうだが、事実は認めざる得ない。


「まぁた、マクベスが偉そうにしてるよ。大地が仕切んなきゃ、ここまで上手くいってないだろ?」


 皆が言うとおり。マクベスは戦術戦略においては適う者無しでも戦闘ではメンバーの中で最底辺だった。今回の作戦が成功したのも一重に実行リーダーであった、大地のお陰だと言うことは皆わかっていた。


「フン、そんなこと分かっておっ――」


「――クソ豚共め、調子に乗るな!!」


 だが、調子に乗って警戒が緩んでいたマクベスへ死角に隠れていた1人看守が長剣で斬りかかる。しかし、それにいち早く気づいた俺はマクベスの首に長剣が届く前にサブマシンガンのトリガーを引いた。


――ダダダダダダァン!!!


 その大量に放射された銃弾をもろに受け、看守は血を飛び散らせながら蜂の巣となり倒れた。


「……はぁ……はぁ……油断しすぎだ…マクベス………」

「た、助かった……のか、オレ様は……」


 突然の事に頭は真っ白になり、全身が熱くなる。鼓動は波打ち、意図せずに震える手を今のは仕方ないと必死で自分を言い聞かせる。血だまりに突っ伏し倒れている看守はジャクソンがこの世界で最初に会った奴で罵倒された以外の記憶は無かったが、それでも人ひとりの命を奪ったのには変わりない。


 ゲームなんかじゃないんだ、コレは……でも、何でだろう……。


 その感覚も長くは続かず、次第に動悸も収まっていた。正直に言えばこんな事を仕出かしたのだ。自分自身、罪悪感などに苛まれるとでも思っていたが、それすら何も感じない。ただの人間…いや、ろくでもない奴が1人死んだだけ。そう割りきれてしまう自分に気づいて、俺は酷く落胆した。


 気づかないうちに俺も、もう感覚が麻痺してるのかもしれないな……。



「……オ、オレ様とした事が不覚であった。ジャクソン、褒めてやるぞ。今日からお前は下僕2号から二等兵に昇格だ。ありがたいと思え!」


「…ハイハイ、ありがとよ………」


 ハプニングはあったものの最終的に収容所を脱出が出来たのは俺と大地の2人の他にマクベス、イフリーとケンプ、スノーマンの6人だった。俺たちはその後、脱獄を幇助した世界教という教団と合流する為に手書きの地図に記された小さな村の外れにある古びた教会に無事たどり着く。


そこで俺たちは更に自分たちの運命を翻弄される事になるとも知らずに……

 

23話目です!今回は強制収容所からの脱出編でしたが、色々と試行錯誤でしたがいかがでしたでしょうか? 次回からいよいよ世界教という教団での活動になってきます。テロはダメですよ、ぜったい!!


ちなみにFUBARっていうのは兵隊のスラングで、何から何まで、めちゃくちゃで酷いと言った感じですね。スラングって、奥が深いですわ~。


PS

かなり表現に分かり辛いところが多々あったので、実は先週に1話を大幅に修正しました。これからもちょくちょく過去話は修正して行く予定です。


これからもFPSをよろしくお願いしますヽ(゜∀゜ゞ)

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