ひつじのけもの その一
掲載詩
「さばんなの呼吸」
「飢餓狂う」
「化け物共が夢の跡」
「魔王」
●さばんなの呼吸●
まぶたを閉じるが怖いです
奴は 伏せて待つ 私を知らないようですが
瞬きほどに速そうです
空気が震えているかと思えば
震えているのは私でした
この 呼吸を さばんなの風に交え
走り出すためにえれきを震わす
さばんなの土や草を蹴りだし
踊りだすよう脈動する私の身体と 苦しみの声を上げる喉が
貴方を引き裂く爪や牙が
恐ろしいですか
いずれ私も眠りますから
やがて草や花を咲かせてみせますから
草や花になってみせますから
端から端を撫でるさばんなの風がゆらりと私を撫でていたら
今度は 私を食むがよろしいです
そういえば 頭上ののんきな青空がきれいです
●飢餓狂う●
僕は扉に背を預けている
例え何があろうとも
決してこの場を動かない
動かない
決意が煙のように身体から染み出しているのが判るか
決意が 熱を持ち 太陽のようにさんざめくさまが判るか
涙ながらに叫ぶ声が 空気を震わせているのが判るか
僕はこの扉の向こうに 密やかな秘密を隠している
誰かの眼に止まる事は決してないだろう
僕はこの扉を守り続ける
秘密を守り続ける
例え何があろうとも
僕がどうなろうとも
決してだ
この扉の向こうには 風さえ通すものか
幾年幾年 延々延々と この場を動かずに
肉体を離れ 魂だけが浮遊するようになっても
僕はここを動かない
誰も彼もが 秘密を諦めるが
やがて人込みの中より這い出す黒い影がある
秘密を見せろと牙を剥き出しに吠えるその影は
ぎょろりと大きな双眸で僕を睨むその影は
街灯に照らされた 僕の影だ
●化け物共が夢の跡●
両の足から力が抜けていくのが判るよ
眼は白んでいるし うつらうつらと頭が回らないし
なんとか手で脚を持ち上げて進もうとも思ったけど
もはや手も動かないし
呼吸の仕方も忘れたし
なんとかかんとか無理やりに息を吸ってみたものの
この 息を 全て吐き終えれば
俺は倒れて 二度と起き上がれないのだろうね
この 息を 何に使おうかと迷っていたけど
この 息を 何に使おうかと迷っている自分が可笑しくて
不意に笑ってしまったさ
ただ どうにも おそらくは これが最期なのだろうけど
この 最後の息で 笑えた自分が嬉し
欺くて俺は緩やかに眼を瞑る事にする
●魔王●
(前略)
例えば神様がいるとして
もしも俺が神様なら
サバンナでシマウマを追いかけるライオンを見守る
サバンナでライオンから逃げるシマウマを見守る
例えば神様がいるとして
もしも俺が神様ならそうする
絶対にそうする
(中略)
知っている方はお久しぶりです。
知らない方は初めましてです。
トカゲと申します。
しばらく、「なろう」から姿を消してたので、正直に言えば、俺を忘れないで的な算段も混じっておりますが、それとは別に、この作品を楽しんでいただければ幸いです。
知っている方は、「なんでいきなり詩?」とか思うかも知れませんが、是非に暖かく見守ってくださいな。
ひつじのけもの。




