FPS episode.11
episode.11――
2014/8/12 スフィーダ伯爵邸 東棟
「……アレっ、先輩…ですか?」
「……ん、シャーリー?」
扉を開けて入ってきたのはスティングレーと共に姿を消した筈のシャーリーだった。
「――先輩ですか?じゃない。まったく……勝手に扉から開いたから化物だと思ったぞ。それよりも今までどこに行ってたんだ」
「すみません……先輩が行ってしまった後、ホールに急にあの黒い化物が現れて……」
「そうか……スティングレーはどうした?」
その質問をするとシャーリーは表情を曇らせて俯いたが、しばらくすると怒りを据えた様子で静かに答えた。
「あの人、私を囮にして1人で逃げたんです。その後の事は……知りたくもありません」
それを聞いたジャクソンはゲンナリとした表情でタメ息を吐く。何より女を囮にしてという所が奴の神経を疑う。あんな利己主義の塊のようなのが、国民を守る為の騎士団長だと言うのが聞いて呆れる。
「あの野郎、何処までクズなんだよ……」
「それより、リック先輩…その怪我……」
「……あぁ、なんとか大丈夫だ」
「あの……こっちに来る途中で医務室を見つけたんです。そこで手当てをしましょう」
「すまん。痛いのは死ぬより苦手なんだが」
「大丈夫ですよ。痛いのは生きている証拠ですから……それとも、このまま死んじゃいます?」
「オーマイガッ!白衣の天使だと思ったら、コイツはとんだ悪魔だったぜ!?」
そんな、アメリカンジョークを口にするリックにジャクソンとシャーリーは2人で声を出して笑う。ようやく調子が出てきた様だ。
「ところでシャーリー。ここに来る途中にあの黒い化物には襲われ無かったか?」
「あぁ、それならコレで倒しておきました!」
あっけらかんとした表情でそう返したシャーリーは、自分の背に担いでいた大きめの銃を自慢げにジャクソンへ見せた。
「な、なるほど……ね」
彼女持っていたのは強力な榴弾が使えるグレネードランチャーだった。恐らくこれも世界教の異世界人が使っていたものだろう。
「コレ、凄いんです。私みたいな銃の初心者でもとりあえず化物の近くに撃てば、弾が爆発して倒せるんですよ!」
子供の様に目を輝かせるシャーリーにジャクソンは「でかした」と褒める。そしてそのまま彼女の案内でリックを医務室まで連れて行くとシャーリーは手慣れた様子で彼の治療を済ませベッドに寝かしつける。
「随分と慣れているんだな……」
「私、元々は医療科の学生だったので、応急処置以外も一通りはこなせるんです。それより背中の手当てもするので見せてください」
「――アレっ、何で知ってるんだよ?」
「言わなくても見てれば分かります。ほらっ、早く上着を脱いでください」
シャーリーに言われるまま、ジャクソンは上着を脱がされると壁に打ちつけられて真っ赤になっている背中を露わにする。
「先輩って、思ってたよりも逞しいんですね」
「まぁ、色々とあったからね……」
元の世界でガリガリだったジャクソンの背中はこちらの世界に来て、奴隷の様な生活や生死を掛けた数々の実戦を経て鍛え上げられ戦士の様に逞しく傷が幾つも刻まれていた。
シャーリーがゆっくりといたわる様に背中に軟膏の様な薬品を塗ると包帯を巻いてゆく。そして、全てを終えると彼女の手は抱きしめる様にジャクソンの身体を包んだ。
「……先輩、さっきは助けて頂いて……ありがとうございました」
「――ちょ、シャーリー!」
「私じゃ、ダメ……ですか?」
「いや……横で変なオッサンが見てるんだ」
「――キャ、その…ゴメンなさい!」
口に手を当てながら赤面するシャーリーと呆れ顔のジャクソン。その横ではさっきまで寝ていた筈のリックがイヤらしい目つきで、こちらを眺めベッドでニヤついている。
「……まったく、新人にもう手を出すとはな。これは団長に報告が必要だな、ジャクソン?」
「何の話してんだリック。俺は手当てを受けてただけだろ?」
「まぁ、そういう事にしてやらなくもない」
「分かった……帰ったら一杯奢るよ」
「お、それは楽しみにして――ぎゃ!」
「リックさん、最低です……」
シャーリーにビシッと傷口を叩かれ悶絶するリックに苦笑しながら、ジャクソンは脱いでいた上着を着ると再び装備を整えた。
「じゃあ、行ってくる。先に裏口を探索して、出口を探してくるよ」
「おう、土産もよろしくな!」
「先輩……私もリックさんの容態が安定したら後を追いますね」
「あぁ、了解したよ――また後で!」
医務室を出たジャクソンは先程に巨大ネズミから奪い取った鍵を手に握り締め、リックから聞いていた裏口まで向かう。途中でホールに立ち寄りザックと合流しようとしたが、一向に姿を見せる気配が無い。
「ザックのオッサンは来ないか……しょうがない、先に行ってみるかな」
手に持っていた鍵で鉄製の分厚い扉を開けると大きな噴水がある裏庭に出る。昼間であれば優雅な庭園なのだろうがこれだけ薄暗いと不気味な印象しか残らない。
「クソ、やっぱり居たか……」
その暗闇の中に蠢く黒い影を複数見つけて、ジャクソンは静かに舌打ちする。だが、幸いな事にこちらの存在は気づかれて無い様だ。
「ひぃ、ふぅ、みぃ……今なら行けるな」
化物の位置と数を把握し1人作戦を練ると、一番手前の化物に向けてショットガンを放つ。
――ドバァン!
「ヨシッ、まずは1匹!」
運良くヘッドショットを決めて化物の頭部を破壊して仕留めた。しかし残りは2匹もいる状況で油断は出来ない。アドレナリンが脈拍を過剰に押し上げる中、ジャクソンは次弾を装填しショットガンを正面に構える。
「――次だ、カモンッ!」
ジャクソンの挑発に釣られたのか、残りの2匹がショットガンの射線上に自ら入ったのを確認して再び銃の砲身が火を吹き化物に散弾が当たるが、それは仕留めるに至らない。
「流石に1発では無理か……オツリも有り難くとっときなっ!」
レバーアクションでショットガンに再度、次弾を装填するとジャクソンは容赦無く3発目をお見舞いした。すると2匹の化物は揃って、地面に横たわり微動だにしなくなった。
「ショットガンで2発って所か。残弾からすると後は2匹……無駄弾は使えないな」
今までやられっぱなしだったジャクソンは黒い化物にようやく勝てたのだが、この先に上手いことショットガンの弾があるとも限らない。リックから受け取っていたショットガンの残弾を確認すると1人でそうボヤいた。
「まだ先に何かあるな……行ってみるか」
裏庭を奥まで進み見つけたのはこの屋敷の使用人が暮らす寮で、本館の屋敷に比べれば小さく木造の佇まいは暗闇に溶け込み一層と不気味さを醸し出している。
「使用人用の寮か……明かりも人気も無いな」
安全策で言えばこの先は1度戻って、ザックと合流してから先に進むべきだろう。だが、そうすれば無駄に時間を要することになる。
「考えてても始まらない、よな……」
今は一刻も早く出口を見つけて、ここを出ることが先決だ。ジャクソンはそう決断して寮の扉を開けると月あかりで緑色に見える気色の悪い通路に足を踏み入れる。この先にまた恐ろしい事が待ち受けてるとも知らずに。
11話目です。ちょっとした洋画みたいなラブシーンもユニーク枠は敏感にギャグにしちゃいます(笑)
さて、次回から更にサバイバルホラーが加速してゆきますよΣd(゜∀゜d)
PS
1600PVありがとうございまっす( ´ ▽ ` )ノ




