FPS episode.19
episode.19――
2014/8/12 スフィーダ伯爵邸 尋問室
「………このゲスめ……殺すなら、早く殺せ」
扉を開けて早々、ジャクソンはそんな言葉で罵られた。ルイが監禁されている尋問室の前でジャクソンはタメ息混じりに肩を落とし、誰かさんと勘違いしているだろう彼女に自分の姿を見せた。
「ヒドイな、せっかく助けに来たのにそれかい?」
「――お前、ジャクソン……なのか」
ルイは驚いた様子を見せたがスティングレーの仕業だろうか、拷問用の椅子に座らされ抵抗が出来ない様に幾重にもベルトで身体を縛られていた。更に腕には注射の痕も見受けられ、彼女は虚ろな表情をしている。また、上着も引き裂かれおり、何かセクハラされたのは容易に想像ができた。
まったく、何処までテンプレ通りなんだか。スティングレーの奴は……。
「ザックにここだと聞いてね。オッサンも家族を人質に取られていたんだ、大目に見てやってくれ」
ジャクソンは全て知っていてあえて今までの経緯には触れずにそう言ったが、ルイにも思う所があるのだろうか、逆に彼女を厳しい表情に変えさせた。
「……私だって、わかっている。ザックが私欲で動くものか……だが、彼のした事は許せるものじゃない」
どこか納得行かない様子のルイは拗ねた様にジャクソンから目を逸らす。例えどんな事情を加味したとしても、そのショックは大きかったのだろう。長年、戦場を共にしてきた戦友に裏切られた彼女の気持ちは分からなくも無い。
「随分と狭量なんですね、団長が聞いて呆れます。貴方がここでのうのうとしている間に先輩達がどれだけ苦労したか、教えて差し上げましょうか?」
その様子を外から見ていたシャーリーは部屋に入ると敵視を込めた目で、そんな辛辣な言葉を浴びせた。彼女がそのようにルイに対して思っていたとは知らなかったジャクソンは目を丸くする。
「確かにそうだな……シャーリー・アプラス。だが、お前こそ世界教の犬の分際でそれを言うのか」
だが、ルイもそれに負けず睨み返すと、知らない筈のシャーリーの正体を吐き捨てる様に口にしたのだ。
「ほぉ、知っていたんですか……」
「尋問の際にスティングレーがご丁寧に教えてくれたのさ、世界教の司祭リヴ・サーヴェイン」
「……一体、彼は何処まで愚かなのでしょうか」
心底呆れ果てたという様子でシャーリーは肩を落とす。スティングレーの奴が教団でも厄介者だった事が彼女のその態度で察することが出来た。しかし、それよりもジャクソンを驚かせたのは、ルイが今口にしたリヴ・サーヴェインと言う名前だった。
「そんな、まさか……君が………」
ジャクソンが知っているのは世界教の実質的なテロの首謀者の1人で、数々の非人道的な行いから"血濡れの魔女"と呼ばれている事だった。帝国の最重要暗殺対象にも指定されているが、今まで公に顔を晒した事は無く、その正体については今まで謎に包まれていた筈だ。
ジャクソンは改めてシャーリーの顔を見るものの、彼女があの悪名高い魔女であると言うことを俄かに信じがたいというのが本音だった。
「……今更、言い訳はしません。ですが、私の素性など今この場では些細な事ではありませんか?」
「――些細だと!貴様の所為でどれだけの人間が無意味に殺されたと思っている!!」
まるで水と油と言った感じで二人は売り言葉に買い言葉とヒートアップしていく。「この2人、こんなに相性が悪かったのかよ」と慌てて止めに入ったジャクソンだったが、言い争う彼女達に「邪魔するな!」とばかりに無視されてしまう……が、それに負けるかとジャクソンも諦めない。
「オイ、2人共いい加減にっ――」
――ワーニング!!爆発まで残り10分です、総員は直ちに退避して下さい。繰り返します。爆発まで残り10分です、総員は直ちに退避して下さい。
だが、そんな膠着状態を破ったのはジャクソンでは無く、爆発まで残り時間を報せる警告だった。2人とも流石にそれで我に返ったのか、ようやく言い争いが止み、ジャクソンに顔を向ける。
「チッ、仕方がない。今は目を瞑ってやる」
「止む終えませんね、一時休戦です」
「……ハ、ハハッ……」
その様子にジャクソンは苦笑しながらも大人しくなったルイの拘束を手早く解いて彼女を解放する。未だシャーリーとはビリビリと火花を散らして不満顔だが、そこはジャクソンが間に入りながら上手く収めた。
そして、スティングレーが律儀に隣の部屋に置いていたルイの装備品を回収するとザックから聞いた合流ポイントへ3人で向う。
途中で何体かのベルセルクに遭遇したものの、本気を出したシャーリーと本調子では無いがそれに負けじとするルイによって瞬殺されていく。今までの苦労は何だったのかと落ち込むジャクソンだったが、お陰であれよと言う間に脱出口付近の合流ポイントに付く事が出来た。
「――よっ、待たせたな!」
先に着いていたザック達を見つけジャクソンは声を掛けると彼らは各々に出迎えてくれた。そんな中で、ルイは真っ先にザックの前まで詰め寄ると見上げる様に彼を睨みつけた。その状況に圧されたザックは顔を引き攣らせながらも口を開く。
「……ルイ、すまなか――ぐぉっ!」
しかし、それは神速の速さで振るわれたルイの拳で中断された。世界チャンプも顔負けのボディーブローがザックの溝内に食い込んでいる。
アレは痛そうだ……ご愁傷さま
「ジャクソンから全て聞いた。これで相子にしてやる……ここを出たら、2人を探すぞ」
ザックはむせ返りながら「あぁ、すまない……」と頭を下げる。ルイの不機嫌な表情もそれで戻ったが、後ろに居たリックとベイダーは「何かあったのか?」といった感じで驚いていたが、ルイはその問いには答えなかった。
「まあな……よし、時間がない皆ここから出るぞ!」
ルイは号令を掛けると横目でシャーリーを促した。その視線に気づいた彼女は「ハイハイ……」と嫌々前に出るとジャクソンに説明を始めた。
「先輩、マスターキーはお持ちですよね?そこの鍵穴に刺してみてください。暗証番号は115115です」
やけに重厚な扉の横にあるコンソールの様な水晶盤にジャクソンがマスターキーを刺すとパスワードの入力画面が表示された。そこにシャーリーから教えられた数字入力する。
「これで良いのかい?」
「はい、開くまで少し時間がある様です」
彼女の言う通り扉が重々しくゆっくりと左右に開いていくと大きい水流の音が耳に入ってくる。扉の間から中を覗くとそこには大きな滝と防波堤があり、大型のボートが1隻停泊しているのが見えた。
「すごいな。アレ、本当にボートじゃないか」
「えぇ、異世界の設計を使って製作したそうですよ」
得意気に話すシャーリーにジャクソンは「なるほど」と感心し頷く。それを傍目で見ていたルイは鼻を鳴らして、面白く無さそうに声を上げる。
「――ぼやぼやするな、準備を始めるぞ!」
若干、八つ当たり気味な感じではあったが、皆は一斉にボートを出す準備に掛かる。幸いボートは小型の魔石を動力源としており、直ぐにエンジンは動いたが、準備を進めていたリックから悲鳴があがる。
「――オーマイガッ!オイ、奥に水門があるぞ!」
「あれは流石にこじ開けれないな……」
滝の下にある川は洞窟の様な大穴に繋がっており、その入り口は分厚い水門で閉じられていた。どうやら、手動で開けるような物では無く動力供給によって開く仕組みになっているが、まったく動く様子が無い。
「 先輩、これを持ってて下さい。恐らく、先程の水晶盤で制御しているのでしょう。私が見て来ます」
「――待ってくれ、1人で行くつもりか?」
「大丈夫ですよ、私を信じてください」
シャーリーはジャクソンにグレネードランチャーを放り投げる様に渡すと制止を聞かず、入り口付近の水晶盤へと戻っていく。それと時を同じくして、この研究所の終わりを告げるカウントダウンが始まった。
――ワーニング!!最終警告。爆発まで残り3分です、総員は直ちに退避して下さい。繰り返します。爆発まで残り3分です、総員は直ちに退避して下さい。
「いや、信頼して無いとかそういうのじゃなくてさ、こういうタイミングは死亡フラグなんだってば……」
ヤレヤレ……と首を竦めるジャクソンだったが、命の恩人を見捨てれるほど恩知らずでは無い。
「リック、水門は俺とシャーリーで何とかするから、先に脱出の準備を進めてくれ」
「ヨシ、頼んだぞ!」
ジャクソンは他の面々に準備を託してシャーリーの後を追うべくボートを飛び出す。ボートから水晶盤までは少し距離があったが小走りに足を運ぶと、水晶板に何かを入力している彼女の表情は浮かない様子だ。
「どうだい、いけそうか?」
「……水門を開ける為の魔力供給が断線して途中で止まっていますね。ですが、まだ手はあります。完全に断線した訳では無い様なので、損失している魔力以上の供給をすれば問題無い筈です」
シャーリーは水晶盤に手を押し当てると、呟く様に詠唱を始める。すると魔力の感知はほとんど出来ないジャクソンですら分かるほど大量のエーテルが彼女に纏い放出されていく。
つまり、漏電してしまって出力が上がらない電線に無理やり高圧の電気を流して、水門のモーターを動かそうとしているのだろう。帝国で随一と言われているシャーリーにしか出来ない何ともブッとんだ解決方法だったが、しばらくは反応が無かったものの水門が少しづつ上がり始めるのが見えた。しかし、それはまるでこちらを焦らすかのように遅く、そのペースは脱出時間のギリギリといった所だろう。
――――ドガァンっ!!!
だが、そんな場面を見計らった様に突如として問題は起こる。ジャクソンは分厚い壁を吹き飛ばし共に現れた"ソレ"を見て、思わず唖然とするしかなかった。
「マジ……かよ………」
壁をぶち壊して現れたのは死んだ筈の巨人ノスフェラトゥだった。しかも先程に貫かれた心臓の周辺には化物に取り込まれたスティングレーの頭が見え隠れしている。恐らくはコイツが再生する際の素体とされたのだろう。
――――ウォォォオォォォオォォォォォォ!!!!
ジャクソン達に気づいた化物は周囲が震える程の雄叫びを上げると、殺気を漲らせ一歩づつ近づいてくる。最早、直接の戦闘は避けられそうに無い……。
「シャーリー、あとどれくらい掛かりそうだ?」
「あと1分……いえ、40秒で何とか………って、そんなのダメです先に逃げて下さい!」
「……大丈夫、そうそう何度もやられはしない」
先とは逆の立場となったシャーリーは必死にそれを止めるが、ジャクソンは聞く様子を見せない。
「それに残念だけど、この状況で先に置いて逃げるなんて、死んでも出来ないさ。水門の方は頼んだぞ!」
「ちょ、先輩っ――!!」
ジャクソンはグレネードランチャーを構えると更に禍々しい異形となった巨人に対峙する。そして、間向かうようにジャクソンは飛び出すと無謀とも言える戦いが始まった。
19話アップしました! すごく遅くなってしまい、すみませんでした(ノД`)シクシク
理由はいろいろあるのですが、5回くらいリテイクをしたせいだと思います。
なんで、こんなに書けないんだろうと試行錯誤してたらこのザマです。。
でも、ちょくちょく作っていた次章のおおまかなプロットも出来ましたので、
次回で一応ラストになりますが、次章も読んでいただけると嬉しいです。
ちなみにお話としてはジャクソンが世界教の暗殺者として帝国に恐れられていた時代から黒騎士団に引きぬかれるまでの過去を遡るお話の予定です(*´ω`*)
PS
なかなか更新できなかったのですが、それでも見に来てくれてた人に感謝ぁ!
これからもFPSをよろしくお願いしますΣd(゜∀゜d)




