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FPS  作者: N19
第2章 ダークファンタジー編
23/43

FPS episode.22

episode.22――

2014/8/19 世界教のアジト 尋問室


 既に何時間が経っただろうか……。ジャクソンへの拷問は未だに続いていたが、それでも一向に口を割らず業を煮やしたマクベスは自白剤を使い追い込もうとしていた。


『――そろそろ薬も効いてきた頃だな』


「……く……っ………」


 割れるような頭痛と混濁していく意識の中、ジャクソンはガラス越しでニヤつくマクベスを睨み付ける。だが、奴はそれを悪びれる様子も無く部下に指示を出すと、見たことも無いヘッドギアの様な機器をジャクソンへ強引に付けさせた。


『ちょっとした趣向を始めよう。この装置は人間の記憶に干渉する事が出来る様でな、お前がいつまで経っても喋らないから、オレ様が直接記憶を見させて貰う事にした』


「……それ……プライバシーの…侵…害だろ………」


『ほぉ、まだ冗談を吐く余裕があるとは……相変わらずシブとい奴だ』


 マクベスがつまらなそうに顎を上げると横に居た男が何かを始めた。何かの錬金術だろうか設置されている水晶盤に酷いノイズ混じりの映像が映し出される。それだけでは判別が難しいレベルだが、目を凝らして見るとそこはジャクソンにも見覚えのある場所だった。


「……ヴァラ…クーダ……」


『なるほど、ヴァラクーダの収容所か……確かにオレ様たちの戦いは彼処から始まった。あの力の得た理由を知るのも、また一興ではあるか……』


 薬物と魔術による強制的な侵食により薄くなる意識は、徐々に目の前の映像へと引きずり込まれて行く。


「……俺は……あの時………」


 そして、視界は完全にその映像に同化すると過去の情景が映画の様に動き出す。




――それはまだ、この世界に来たばかりの頃だった。


 死の淵から目覚めた俺は見知らぬ独房の中に入れられていた。元の世界ではまともに動けないほど衰弱していた筈の身体は嘘の様に軽くなっており、今であればフルマラソンでも走れそうな程、回復していた。


「――起きろ。貴様、いつまで寝ている!」


 如何にも看守といった感じの男が鉄格子をガンガンと警棒で叩いてジャクソンを起こす。寝ぼけ眼のまま周りを見渡すと、そこはベッドと用をたす為の壺が一つだけが置かれている酷く劣悪な独房だった。見慣れた物と言えば自分の着ている部屋着くらいで、首には見慣れないドッグタグの様なモノも掛けられていた。


それには自分のイニシャルである『J・S』と刻まれている。


「………えっと、ここ何処?」


「――寝言は寝て言えクソ豚が!人間様に口を聞くとは、随分と礼儀を知らない奴だ。ここが貴様ら異世界の豚共を飼っている小屋だと覚えておけっ!」


 豚? 異世界?っていうか、なんで日本語なんだ??


 強面の看守は明らかにラテンっぽい印象の外人なのだが、それに反して流暢な日本語で酷いスラングを喋ってくる。しかし「なぜ、日本語を喋っているのだろう?」という疑問を問う暇もなく、ジャクソンはそのまま外へ出された。独房の外は大きな石壁に囲まれた収容所であり、俺は背中を乱暴に突かれながら小学校の校庭ほどの大きさの広場に連れて来られた。そこには国籍や肌の色も違う人間たちが複数集められていて、その中には親友である大地の姿もあった。



 更に集団の中で一際ゴツい図体のオッサンが、耳が割れそうになる程大きな声で皆を罵倒している。


「――喜べゴミ虫ども!今日からこの俺のリサイクル活動に水を差すゴミがまた増える。ここに来た時から既に死に掛けていたゴミの中のゴミだが、俺はそれを差別しない。何故ならば貴様ら異世界人はファグもビッチも皆、等しく価値が無いからだ。分かったかっ!!」


「Sir, yes, sir !」


 まるでどこぞの戦争映画の新兵いびりの様な光景に俺は若干引いていると、こちらを見つけたオッサンが目を血走せながら近づいて来る。


「――貴様が3日もサボったクソ寝ぼすけ野郎か!!そのクソッタレな名前を名乗れっ!」


「……ジャ、ジャクソン…」


「――声が小さい!!いいか、わたしがここの主管のバッドマンだ。 話しかけられたとき以外は口を開くな。口でクソたれる時は前と後に“サー”と言え。分かったか、このクソっタレめっ!」


「さ、さぁ〜、いえっさぁ〜?」


「――なめてるのか貴様!玉を落としてきたか!」


「アグッ――」


 今の状況が飲み込めず戸惑う俺の腹に容赦無くボディーブローが振るわれる。一瞬、息が止まりかけたが、うずくまって何とかその痛みに堪える。その後も罵倒や鉄拳制裁を受けながら、訳も分からず妙な戦闘訓練を受けさせられ、それに必死で耐え続けた。訓練の終わり頃には全身打撲や打ち身だらけになっていたが、不思議な事にしばらくすると痛みは引いていた。


 その夜、独房から晴れて相部屋へ移動となった俺は先に檻へ入れられて居た先輩に声を掛ける。


「……ジャクソンだ、よろしく」

「――よう、朝の寝ぼすけ野郎だな。オレ様と同じ部屋とは運がいい、今日からお前を下僕2号としてやろう」


 いきなり下僕ですか……それにオレ様とか言ってしまう辺りどんな奴かお察しだったが、こんな状況では「郷に入れば郷に従え」が正しいのだろう。


「……ハイハイ、ありがとうございます。所で先輩の1号さんはどこに?」

「昨日、逃げ出そうとして死んだよ。使えん奴だ……」


 こんな、最初からトンデモな奴がマクベスだった。


 見た目はメガネで神経質そうな感じではあるが、中身は自己中と厨二を拗らせた感じの残念な奴だった。しばらくして分かったのはコイツもCODのプレーヤーで、本人が「知識では負けんのだよ!」という通りに戦術・戦略についての頭の切れと弁舌は本物であり、只者ではない事は理解できた。


まぁ、極度の虚弱体質以外の部分を覗いては……


 それから数週間、バッドマンによる訓練は続いた。内容は兵士としての戦闘訓練がメインで暗殺の仕方や何処から持ってきたのか、様々な種類の銃の扱い方等多岐に渡った。


 その中で分かったのは彼らが帝国と呼ばれる国の人間であり、ここは異世界人と呼ばれている俺たちみたいな人間をこの収容所で訓練と称して迫害しているという事だ。また、彼らが俺たちを兵士として利用しようとしているのは明らかだったが、具体的には何もやらせようとする様子も無く、ただ虐待される日々が続いた。


 いつ終わるとも知れないストレスに耐えきれず、気が触れ自分で頭を壁に叩きつけ死んだ者も1人や2人では無かった。収容所から逃げ出そうとした者は捕まると見せしめの為、皆の前で腸を切り裂かれ絶命させられた。明日は自分かもしれないと俺たちは毎日を震えて過ごした。こんなとこで、死にたくないと……。



 そんなある日、いつもの広場へ集められた俺たちはその異様な雰囲気に嫌な予感を覚えていた。



「なぁ、大地。アレなんだろう……」

「さぁな。どうせロクな事じゃあらへんやろ」


 バッドマンによって連れてこられたのは帝国に渾名す罪人だという男だった。目隠しをされ、俺たちの前に膝まづいたその男は酷く怯えていた。


「――コイツは我ら帝国に楯突く逆賊だ。コイツらが我ら愛する帝国市民を日々脅かしている。実に嘆かわしい。さて、そこでだ……我らの不安を取り除いてくれるヤツはどいつだ?」


 手に持っている銃をチラつかせるバッドマンは恐らく、あの男を殺せと迫っているのだろう。その場に居る皆はそれを察すると目を逸らし、場は沈黙に包まれた。


「どうした!何故、帝国を救う栄誉を自ら手にしようとしない。ならば、この私自ら貴様ら中から選ぶとしよう……ヨシっ、ジャクソン、貴様が殺せ!」


「――なっ、俺ですか!?」


 そんな状況の中で選ばれたのは、偶々バッドマンと目が合ってしまった俺だった。奴は持っていた銃を無理やり手に持たすと目隠しされた男の前に蹴り飛ばす。


「……い、嫌だ……殺さないでくれ」


 目隠しされた男は自分が殺される事を察したのか、先ほどよりもガタガタと震え泣き叫ぶ。


「…こんなの出来っこない………」


「――ヤレ!でなければ、お前の首を落としてやろう……さぁ、どうしたんだ、ヤレッ!!」


 背後にいるバッドマンがサーベルの様な物を腰から抜くとそれをこちらに向ける。今まで経験からコイツが俺の首を落とす事くらいは容易いだろう。


 そう、元から選択の余地なんて、無いのだ。


「…分かった………」


 俺は銃をゆっくり前に向ける。覚悟なんてまったく出来ていない……でも、やらなきゃ自分が殺られる。


「…やめてくれ……死にたくないっ!!」


 その殺気を感じ取ったのか、男は更に声を強める。 こっちだって、見ず知らずのお前なんか殺したく無いさ。でも、これしか方法が無いんだ、許してくれ………。


「――時間切れだ、ゴミは所詮ゴミだな……」


 バッドマンは目を見開きサーベルを振り上げる。


「――クソっ、クソぉぉぉぉ!!」



――――タァッン!!!


 辺りに響く乾いた発砲音。それと共に目の前の名も知らない男の命が消え、人形のように力無く倒れる。


「……あっ……あ………」


 ジャクソンは目を疑った。何故なら手に持っていた筈の銃は直前に自身の手から離れ、横に居た大地がその代わりに引き金を引いていたからだ。


「――っ、大地、お前………」


 その場に居た皆は固まり、バッドマンはふざけるなと大地を殴り付け、胸倉を掴んだまま恫喝する。

 

「――貴様ぁ!俺はコイツに殺せと命じた筈だ。何故、勝手な事をしたのだぁ!!」


「サー、申し訳ありません、コイツに我ら初の手柄を横取りされたく無かったからです。サー」


 あくまでも冷静に大地はそう答えるとバッドマンは大地を突き飛ばし、それ睨みながら腕を組む。


「――フン!クソみたいな顔だが、度胸はある様だな。お前の班のリーダーは誰かっ!」


「サー、スノーマンです。サー」


「ヨシッ、スノーマンに代わり今日からお前がリーダーをヤレっ!ジャクソンはコイツにケツの拭き方から扱いて貰え、分かったなっ!!」


「「サー、イエッサー!」」


 バッドマンはそう言うと1人、肩を強ばらせ官舎へ戻った。


 突然の事に俺は放心から醒める事が出来なかった。恐らくバッドマンは人を殺したという事実を皆に植え付け、もう引き返す事を出来なくさせたのだろう。俺は……大地にそれを押し付けてしまったんだ。


「…すまない。俺の代わりに……」


 俯く俺の背を大地は叩くと雨が振りそうな灰色の空を仰ぎながら呟く。


「……自分の為じゃ、人は殺せへんて。だからお前を助ける為に手を汚したんだ。それでええやろ?」


「……あぁ………」


 銃を持った大地の手は微かに震えていた。それを見た俺はそれ以上、何も言えなかった。




――1ヶ月後


 日々続く理不尽にもう身体も精神も限界に達していた頃、各班のリーダーとなっていた大地とマクベスは彼らを筆頭に綿密に練り上げた脱走の計画を実行に移す。


 マクベスが作り上げた驚く程に狡猾で大胆な計画はジャクソンや大地を含め、生きる希望を失いかけていた俺たちを奮い立たせるのに十分だった。自分は参謀で良いとして、皆をまとめたマクベスは実行の(かしら)に先日の件で信頼を受けた大地を置き、帝国の独裁に抵抗しているという連中の協力を受けて、ついに決起した。


「――同士諸君、我々に残された道は最早戦って死ぬか、このクソみたいな監獄を出て自由を得るしか無い!皆、今こそ解放の時である! その第一歩を踏み出すのだ!!」


『『『 ――урааааааааа!! 』』』


 マクベスの演説により鼓舞された皆々は様々な方法で用意した自分の武器を手に取り、狂人の様な雄叫びと共に己の覚悟を示す拳を突き挙げる。 こうして、俺たちの復讐劇が始まったんだ……。

 

22話目です! 今回から、いよいよ本格的に2章開始です(*´Д`)


過去のお話にシフトしていく形となりましたが、自分で作った筈の色々な設定が縛りとなり、整合性を保つのが中々難しいのです。。お偉方にはそれがry…


えぇ、これからも2週間に1回の更新ペースになるイイワケです(ノД`)


PS

ちなみに「――урааааааааа!!」とは「ウラー!」と読みます。

結構有名なので気になった方は、ググってみてね?


これからもFPSをよろしくお願いしまーすΣd(゜∀゜d)

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