FPS episode.09
episode.09――
2014/8/12 スフィーダ伯爵邸 ダイニング
機械仕掛けの時計の音が広いダイニングに不気味なまでに響いており、中央にある大きなテーブルの上には不自然な程整えられた銀食器やグラスが置かれている。ジャクソンはそれらを用心深く警戒しながら、一歩また一歩と静かに進んでいく。
「……もう少し奥に行ってみるか」
ジャクソンはダイニングの裏へ通じる扉を開け、更に先へ薄暗い廊下に足を踏み入れる。すると不意に奥から物音が聞こえてきた。
……誰か居るな。
そのまま音が聞こえた方向へ進んでいくとそこに居たのは中年の禿げたオッサンだった。彼はこちらに背を向けて夢中で何かをしている様子だ。
「あの…すみません、ここのひとで………」
ジャクソンはその光景に凍りついた。
何故なら声を掛けた住人は奥に倒れている人間を文字通り“喰っていた”からだ。
「――グウァァォォォォオオオオ!!」
こちらに振り向き白眼を剥いたままで、ジャクソンに襲い掛かってくる屋敷の住人。顔は所々は筋肉組織が剥き出しになっており腐っている、その様相はまさにゾンビと言った形容が正しいだろう。
「……くそっ、いったいどうなってるんだよ、この屋敷はっ!」
顔が食い尽くされ判断もつかない状態だが恐らく、喰われているのは行方不明になっていた第六騎士団の1人だろう。ここはヤバイ。こんな所は一刻も早く、脱出するべきだ。
「――グウァァォォォォオオオオ!!」
だが、実際のゾンビは動きは映画などの一般的なイメージと違いかなり素早い。意表を突かれたジャクソンも噛みつこうとしてくるゾンビを避けきれず、もの凄い力で肩を掴まれる。
「――ちょ、マジかっ!」
ジャクソンは目の前のゾンビ男から逃れようと腰に刺したバリスティックナイフで腕を突き刺したが、全く効いている様子も無い。そのまま振りほどくことも出来ず、ゾンビ男の牙がジャクソンの首へ喰らいつこうとする。
――ドァン!!
しかし、ジャクソンが噛まれる寸前に強力な弾丸でゾンビ男の頭が吹き飛ぶグロ映像を見せられたジャクソンは後ろを振り返る。
「――って、アレ!?」
そこに居たのは今度は見知ったオッサンで連絡が取れなくなっていたザックだった。
「……無事か、ジャクソン?」
「なんだ、ザックのオッサンかよ……」
「なんだとは何だ。恩を知らない奴だ……」
「それよりもオッサン、今まで連絡も寄越さずに何処に行たんだよ?」
「俺達も化物に襲われてな。この屋敷までは来たんだが、屋敷の中は魔術遮断の結界が張られていて連絡する事が出来なかったんだ。すまない……」
いつもなら軽くジョークでも返してくるが、普段のザックらしくないそんな態度にジャクソンは毒を抜かれ戸惑う。そして、アルフが死んだことは今は話さない方が良いかもしれないとジャクソンは自分を言い聞かせる。
「……ところで団長は知らないか?逃げる途中ではぐれたんだよ」
「俺もリックとベイダーと別れた後は誰も見てないな」
「そっか……とりあえず、皆と合流しよう」
ジャクソンはそのままザックを連れてホールに戻ったが、そこにシャーリーとスティングレーの姿は何処にも無かった。
「どういうことだ、誰も居ないぞ?」
「俺が聞きたいよ。ここで待ってろと言ってたんだが、一体どうなってるんだよ……」
「いや、これを見てみろジャクソン」
何か見つけたザックに手渡されたのはシャーリーが使っていたM1911、通称コルト•ガバメントと言われるハンドガンだった。
「……シャーリーが持っていた銃だ」
「そうか、もしかしたら化物に遭遇したのかもしれん。2人を手分けして探すぞジャクソン。何かあれば、ここで合流しよう」
「了解だ、じゃあ俺は東から周るよ」
「頼んだぞ。その銃はお前が使うといい……それとこれは餞別だ」
そう言うザックから銃の予備マガジンを渡されたジャクソン。銃マニアでダーティー•○リーファンの彼が愛用しているのは有名な44マグナムで、通常のハンドガンのマガジンはいつも持っていない筈だった。
「何でオッサンが、ガバメントのマガジンを持ってるんだよ?」
「この屋敷には教団の異世界人が使っていた銃弾が少なからずあるようだ。それもさっき手に入れたものさ」
「成る程ね、有難く使わせてもらうよ」
それからザックと二手に別れたジャクソンは先程とは逆側の通路を進み仲間達を探す。 屋敷は大きく西棟と東棟に分かれていて、ジャクソンは東棟の探索に乗り出す。
東棟は西棟とは違い絵画等のアンティークが飾られていて、その雰囲気は差ながら美術館と言った感じだろう。途中にが鍵が掛かった部屋も見受けられたが、ジャクソンはまず屋敷の奥を目指した。
何か出て来るかも知れないと言う恐怖と戦いながら屋敷の奥まで行くと通路は途切れ、化物にも遭遇せずに突き当りの所まで来ると今度は妙に明るく整頓された長い廊下に出る。
そして、それまで何もなく警戒を緩めていたジャクソンが廊下に足を踏み入れた瞬間、幾つもある窓ガラスが突然割れた。
「ぬわーーーーー!!」
突如、窓ガラスをぶち破り廊下の窓から中に入ってきた化物に本気で驚いたジャクソンは大人気もなく、その場で絶叫する。
「――クソが、驚かせやがって!」
ジャクソンは必死に自分を落ち着かせて、窓から入ってきた侵入者を観察する。その様相から先程まで森の中でジャクソン達を追い回していた黒い化物だと推測がついた。
しかし、四肢で歩く為に暗闇の森の中では気がつかなかったが、酷く奇形していてもこの化物が間違いなく以前は人間だったものと分かる。
「嘘だろ……」
そして、その黒ずんだ皮膚や身体を見て、ジャクソンは気づく。この化物は人造魔石の生贄にされた人間を元に作られていると……
彼らは地獄の苦しみに晒された後、更にこんな化物に変えられ自分で死ぬことさえ叶わない。こんな人道から外れた鬼畜の所業が、人間に出来るのかとジャクソンは憤る。
「まったく……人間のやることじゃないな。せめて、苦しまずに殺してやる!」
理性なく飛びかかる黒い化物にジャクソンは銃口を向けて、化け物が動いた瞬間に銃の引き金を引いた。
「……アレっ?………アレレ?」
だが、その弾は全くもって当たらない。せっかく格好つけたは良いが2発、3発と立て続けに外していく。そう、ジャクソンは狙撃は超一流だが射撃に関しては素人だった。
「何故だ、何故当たらんのだ!!」
「…ガァルル………」
「ヒィ!来るなぁーーーっ!」
こうして本日3度目のピンチにジャクソンは見舞われ、広い屋敷を逃げ回る事になる。
こんばんは!遂に9話目ですよΣd(゜∀゜d)
こおいう何気ないお話の繋ぎになる話はホンマに難しいのです。お偉方にはそれが分からんのです(´・ω・)=3
PS
1200PV越えの境地に達成!今日も皆さんのおかげですヽ(゜∀゜ゞ)